ニュース・活動報告
児童養護施設や里親家庭で高校卒業を迎えた子どもたちのその後は大きく、①親や親せきのいる家庭に戻る、②「措置延長」によりそのまましばらく施設等で生活する、③社会に出て一人暮らしする、という3つに分かれます。措置延長になっても、いずれは施設を出なくてはなりませんし、家庭に戻っても、それですべてうまくいくとは限りません。いずれの道に進んでも、子どもたちにとって「住まい」は大きな心配ごとの一つです。
◆お金だけではない「住まい」の課題
親を頼れない子どもたちが一人暮らしを始めるのは、簡単なことではありません。もちろん、敷金や礼金、生活必需品を買いそろえる費用など、経済的な問題もありますが、それ以外にも、そもそも部屋を借りにくいという事情があります。
部屋を借りるときには、保証人が求められます。親がいれば、親が保証人になったりしますが、親に頼れない子どもたちの場合は、それまで暮らしていた児童養護施設の施設長や里親が保証人になることが大半です。ところが、「親以外が保証人になるのであれば部屋を貸さない」と断られることもあるのです。その根底には、子どもたちがおかれた環境への無理解や、施設で暮らす子どもたちへの偏見があるようです。
ブリッジフォースマイルの調査によると、2020年春に高校や特別支援学校などを卒業して巣立った子どものうち、進学する子どもの55.6%が一人暮らしをしています。
また、就職した子どもは、39.8%が一人暮らし、26.0%が勤務先の社員寮やシェアハウスなどで共同生活をしています。社会人2年目から5年目の子どもたちを見ても、それぞれ4分の1以上が共同生活をしており、2016年度に18歳になった社会人5年目の子どもたちについては32.7%が、会社の寮やシェアハウスなどの共同生活です。
施設生活経験者の現在の住まい(2020年6月現在)(※)
親を頼れない子どもたちは、就職する際に、社員寮を持つ企業を選びがちです。しかし、仕事の内容や社風などがよくわからないまま、社員寮の有無を条件に就職先を決めてしまうと、働き始めてから仕事に不満を抱えて辞めてしまうこともあります。会社を辞めると住まいを失うことにもなり、生活基盤があっという間に崩れてしまいます。
◆「親元に戻ったからOK」とはいかない事情
2020年については、進学した子どものうちの12.0%、就職した子どもの12.6%が、実親の元に帰っています。離れて暮らしている間に親との関係性が改善した結果、親元に戻った子もいますが、中には、それほど関係性が良くなっていないけれど、一人暮らしをする自信がなく、ほかに選択肢がないために親元に戻る子もいます。
就職した子どもに、親が経済的に依存するケースもあります。結局親との折り合いがつかず、家を出てしまう子どももおり、なかなか「親元に戻ったからOK」というわけにはいきません。
障がいを持つ子どもの場合は、児童養護施設などを出て、障がい者のグループホームなどに行くこともあります。18歳になると児童福祉から障がい者福祉に、支援の枠組みが引き継がれるのです。ただ、グループホームに行った子どもの中にも、ルールが厳しすぎるなどの理由でグループホームを出てしまい、一人暮らしを始める子どももいます。
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