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一時保護所の現状
写真:コラム【児相3:一時保護所の現状】のアイキャッチ画像(小さい子ども)

一時保護所は、児童相談所に保護された子どもが、長期的な処遇が決まるまで一時的に生活する場所で、2025年4月現在、全国に159カ所あります。年間の保護件数は3万件を超え、常時2000人近い子どもが生活しています。緊急に保護を必要とする子どもにとって欠かせない施設ですが、親による連れ戻しを防ぐなどの理由から所在地は公開されておらず、常時鍵のかかっている保護所もあるなど閉鎖性が高いこともあって、その実態は一般にはほとんど知られていません。

 

◆長期化する入所期間

虐待の増加などによって児童相談所が保護する子どもは年々増加しています。一時保護所の入所期間は2カ月以内と定められていますが、その後の生活拠点となる児童養護施設や里親などのキャパシティ不足から、行き先が決まらないまま長期に在所する子どもが増えています。在所日数の全国平均は30日程度ですが、2019年には規定の2カ月を超えたケースが全体の16%にのぼり、最長で2年を超えた事例もありました。

 

一時保護所の入所者数と在所日数(※)

棒グラフと折れ線グラフ

 

その結果、定員いっぱい、あるいは定員を超えて子どもを収容せざるを得ない一時保護所も増えています。2018年の調査では、年間の平均入所率(入所者数/定員)が100%を超えた一時保護所が13カ所、80~100%が23カ所にのぼりました。こうした一時保護所では、定員からはみ出した子どもが廊下に布団を敷いて寝かされるなど、劣悪な環境での生活を強いられることになります。

 

◆安心な場所であるはずが…

入所理由は半数近くが虐待ですが、非行による入所も14%にのぼるなど、子どもの抱える事情が多様であることも状況を複雑にしています。暴力をふるったり、職員に反抗する子どももいることから、管理体制は厳しくなりがちですし、職員が子どもをどなりつけるなど、強圧的な態度をとることもあるといいます。虐待から保護されたばかりの子どもは、大きな声を聞くだけで恐怖にかられ、パニックになることがあります。

 

日々の生活は最近まで厳しく制限されていました。個室のある一時保護所は少なく、多くの子どもたちが数人ずつ同じ部屋で過ごしますが、互いの事情や連絡先を教え合うことは原則禁止。トラブルを避けるために、子ども同士が目を合わせることすら禁じる保護所もあったといいます。私物の持ち込みも自由な外出も学校に通うことも原則禁止。学習に関しては保護所内で市販のドリルをやる程度で、学習の遅れが後々まで尾を引くこともありました。誕生会や戸外レクリエーションなどのイベントで、子どもたちが少しでも楽しく過ごせるよう職員が努力する保護所もありましたが、子どもの人数が多すぎ、職員の人員が不足している保護所では、そうした努力にも限界がありました。

 

2015年、ある保護所で紛失した紙一枚を探すために7~15歳の少女9人を裸にして所持品検査を行った事件が報じられたことなどをきっかけに、保護所の抱える問題が広く知られるようになり、国や自治体が改善に乗り出しました。2024年4月に施行された一時保護所の新たな設備・運営基準では、一時保護所は今後、定期的に第三者による評価を受けること、正当な理由なく児童の権利を制限してはならないことなどを規定。具体的には施錠による行動制限をしないこと、私物の持ち込みを認めること、小学生以上には個室を与えるよう努めるなど居住環境を整備すること、就学年齢の児童は可能な限り学校に通わせること、学習指導員や看護師などを含む十分な職員配置を行うこと、などが明記されました。

 

収容人数の多さや職員の人手不足などから、実際の改善には時間がかかるとみられますが、定期的な第三者評価などを経て、保護所の状況は確実に良くなっていくと期待されます。

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