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データで見る子ども福祉の現状
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◆児童相談所の人員不足

子ども虐待問題の主な担い手である児童相談所は、2018年4月1日現在、全国に215カ所あります。設置主体はほとんどが都道府県と政令指定都市ですが、近年はよりきめ細かい対応が必要だとして、中核市や東京特別区などでも設置が進んでいます。悲惨な虐待事件が起きるたびに「対応が不十分だった」などと非難を浴びる児童相談所ですが、その背景には児童相談所の絶対的な人員不足があります。

 

児童相談所で働く職員は2018年4月現在、1万4159人います。そのうち最前線で子どもや保護者の相談に乗る児童福祉司が3817人、心理学の専門知識に基づいて心理判定を行う児童心理司が1570人、医療的観点から助言を行う医師が664人、同じく保健師が143人などとなっています。(※1)

 

子ども虐待の増加に伴って児童相談所の設置数は増え、人員も拡充が図られてきました。1999年当時、全国の児童福祉司は1223人でしたから、現在は3倍以上に増えたことになります。ですが、児童相談所に寄せられる子ども虐待の相談件数はこの間に1万1631件から15万9838件へと13.7倍に増えており、児童福祉司が担当する虐待相談件数は1人当たり平均10件弱から40件強へと大きく増えました。地域によっては1人が100件前後を担当していることもあり、人員不足は深刻さを増すばかりです。

 

 

◆児童虐待防止の強化プラン

子どもを保護するために法律知識が必要とされる場面も増えていることから、2016年には児童相談所に弁護士を配置することも義務付けられましたが、2018年現在、常勤弁護士のいる児童相談所は全体の5%の11カ所にすぎません。ほぼ4割が非常勤、5割以上は弁護士事務所と契約して必要な時のみ相談する形となっており、とうてい十分な体制とはいえません。

 

このため、国は2018年末に「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」を発表。2022年までに児童福祉司を5260人、児童心理司を2150人に増やすなどの目標を掲げました。同時に、児童福祉司の担当するケースが虐待以外の相談も含めて1人当たり40~50 ケース相当となるよう、児童相談所の管轄区域の人口を4万人から3万人に見直すとしました。

 

「強化プラン」では、児童相談所の専門性向上も重要な課題としています。具体的には、児童福祉司のうち、他の児童福祉司の指導に当たる「スーパーバイザー」を2017年の620人から2022年には920人に増やし、児童福祉司の研修を強化する、個々のケースの検討に地域の関係機関や有識者に参加してもらう、などの方策があげられています。(※2)

 

ですが、この程度の強化策では追いつかないとして、より抜本的な体制改革を望む声も強まっています。そもそも日本では、子どもの福祉に充てられる予算が少なすぎるという指摘もあります。

 

◆子ども福祉予算の国際比較

子どもの福祉に関する仕組みは国によって大きく違い、単純に比較することは困難ですが、保護者のいない子どもや虐待などで保護者のもとに置くことが適当でない子どもを保護し、施設や里親など社会的養護下で育てる「社会的養護の費用」がその国の名目GDP(国内総生産)に占める割合を比較したデータがあります。アメリカは2.6%、デンマークは0.75%、ドイツは0.23%などですが、日本は0.02%。けた違いに少ないのです。また、日本の児童相談所と似た機能を持つドイツの少年局は全国に511カ所と、人口比で日本の児童相談所の3.6倍にのぼります。(※3)

 

すべての子どもに、健やかな環境の下で育てられる権利があります。この国は果たして、それにふさわしい態勢を整えているのか、整える意思があるのか。社会のあり方そのものが問われているのです。

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