ニュース・活動報告
児童養護施設で暮らす子どもたちと生活をともにする職員は、正式には「児童指導員」および「保育士」と呼ばれる人々です。施設には食事作りを担当する調理師や栄養士、嘱託医、心理療法担当者などもいますが、子どもたちの親代わりという最も重要な役割を担い、「施設の職員」と通常呼ばれるのは、この「児童指導員」と「保育士」です。
◆家事からメンタルケア、イベント運営まで
職員は、食事や入浴など日常生活の世話や学校行事への参加から、進学や就職相談など自立をめざした支援まで行います。さらに、入所に至るまでの辛い経験から他人に全く心を開かず自分の殻に閉じこもってしまう子どもや、暴力でしか自己表現できない子どもと信頼関係を築き、専門の心理療法担当者と協力してメンタルケアを行います。家庭復帰を目指す上では、子どもの家族への支援も重要な役割です。日常業務の合間には、バザーやクリスマス会といったイベントの運営もこなします。こうした仕事は、時間できっちりと区切れるものではありません。職員が特に忙しいのは、子どもたちが施設にいる時間帯、つまり夜間や週末、夏休みなどの長期休暇です。早番・日勤・宿直などのローテーションが組まれていますが、子どもに問題が起これば時間外でも対応せざるを得ません。
◆高まる施設への期待
近年は、児童養護施設に期待される役割も拡大しています。心に傷を抱えた子どもたちはしばしば、暴力や非行、リストカットなどの問題行動を起こしますし、障害(知的、精神、発達など)を抱えた子どもたちの割合も増えています。そうした子どもたちの背景や心理を正しく理解し、対応するには、高度な専門性も要求されます。
2004年からは、入所している子どもたちの自立支援への取り組みに加え、退所後3年間の子どもたちへのアフターケアが義務づけられました。進学先の学校を中退してしまったり、仕事が長続きしなかったり、家族とトラブルが起きたりと、退所した子どもたちからの相談は多岐にわたります。
また、子ども虐待を未然に防ぐための「地域の子育て支援の拠点」としての役割も求められるようになり、地域の関係機関との調整にさく時間も増えています。地域の里親を支援する役割を担う施設もあります。
◆職員の勤務環境改善は、喫緊の課題
仕事が増え、高度化する一方、それに見合った人材供給や育成がなされているとは言えません。児童養護施設の職員配置は、長年、「満3歳に満たない幼児おおむね2人につき1人以上、満3歳以上の幼児おおむね4人につき1人以上、少年おおむね6人につき1人以上とする」と定められてきました。この配置基準は、2012年度の改正で、「少年5.5人に対して1人以上」などとやや改善されましたが、とうてい十分とは言えません。小規模なグループホームでは少年6人に対し職員6人をめざすなど配置が手厚くなっていますが、まだ一部にすぎません。
こうしたなかで現場は疲弊し、数年で辞めていく職員が後を絶ちません。研修の機会も少なく、スキルや経験が蓄積されにくい状況です。職員に求められるものが質・量ともに上がってきているにも関わらず、対応が追いついていないのです。結果として、職員が体罰を行うなど、ストレスが子どもたちに向かってしまうケースもありますし、ケアの不十分さが、子ども同士の暴力やいじめにつながることもあります。国には年間十数件の施設内虐待が報告されていますが、専門家によればその数字は氷山の一角にすぎず、公表されないまま施設内部で処理されているケースも多いといいます。児童養護施設の職員の勤務環境を改善することは、緊急を要する課題なのです。
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