ニュース・活動報告
両親から暴力を受け続け、勇気をふるって救いを求めたアンケート文も父の手に渡り、怒った父に命を絶たれた小4の少女。「もうおねがいゆるしてください」と両親あてのけなげな〝反省文〟を残し、衰弱死した5歳の少女。鍵をかけたマンションの一室に置きざりにされ、餓死した3歳と1歳の姉弟。痛ましい虐待死事件がしばしば世間を騒がせますが、子どもの虐待死は、こうして大ニュースになるものばかりではありません。
厚生労働省の調査によれば、2018年に虐待で亡くなった子どもは54人にのぼります。データのある過去16年間をみても、年によって増減はあるものの、平均して1年に50数人、つまりほぼ1週間に1人の子どもが、この国のどこかで虐待によって命を落としているのです。
虐待による死亡件数(2003~2018)(※)
年齢別の死亡件数構成割合(2018年)(※)
◆亡くなる子どもの4割は0歳
亡くなった子どもの年齢は0歳が毎年最も多く、2018年では41%にのぼります。1歳が11%、2歳が6%と、子どもが大きくなるにつれて死亡例は減っています。また、0歳の死亡例を月齢別にみると、0カ月が32%、1カ月が14%と、生まれたばかりの赤ちゃんが半数近くを占めています。なお、3歳未満の子どもの場合、死亡原因となった虐待の種類は「ネグレクト(育児放棄)」が58%と最も多く、「身体的虐待」の39%を上回ります。
3歳未満の子どもに対する虐待の動機は、「保護を怠ったことによる死亡」35%、「泣き止まないことにいらだった」10%などが多くなっています。生まれたばかりの赤ちゃんの世話は本当に大変です。ひっきりなしの授乳やオムツ替え、むずかりで親は満足に眠ることもできません。手伝ったり、相談に乗ってくれたりする人がいればなんとかやっていけますが、さまざまな事情で頼れる人が誰もいない場合もあります。家族がいても、手伝うどころかうるさがるだけの場合もあります。ひとりぼっちで、どうしていいかわからず逃げ出してしまう。あるいは、思わず手をあげてしまう。そんな孤立した親の姿が、データから浮かび上がってきます。
◆3歳児以上の死因の9割は「身体的虐待」
3歳以上の虐待死の場合は、「身体的虐待」が91%と圧倒的多数で、動機は「しつけのつもり」が25%で最多です。子どもが親の思い通りに行動しなくなることは、自我の芽生えなど成長の証しでもあるのですが、それをストレスと感じ、強引に言うことをきかせようと虐待に走ってしまう親がいるのです。周囲の目を気にするあまり、必要以上に厳しくしてしまうケースも見られます。行き過ぎたしつけは許されることではありませんが、子どものしつけはすべて親の責任とされる日本社会のあり方が、見えないプレッシャーとなって親を追い詰めている面もあると言えそうです。
◆親にも支援が必要
虐待の主な加害者は、子どもの年齢を問わず実母が46%と半数近くを占め、実父が17%、継父が4%などとなっています。3割以上が1人親家庭で、実母の2割弱が10代での若年出産。行政の乳幼児健診を受けていないケースが1割以上にのぼり、子どもに身体や発達など何らかの障害があったケースも目立ちます。さまざまな問題を抱えた親が、必要な援助を得られないまま孤立し、虐待に走ってしまうことが多いのです。
子どもを虐待死させた親が非難されるのは当然のことですが、それだけでは問題は解決しません。家族の形が多様化し、地域の人間関係も希薄になるなか、子育ての孤立は多くの親子の共通の問題です。行政は妊娠中から育児期にかけての長期の支援体制を整え、問題を抱えた親子を積極的に見つけ、援助する必要があります。私たち一般の市民も、それぞれの地域で暮らす親子に温かい目を注ぎ、できる範囲で手を差し伸べる。そうした積み重ねが、子どもたちを悲惨な虐待死から救うことにつながるはずです。
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