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措置解除前にこんなサポートがほしかった!【厚生労働省が公表した「実態調査」によせて(第4弾)】
2021年4月に厚労省から公開された「児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査」を読み解くシリーズ、第4弾です。
今回は措置解除前にこんなサポートがほしかった、という点に注目しました。なかでも、今回はブリッジフォースマイルに特に関連の深い、「退所に向けたサポート」に絞って見ていきたいと思います。
 

◆退所に向けたサポートへの評価は?

退所に向けたサポートについては、トータルで見ると「よかった」「まあよかった」という評価がどの年代でも50%を超えていました。何度も繰り返しますが、今回のアンケートに返信してくれた若者はそもそも施設と一定程度良好な関係にあると見るのが自然なため、これをもって全体の満足感につながるとも思いませんが、少なくとも低いわけではなさそうです。
 
自由記述を見てみると、お金の話、手続きのサポート(不動産契約、行政手続き)についてポジティブな記載が多かったのですが、一方でそもそもサポートの存在を知らなかった、PCの使い方、進学に関する知識と経験不足などを指摘するものがありました。
また、金銭管理に関する不満もありました。
 
これについて思うのは、施設によってサポートの手厚さがかなり異なるのではないかということです。また、職員さんが忙しそうなので、連絡しづらいという声も上がっており、施設がサポートをしている・いない、というよりも、若者側が施設職員さんの忙しさを知っているからこそ、遠慮して頼れない、という現状も少し見えるように思います。
 
施設等以外からのサポートについてもアンケート回答はありますが、これに関しては利用したことがない、という回答が30%弱で最も高く、よかった、まあよかったの合計が40%弱になります。
社会福祉協議会、アフターケア事業所などが頼れる場所としてあげてもらえてました。自由記述でも、先ほどの施設職員を頼りすぎるのは気が引けてしまうので、施設職員以外の相談相手がいてほしい、という声もありましたので、ブリッジフォースマイルもそういう相談先の一つになれるといいな、と改めて思いました。
 

◆退所後のいま、困っていること、不安なことは?

現在の暮らしの中で、困っていることや不安なこと、心配なこと という質問に対する回答(複数回答可)ですが、1位は生活費や学費のことで33.6%、続いて、将来のことが31.5%、仕事のことが26.6%でした。
困っていることや不安なことはない、という回答が次いで24.7%なのですが、これを見ると退所して施設とつながっている若者であったとしても、4人に3人は何かしら困ったり不安なことがある、ということではないかと思います。
 
長文になりますが、最後に「困っていること」「不安なこと」の自由記述を一部書き写させていただき、終わりにしたいと思います。
 
<学校のこと>
・ 生活費のために生活の中心がバイトになってきていて、学校の授業・課題の方が疎かになっている。バイトに追われすぎて学校や遊びなど自分の時間の確保があんまり出来なくなってきていてあんまり満足のいく生活ができていない。
・ 身体も精神も調子を悪くしてしまい、学校に行けなくなってしまったことが特に心配です。しっかりと勉強しなくてはいけない時期なのにできず、将来の国家試験や就職についての不安があります。
 
<仕事のこと>
・ 適職が分からず、また資格も特に持っていないため仕事が安定していない。
・ 職場の環境がそんな良くなく、先輩からの叱咤激励がきつい。
・ どんなに働いてもアルバイトだから、貰える給料は低いから貯金も出来ないし、身体は疲れるし今後が不安。
・ 今自分が就いている仕事が本当にやりたい事なのか分からない。自分のやりたい仕事が分からない。
・ 職を一度したが辞めてしまい、間が空いてしまったので、再就職がなかなか決まらない。また、就職しても、精神的に安定しない時があるので、きちんと継続して働けるかが不安。
・ 仕事をやめたいと思っても、金銭的に頼れる人がいない中でその決断ができない。精神的にも身体的にも体調が悪いなか、仕事も家事も全て自分でやり、不安を口にすることもできない。生きる上で最終的な逃げ場(安全な場所)がない。
 
<生活費や学費のこと>
・ 家賃や光熱費が払えない。
・ お金の出費が多く、学費が払えるか心配。
・ 給料のほぼ全てが無くなるため、安定して貯金する事が出来ない。
・ 貯金があまりできず、収支がギリギリの状態が長く続いている。
・ お金と孤独感により精神的に参っているが、相談場所がわからず悩んでいる。特に金銭面は如何とも
し難く、借金を抱えたまま社会へ出ることへ非常に不安を感じる。
 
<借金のこと>
・ お金の管理が出来ず借金しかしていないためコンゴが不安。
・ 一時期精神的にしんどい時期があり、今まで貯めていた貯金で生活をしていた時期があったため、その時に払えなかったお金を分割で払っていってるため生活が少し苦しい感じです。その時は公的なお金があることも知らなかったので、それをもう少し前に知ることができたらよかったなって思いました。
 
<人間関係のこと>
・ すごく気持ち的に辛い時に誰にも相談できずに、なんにも出来ずに家にこもってしまう事が増えたこと。
 
<孤独感のこと>
・ 孤独感が常にあって、いざというとき誰にも相談できない時期があった。
・ すぐそばに頼れる人がいないので不安。人間不信になりつつある。
・ 周りに相談する人が少なく、誰を頼ればいいか分からない。頼れる人がいても頼り方が分からない。
・ 仕事面では大変充実していますが、私生活で一人でいるとふと孤独感に襲われる事があります。
 
<健康のこと(精神的)>
・ 正直、病院に通った方がいいなと思うくらいには精神的に良くない。
・ 精神的に不安定で、心療内科にかかりたいと思うが、生活費などのことも考えて高額な費用がかかる心療内科には行きにくい。
 
<住まいのこと>
・ 保証人が居ないのが困る。
・ 友達の家に一緒に住んでて、凄く不安と危機感を感じてます。
・ 家族との繋がりがない為、保証人等をどのようにしたら良いか困っている。
 
<家事や食事のこと>
・ 掃除ができない。栄養バランス。
・ 生活リズムが整えるのが難しい事。
 
<将来のこと>
・ 夢がなくて何に向かって頑張ればいいのか分からない。
 
<その他>
・ 親の助けがない分と、施設からの完璧な離れで過去のことや自分と親の人間関係、精神的な面のアドバイスを頂けない状態で、無理やり過ごしてる感じです。助けてくれる人がいると嬉しいです。
・ 社会人になりやはり,わからない事だらけの世界で支払いの内容が理解できなかったりした時瞬時に聞ける相手がいなく1人だと不安になる事があります。
子ども・若者支援担当 矢森 裕章
4月、今年も施設や里親家庭から巣立った若者の多くが、一人暮らしを始めました。地方から上京してきた若者の中には、寂しくて毎日のように電話やLINEをしてくる若者もいます。
僕も初めての地方での一人暮らしのときは同じような感じだったな、と思い出しますが、気軽に連絡できる家族がいた自分とは異なり、連絡できる家族がいない彼らの心細さはいかばかりかと思います。
すべての若者が1日も早く安定した生活を送れるようになることを心より願ってます。

Bridge for Smile

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