
ニュース・活動報告

ブリッジフォースマイル(B4S)は7~8月、児童養護施設や里親家庭で生活する首都圏の中高生を対象に、ジョブプラクティス(仕事体験プログラム)を実施しました。受け入れ企業で実務を経験した結果、子どもの94.4%が参加後の感想として「仕事の選択肢が拡大した」と回答。ジョブプラクティスを通して大人と一緒に働くことが、自分のやりたいことや将来をみつめるきっかけにつながっています。
「いろいろな年齢層のお客さんが来る中で、お話を合わせられるのがすごい。自分もそんな人になりたい」。都内の美容室に2日間通った中学3年の女子生徒は、美容師の多彩な話術に驚きの声をあげました。今回が二度目となる美容室のジョブプラクティスでは、カラーの練習や髪を切る際に首にクロスを巻くといった業務を体験。「将来の夢のために、1つ学べたかな」と満足そうでした。
ジョブプラクティスでは選択肢の幅を広げるため、さまざまな仕事体験を企業の力を借りて実施しています
ジョブプラクティスは2007年からB4Sが長期の休みを中心に、親を頼れない中学生から高校生を対象に実施してきました。自分の興味や得意不得意に早い段階から気付くことで、生活の基盤である就労のミスマッチを防ぐことが目的です。なかでも数日間1人で仕事現場に通うもの(ジョブプラクティスデイズ)には、2023年夏はのべ62人の中高生が参加。デザイン事務所やタクシー会社、飲食店など36社の受け入れ企業で実際の業務を体験しました。
このプログラムではアルバイトを経験している子どもにとっては就職や進学などの進路を意識した体験ができるほか、中学生やアルバイトにまで踏み出せない子どもの場合は、数日間のお試しができるといった就業への一歩につながります。複数回にわたって参加し、異なる業種も体験できることから、「今後のキャリアの選択肢を広く考えられそう」(高校2年の女子生徒)といった参加者の声もアンケートでは目立ちました。
体験を通して業務の内容や様子を深く知れるだけではなく、自分が実際に働くイメージや未来の姿もより具体的に描けます。「自分の将来について考えることは楽しいですか」というアンケートの質問に対して、参加後に「楽しい」「やや楽しい」と答えた割合は計84.5%。参加前と比べて7.4ポイント上昇しました。
「自分の苦手なこと、今何をすべきかを再確認できた」(高校1年の男子生徒)という気付きを得た子どもも多かったようです。実際、アンケートでは「今回経験した職業に就くために、必要なことや今後やった方がいいことがわかりましたか」という質問に対して、94.3%が「わかった」「ややわかった」と回答しました。
大人に教えてもらいつつも肩を並べて仕事を体験し、働きを認められることで自己肯定感が高まることもわかりました。「今の自分が好きだ、と思いますか」という質問に対しては、67.3%が「好き」「やや好き」と回答しており、参加前に比べて12.5ポイントも向上しています。
一方、ジョブプラクティスで見えてくるのは、現在や未来の自分だけではないようです。
「昔にできなかった子どもの頃の時間を取り戻したような気がします」。アンケートの中には、このような感想もありました。都内で学童保育を3日間体験した中学3年の女子生徒です。幼かった頃に自分の満たされていなかった部分が、子どもと一緒に過ごす時間の中で少し埋められたのかもしれません。アンケートの最後は、こうつづられています。「大人になっても子どもと関わる学童保育の仕事は、とても魅力的に見える素敵な場所でした」
B4Sではこれまでの経験やノウハウをベースに、親を頼れない子どもが笑顔で暮らせるようになるためのステップに関して、共通の目的を持つためのロジックモデルを作成しています。ジョブプラクティスにおいては、「働くイメージが具体的になる」「ロールモデルがいる」「将来に前向きになっている」「自分の関心、強みを理解する」といった9つの初期成果が、プログラム終了後に表れていることを目指しています。
これらの初期成果が仕事体験などによって醸成されることで、「キャリアに対する理想を明確にできる」「目標実現に向けて活動できる」といった中期成果を経て、「自分の望む、自分に適したキャリア(進路・職業)を送っている 」という最終的な長期成果に至ると考えています。
働き手としての将来のイメージや今の自分をより鮮明にとらえることができる仕事体験は、短期間であっても子どもたちにとって貴重な経験となります。親を頼れない子どもたちが恐れずに巣立ちの時期を迎えるには、自分の力で生活をしていけるという自信が欠かせません。そのための一歩が、ジョブプラクティスだと考えています。
こちらもお読みください
>>ブリッジフォースマイル社会的インパクト記事シリーズ「巣立ちプロジェクト」

自分の子どもと仲の良い友達が児童養護施設で生活していると知ったことが、登録のきっかけでした。新聞社で培った問題意識と執筆力を活かして、親を頼れない子どもが住みやすい社会を実現する一助になれたらと思います。
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