ニュース・活動報告
■行政の動き「社会的養護自立支援拠点事業」
2024年4月から改正児童福祉法の下、都道府県、政令指定都市に社会的養護出身者への退所後支援が義務付けられ、その柱として「社会的養護自立支援拠点事業」という制度が始まります。
この事業は、「居場所の提供」「相談支援」「専門機関への繋ぎ」「一時的住まいの提供(任意)」の4つが掲げられています。また、対象は社会的養護出身者だけでなく、「それに類する者」つまり、親を頼れない子どもたち全般(年齢の上限なし)を対象としています。
2023年4月からこども家庭庁が発足し、自立に向けたとても意欲的な制度内容でありつつも、運用する立場では、必要な子どもに必要な支援が届く制度であることが大前提です。子ども一人ひとりが抱える課題が異なることによる支援の多様性、複雑さ、また、自治体の方針・予算配分による支援の違いなど、運用によっては、支援をしやすい子どもに支援が集中し、支援格差が広がることも懸念されます。支援格差を生まないように、どの子どもにとっても必要な支援を受けられる環境や具体的な支援策をつくることが急務です。
■ブリッジフォースマイルの方針
私たちブリッジフォースマイル(以下、B4S)は、19年前から、子どもたちが抱える課題やニーズに合わせて、自立支援、退所後支援のプログラムを開発、運営してきました。児童相談所における虐待相談対応件数は2022年度で21万件を超え、ますます子どもたちへの支援が求められる中、私たちは、以下の5つの方針を決め、活動を進めています。
1 社会的養護経験の有無や出身の行政区で、支援の差を付けない
2 既存の社会資源、制度、仕組みを最大限に活用する
3 協力者(ボランティア・業務委託者)の力を最大限に活用する
4 行政の予算を得られない場合は、団体予算(持ち出し)を覚悟し、取り組む
5 データを取り、根拠をもって行政に提言する
行政の枠組みを充分にお借りしつつ、足りない部分は、広く社会の協力(ボランティア、企業、寄付など)を仰ぎながら、これまで以上に理想の支援を実現しようと決意しました。
■キャリアとつながりによる「予防的支援」
児童養護施設や里親家庭などを出た後の子どもたちへの支援をアフターケア(退所後支援)、施設や里親家庭などで生活する子どもたちの日々の生活を支え、社会に出る準備をすることをインケアと呼ばれています。
B4Sの支援の強みは、インケア、アフターケアの両面において、「キャリア」と「つながり」を軸にした「予防的支援」と考えています。生活の中で何か問題が起きる前に、社会に出てからの孤立やつまずきを防ぐために、さまざま予防的支援として、2024年現在、9つの主なプログラムと個別支援を行なっています。
つながりがある子ども・退所者数は、19年間で6,000人を超え(2022年度 プログラム利用者数 1,696人)、支援カバー率としては、18歳になる社会的養護下にいる子どもたちの約4分の1とつながりを持ち、何らかの支援を届けることができています。(※誕生年度別のブリッジフォースマイル登録者数より算出)
ブリッジフォースマイルの巣立ち支援プログラムはこちら
■2024年度に向けて
事務局スタッフの積極的な採用を行い組織体制を整え、新規事業である相談事業や住宅支援事業の検討を進めている中、先日東京都から2024年度の事業方針が事業者公募(プロポーザル)という形で出されました。
その事業内容には、B4Sが大切にしてきた施設等入所時から行っている支援(インケア)の項目が入っておらず、つまり、下記のプログラムに対して、これまでの東京都の事業予算が削減され(約2,000万円弱の見込み)、社会的養護自立支援拠点事業に集約される方針となりました。
・高校3年生向けの一人暮らし準備セミナー「巣立ちプロジェクト」
・施設等に出向いて行う「自立支援セミナー」
・企業の協力を得て行う仕事体験「ジョブプラクティス」
これまでの取り組みが東京都に評価されなかったのかと思う一方、東京都からの受託予算が減るからといって、来年度のプログラム運営を縮小していくことはせず、「より多くの子どもたちに、よりよい支援を届ける」という強い思いを持って、活動を進めていきます。
今のB4Sには、たくさんの仲間と協力者と、支援を待ってくれる子どもたちや施設職員、里親家庭のみなさんがいます。経験もノウハウもあります。東京都の予算削減という現状は厳しく、運営予算の見込みはまだ立っていませんが、財政面から支えていただける方は、ぜひ継続寄付会員や単発寄付などでご支援いただけたら幸いです。
引き続き、みなさまの応援をよろしくお願いいたします。
寄付のお申し込みページはこちら
-
2024.09.18広報・啓発活動株主優待に寄付制度 コクヨが放つ「自律協働社会」実現への一手
-
2024.11.07広報・啓発活動コエールが、新しくなります! ③ワークショップ大学編
-
2024.11.22広報・啓発活動【プレスリリース】全国児童養護施設 退所者トラッキング調査2024 報告書が完成しました