ニュース・活動報告

「誰しもが変われる」 もう一人の伴走者として 人材開発チーム しのたー

親を頼れない子どもや若者たちに「伴走者」として寄り添い、自立を支援する社会人ボランティア(サポーター)のみなさん。認定NPO法人ブリッジフォースマイル(B4S)の「巣立ち支援」事業を支える「主役」と言っても過言ではありません。そうした伴走者たちに伴走し、ボランティア活動を後方支援するのが「人材開発チーム」の事務局スタッフで、ニックネーム「しのたー」こと、石川志野です。民間企業2社を経て、2022年5月にB4Sへ入職。若者が希望を持ち、家庭環境に関係なく、誰もが努力できる土台を創りたい。そのためにも、「伴走者」のみなさんの力添えが欠かせない—と考えています。

 

B4Sの軸となる「3つの事業」のうち、人材開発チームは「伴走者の育成」を担います。主な仕事は、サポーターのみなさんに、できるだけ不安なく、楽しんで、継続的に活動いただくこと。必要な知識や技術を身につけるためのセミナーを開いたり、仲間同士の交流の場を持ったり、活動に取り組む上での疑問や不安などを解消したり、細やかな目配りに努めます。

 

もともと「人の強みや特性を見つけるのが好き」という「しのたー」は、「誰しもが、いくつになっても変われる」と信じています。このことが、今の仕事に向き合う上で、とても大切な出発点となっています。そう考えるに至るまでに、どんな経験があったのでしょうか。

 

■「自分と違う人」が面白い

 

高知県の自然豊かな環境で育ち、大学から東京で一人暮らしをしています。新卒で入社した大手通信データ会社で、システムエンジニア(SE)職を志望し、自治体向けのカードシステムの開発に携わりました。

 

昔から「職人」への憧れがあって、手に職をつけられる専門職がいいな、と。6年経験しましたが、今振り返っても、プロジェクトがカットオーバー(運用開始)した時の感動や、トラブルの対応で泊まり込むなど、仕事にやりがいもいっぱいありました。ただ、同期に比べ、「自分ならでは」の価値を生み出し、この仕事を追求していけるイメージが持てませんでした。

 

決めると、行動は早い。この時は退職後に、転職活動を開始。そんな中、たまたま紹介されて興味を持ったのが、求職者にアドバイスしたりサポートしたりする「キャリアアドバイザー」でした。大手人材紹介会社に転職が決まり、その面白さにのめり込みます。

 

もともと人が好きで、「自分と違う人」が面白い。その人自身も気付いていないような「強み」や「特性」を見つけて伝えると、本人も驚いたり、喜んだりする。それが仕事では、その人のいいところを見つけて、うまく活かせる企業や職種を紹介することにつながります。こうした「お見合いビジネス」が、すごく自分に向いていると実感しました。それに、自分の楽しさを起点に、個人の方にも企業の方にも貢献でき、成果にもつながる。その辺がうまくかみ合って、面白さが増しました。

 

2人の子育てを挟みながら、自身のキャリアアップにも努めます。最初の産休・育休中には、キャリアコンサルタント資格「GCDF」を取得。最近、産休・育休中の「リスキリング(職業能力の再開発・再教育)」が話題になりましたが、その先駆けとも言えます。産休・育休を経ながら、キャリアアドバイザー、マネジャー、人材育成スタッフなどなど、さまざまな経験ができました。この仕事も、組織も、人も好きでしたが、長く勤める中で、いつのころか、こんな思いが湧き上がってきました。

 

キャリアの最後は、組織からもらう課題ではなく、自分が一番解決したいと思うことに力を尽くしたい。「人生100年」の時代。あと20年は働けるとして、新しいことに挑戦したい。

 

 

■「凸凹(でこぼこ)」の魅力 生かしたい

 

「一番、解決したい」。それが、「若者が希望を持ち、家庭環境に関係なく、誰もが努力できる土台を創りたい」ということでした。転職前の数年、興味のある分野や社会課題の解決に取り組む企業をWebサイトで調べたり、話を聞いたり。いろいろな企業や団体を見る中で、一番気になったのがB4Sでした。

 

「安心と希望の格差の解消」。これって、私のやりたいことに、すごく近いと思いました。ビジョンを語る言葉や切り口にも個性があって、未来に広がりも感じる。「トドクン」とか、プロジェクトや事業のネーミングもかわいくて、親近感が持てました。

 

入職後、サポーターの人たちと接するようになり、気付いたことがあると言います。

 

長く続けているベテランのサポーターさんほど、「自分は〝支援している〟と思っていない。子どもたちと一緒に楽しみ、自分も成長できている」と断言される。ボランティアとして、ここに志を立て、行動し、ご自身の貴重な時間を割いている中で至ったこの考え方。本当に尊敬できると思いました。

 

B4Sの活動を支えるサポーターは、約550人。この方々が、年間1800人近い子どもや若者たちを伴走しています。その顔ぶれは、まさに「多彩」。それぞれの「思い」を胸に集まり、ボランティアの道を歩んでいます。しかし、さまざまな境遇で、こもごもの困難を抱えて育ってきた子どもや若者たちと向き合うことは、一筋縄ではいきません。伴走する側も、入念な準備と心構えが欠かせないため、その基礎を磨くのに必要な研修を企画し、開催するのも、人材開発チームの重要な仕事です。

 

自分はもちろん、「100点の人間」はいないし、「100点の人」が本当にいいのか!? 一人ひとり、いろんな個性があり、いろんな人生経験を積んで来られている。得手不得手もあるでしょうし、好き嫌いも出るかもしれない。でも、そうした「凸凹(でこぼこ)」の持つ魅力を認め、生かしたい。特に、活動を始めたばかりのサポーターさんは、不安も多いと思います。でも、一歩踏み出したら、新たに見えるものがある。その一歩目を、どう踏んでもらうか、そこに寄り添って、私もサポートできたらな、と。

 

一方、B4Sが2022年度から新規に事業委託を受けた江戸川児童相談所(東京)の「研修運営・人材育成」も担当しています。児童福祉司や児童心理司を対象にした研修サポートや、育成に必要な取り組みについて、一緒に検討しながら進めています。

 

児童相談所は、近年の虐待通告の増加によりどこも疲弊し、離職率も高くなっています。経験の浅い若手も多く、職員の育成や定着は大きな課題です。

 

初年度は、職員自身が必要なスキルの習得に対して自己評価を行い、上長と面談して相談できる機会を試行的に実施しており、次年度以降にも広げていけそうです。目の前の対応に追われるだけではなく、自分のキャリアが上がったと実感したり、周りが認めたりする仕組みが整い、もっと働きやすい環境につながっていけばいいな、と。しっかりと、子どもに向き合える。そんな状況にしていきたいな、との思いで取り組んでいます。

 

児童相談所の職員もまた、最前線で子どもたちに伴走している。その児相職員のために「伴走者」としての役割を担う。そんな側面が、児童相談所の事業委託にはあるのです。

 

 

■「伴走者のすそ野」広げたい

 

昨年「18歳」となり、来年「20歳」を迎えるB4S。入職を考えている人には、こんなメッセージを送ります。

 

最初は専門知識がなくても、できることは、たくさんあります。組織も、まだまだ進化中なので、一緒に創っていける段階。スタッフも、それぞれの個性が生かされ、こだわりのポイントや、得手不得手が違い、多彩なピースがたくさんあるのが面白いです。

 

親を頼れない子どもや若者たちの多くは、出会える大人の数もタイプも少ないといいます。それゆえ、自分が大人になった時、お手本にできる人がおらず、どんな大人になったらいいのか、イメージしづらいともいわれます。だからこそ、ボランティアのみなさんも、スタッフも、凸凹(でこぼこ)の個性の集まりが「強み」を持つ、とも言えそうです。

 

「大人の仲間がつくれたことも、やりがい」。継続して活動されているサポーターさんは、こう言います。子どもや若者だけでなく、サポーターのみなさんにとっても、大切な「居場所」になっている。そう感じます。そうした凸凹の個性の集まりと接していて、楽しくないはずがありません。サポーターさんを見ていると、一人ひとり、やっぱり人間ができているし、「魂が美しい」と感じてしまいます。そうした人たちに触れると、その人もいい影響を受けると思うし、それが、いい循環につながっていったらいいな、と。

 

社会的養護(養育)の分野について知るに従い、子どもたちにとって、よりよい環境をつくっていくためには、それにかかわる大人たち自身の「元気」が重要で、孤立・疲弊していてはいけないと実感しました。「ごく一部」の専門家だけが役割を背負うのではなく、できるだけ多くの人たちが、親を頼れない子どもたちの現状について少しずつでも知り、かかわっていく。そうやって、「伴走者のすそ野」を広げていくことが、「社会全体で子育てをする」ことにつながっていくと思います。

 

<メモ>フルフレックス勤務で、児童相談所訪問や研修運営以外はオンラインがメイン。人材開発チームの先輩はカンボジア在住ですが、そんな距離感を全く感じずに一緒に働いています。他にもご家庭、副業、通学との兼ね合いなど多様な働き方が浸透しています。

 

<1日の動き>

10:00〜10:30 研修メールのチェック

10:30〜11:30 オフィスで研修資料の準備

11:30〜12:00 講師の先生と事前の打ち合わせ

12:00〜13:00 休憩

13:00〜15:00 オンライン研修

15:00〜18:00 児童相談所を訪問。振り返り業務、アンケートまとめ

 

◆職員紹介 居場所スタッフ りゅうりゅう「彼ら彼女らがいるから、自分も頑張れる」 

◆職員紹介 施設コミュニケーションチーム あめり「子どもたちと社会の〝架け橋〟に」

◆職員紹介 居場所スタッフ みみろん「児童福祉は、すべての経験が生かされる仕事」

Bridge for Smile

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