ニュース・活動報告

シェアハウスで、ロールモデルとなる社会人と一緒に暮らす スマイリングプロジェクト

児童養護施設や里親家庭を巣立ち、親を頼れず一人で生活していく子にとって、衣食住の中でいちばんハードルが高いものは「住」です。家を借りるための資金作りだけでなく、保証人を立てることの難しさから、かつては進学をあきらめたり、寮がある職場限定での職探しなど、さまざまな困難がありました。現在は、奨学金や助成金の制度が整ってきた為、進学する子も多くなりましたが、住居の問題は依然として子どもたちの課題の一つです。私たちブリッジフォースマイル(B4S)では、2010年から住宅問題を解決する【スマイリングプロジェクト】を立ち上げ、この問題に取り組んでいます。一定期間、家具や家電が備え付けられた安価で安心に暮らせる場を提供して、社会へ羽ばたいていく準備の支援を行っています。

 

 

■社会人×学生(ケアリーバー) 社会へ飛び立つ前の共同生活

 2019年に立ち上げた川崎市にある女性用シェアハウスでは、一般の社会人3名と施設を退所した現学生3名の合計6名というユニークな生活スタイルです。社会人の方には、このシェアハウスの趣旨を理解していただき、学生にとっての身近な相談相手として、ロールモデルとなっていただいています。一方、学生であるケアリーバーたちは、家具・家電付きの部屋に安価で住み、金銭管理や家事などの実践を積みます。卒業後、本当にはじまる一人暮らしの準備をここでゆるやかに進められることが大きな魅力となっています。

 

来春、このシェアハウスから初めて、4年制大学を卒業し就職のため、巣立っていく子がいます。4年間の生活を振り返りながら、今の想いをインタビューしてきました。

 

私は里親家庭で育ったのですが、このシェアハウスは里親さんが最初にみつけてくれました。進学先の大学近くで物件を探していた時の、候補の1つでした。住み始めた時は、とにかく緊張していました。ただ、2020年4月からここに住み始め、ちょうどコロナ禍真っ只中だったんです。世の中は自粛モードで家から出られない。必然的に、お家で他のみんなとおしゃべりする機会が多くなり、距離が近くなりました。今思っても、結構、楽しかったなって思います。

 

― 高校3年生まで暮らしていた里親家庭では、他に子どもがいなかったこともあり、同年代との同居も最初は慣れなかったそうです。一方、里親家庭では一人暮らしに向けて、自分のお弁当は自分で作るなど、ある程度の家事を教わっていました。

 

料理には困りませんでした。ただ、ここでは自分のものは自分で作るので、自分が食べる分だけ材料を買ってきて作るのですが、最初の頃は、野菜を使いきれずに腐らせちゃったりしていました。買い物の量や金銭的なことには、馴れるのが結構難しかったです。でもそれよりも大変だったのは、片付けや掃除です。あまりにもひどい時には、社会人の方から怒られることもありました。

 

― シェアハウスにはいくつかのルールがあります。その一つとして、持ち回りの共有部分の掃除当番があります。環境に慣れてきた頃、ちょっとした甘えから、ついさぼってしまうようなことは、まだ20歳前後の子にはよくあることです。そんな時、社会人の方が、ルールを守る大切さを、実生活の中で学生たちに諭してくれる機会がここにはあります。

 

住み始めて2年目くらいまでは、社会人の方によく注意をされていました。すごく遊びたい!って思っていた時期だったので、正直ちょっとイヤだなーって(笑)だけど、金銭的に困った時とか、学校の成績が下がってモチベーションが落ちた時に、とても親身になって相談に乗ってくれたんです。早くここを出て一人暮らしをしたい!って思ったこともありましたが、今はもうシェアハウスで本当に良かったなって感じています。

 

― “ちょっと話を聞いてもらう” この簡単そうで難しいことが、ここのシェアハウスでは叶います。誰かがリビングでご飯を食べていたら、ちょっとそこへ行ってお喋りしてみて、その中で少し相談してみる。人とのコミュニケーションも、生活の中で学んでいける4年間なのです。また、月に1度、住居者とB4Sスタッフが参加するハウスミーティングがあります。近況報告や共用品費の清算など行います。持ち回りで当番が全員の料理を作り、みんなで一緒に食事をしながらお喋りをする楽しい時間です。普段は、それぞれ生活スタイルがバラバラなので、全員で集まる貴重な機会となっています。

 

シェアハウスと言えども、バイトをしてお金を稼いで生活をしているんですが、つい使い過ぎて給料日前にお金がない…ということが結構ありました。春からは本当の一人暮らしなので、今までの経験を活かしてがんばろうと思っています。ただ、あんなに一人暮らしがしたかった私なのに、今はとっても寂しいんです。ここにいたみんなが、良い時も悪い時も私のことを気にかけて暮らしてくれていたおかげで、大学卒業も就職もできた!と心から思っています。「ありがとう」の気持ちでいっぱいです。

 

― 共に暮らした人たちへ向けて、感謝の想いを話してくれた彼女はとっても素敵な笑顔でした。いつかきっとどこかで、社会人になった彼女が誰かのロールモデルになって、誰かを笑顔してくれることと思います。人生の中ではわずかな期間ですが、ここを一つのステップとして、卒業後の次のステージへ羽ばたいていく子どもたちを、B4Sは今後も応援していきます。

 

 

~ シェアハウスに住む 社会人の方から ~

そもそも、インテリアや家具がとてもお洒落で「住んでみたい!」と思えるシェアハウスでしたが、住みながらにして社会貢献ができるというところがとても魅力的だなと感じました。距離感を保ちながらも、いつも人の温かみを感じられることや、利害関係なく日常の些細なことを話せる人がいるのも魅力です。普段は、学生が施設出身だと実感することはあまりありませんが、ハウスミーティングなどで施設での生活の様子を学生から聞くことがあり、このシェアハウスに入っていなかったら知らなかったことがたくさんありました。

 

 

 

私たちB4Sの活動は、支援者の方々がさまざまな場面や方法で力を貸してくださることで、続けられています。シェアハウスでは、社会人の皆さんが、学生たちを施設や里親出身者だからと”特別扱いしないこと”で、学生たちに多くの学びを授けてくれています。毎日の生活の中で、一人の先輩社会人として接してくださることに、改めて感謝しています。みなさんもぜひ、親を頼れないすべての子どもが笑顔で暮らせる社会に向けて、活動する仲間になってください。支援の輪を、これからもみんなで広げていきたいと思います。

 

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