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児童相談所の人事事情
写真:コラム【児相2:児童相談所の人事事情】のアイキャッチ画像(公園のブランコの椅子)

児童相談所で虐待相談などの最前線に立つ児童福祉司は、相談所の設置者である都道府県などの自治体に勤める地方公務員ですが、その労働実態は一般の地方公務員とは異なり、相当に〝ブラック〟だと言われています。

 

◆ブラックな労働環境

勤務時間は1日8時間程度と定められていますが、日中は働いている親や、学校や保育所などに通っている子どもに会うためには、夜や休日に時間を作るしかありません。虐待の通告があった場合、48時間以内に子どもの安否確認をすることが義務付けられていますから、休日も夜間も関係なく、時には警察など関係機関と連絡を取り合いながら、動かなくてはなりません。1件ごとに詳細な報告書をまとめるなど、書類仕事も膨大です。しかも、1人の児童福祉司が同時に担当する案件は、全国平均で40~50件。地域によっては1人100件もの案件を担当せざるを得ない状況なのです。

 

当然、時間外労働は増える一方です。1カ月の時間外労働時間の平均は、多い地域で50時間超にのぼるといいます。過労死ラインとされる月80時間を超える例もしばしば見られます。児童相談所には警察署や消防署と同じく、時間外労働の上限規制などが適用されませんが、給与水準は一般の地方公務員と同じです。

 

◆心を病む人も

子どもたちの健やかな育ちを助け、時には命にかかわる事態にも介入する大切な仕事ですが、虐待を疑われた親からはしばしば罵詈雑言を浴びせられ、時には暴力の危険にさらされることもあります。日々たくさんの子どもたちを救っていても、不幸にして命を落とす子どもが出れば、対応が悪かったとして社会から袋叩きにあいます。救われた子どもにとっても、親から離され施設などに収容されることは良い思い出になりにくいため、感謝されることはあまりありません。こうしたなかで児童福祉司の多くが心身ともに疲弊しており、50人に1人は心を病んで休職するというデータもあります。この休職率は、心を病んで休職する例が多いといわれる教員の4倍にのぼります。

 

◆育ちにくい専門性

児童福祉司は高度な専門性を必要とする仕事ですから、福祉職の経験者や社会福祉士など有資格者を任用するのが原則ですが、資格があるからといって虐待対応がすぐにうまくできるわけではありません。人員不足のため、一般の行政職員が人事異動で児童福祉司となり、数年でまた異動していくこともあります。一人前の児童福祉司になるには10年かかるといわれますが、2019年の時点で10年以上勤務している児童福祉司は全体の15%に過ぎず、40%強が3年未満の経験しかありません。疲れ果てて退職する人、他部署に異動してしまう人が後を絶たないのです。

 

児童福祉司の勤続年数(2019年4月1日時点)(※)

円グラフ「児童福祉司の勤続年数(2019年4月1日時点)」1年未満20%、1~3年28%、3~5年16%、5~10年21%、10年以上15%

児童福祉司の負担を少しでも減らすため、家庭に踏み込んでいく初期の「介入」と、その後の長期にわたる「支援」を別の人、あるいは別の組織で役割分担する試みが始まっています。人員確保のため、児童福祉司など児童相談所で働く専門職の給与を月額最大2万円増額する方針も打ち出されました。専門性向上のため、「子ども家庭福祉士」(仮称)という新たな国家資格の創設も検討されています。一人でも多くの子どもを救うためには、その最前線で働く人々を社会全体で支えるべく、知恵を絞っていく必要があります。

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