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時代によってさまざまに変化した「親を頼れない」事情
イメージ画像:時代によってさまざまに変化した「親を頼れない」事情

児童養護施設に入所するなど社会的養護を必要とした理由を過去にさかのぼってみていくと、まだ戦争の爪痕の残っていた1952年時点では「貧困」が27.9%と最も多く、「父または母の死亡」23.0%、「棄児(捨て子)」11.5%がそれに続きます。戦争で多くの命が失われ、食べるものにも事欠く社会にあって、多くの子どもたちが過酷な状況に置かれていたことがうかがわれます。

1960年代以降の高度成長を経て日本は豊かになっていきますが、60~70年代には都会に出稼ぎに行った父親が地元に戻らず行方不明になるケースが頻発。70年代半ばからはサラ金苦による一家離散が目立つようになり、離婚も増加して家庭崩壊が社会問題化しました。1983年時点の養護問題発生理由で最も多いのは「父または母の行方不明」28.4%で、「父母の離別」21.0%がそれに次ぎます。一方、1952年時点で最多だった「貧困」は2.0%まで減少。「父または母の死亡」も年々減って9.6%となりました。

 

子どもが措置される理由(時代ごとの推移)

折れ線グラフ:親を頼れない子どもが措置される理由(時代ごとの推移)

厚生労働省子ども家庭局:第14回新たな社会的養育の在り方に関する検討会(平成29年5月26日)
参考資料1 児童養護施設等について

 

そして、2000年前後から社会問題化してきたのが児童虐待です。2018年時点での養護問題発生理由で最も多いのは「父または母による虐待・酷使」19.3%、「父または母による放任・怠惰」15.5%、「養育拒否(ネグレクト)」6.9%で、計41.9%がいわゆる「虐待」によるものです。それ以外の理由で入所した子どもも含め、入所児童の約6割が虐待を受けた経験を持つというデータもあります。

 

児童養護の世界において現代は「児童虐待の時代」と言えるわけですが、一方で、虐待以外の問題も多様化していることに注意が必要です。

 

児童虐待以外の入所理由で目立つのは、かつては少なかった「父または母の精神障害」で、80年代までは5%程度だったのが14.9%まで増えています。精神障害の多くはうつ病です。「貧困」という項目はなくなりましたが、「破産等の経済的理由」が4.8%を占め、1983年当時の「貧困」2.0%より多くなっています。格差が拡大し、日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあるといわれるなか、社会的養護下で暮らす子どもたちにも、貧困問題が再び暗い影を落としているといえそうです。

 

かつては項目になかった「児童の問題による監護困難」が7.1%にのぼることも、近年の大きな特徴です。これは、犯罪を行うおそれがあると判断されたり、心理的な問題などで親元での養育が困難とされた子どもたちのケースで、主に児童自立支援施設や児童心理治療施設への入所となりますが、児童養護施設や里親のもとで暮らす子どもたちの中でも問題行動や自傷行為はしばしばみられます。

 

かつて多かった「父または母の死亡」は3.8%、「父または母の行方不明」は3.3%、「父母の離別」は2.1%に減りましたが、それらの理由がなくなったわけではありません。ほかにも「父または母の長期入院」2.4%、「父または母の拘禁」4.1%など、さまざまな親の事情を子どもたちは背負っています。

 

そもそも、統計上の養護問題発生理由は、直接的かつ最大のものが選ばれていますが、多くの場合、理由はひとつではなく、さまざまな理由が複雑にからみあっています。子どもたち一人ひとりの事情と向き合い、丁寧に寄り添っていくことが求められています。

 

子どもが措置される理由(2018年)

 

円グラフ措置理由(2018)

 

厚生労働省子ども家庭局 厚生労働省社会援護局障害保健福祉部

「児童養護施設入所児童等調査の概要」(平成30年2月1日現在)


1952年、1983年の養護問題発生理由のデータは、1987年に全国社会福祉協議会がまとめた「転換期における児童福祉施設の役割に関する研究<報告書>」から抜粋しました。

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