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巣立ち後の公的支援
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「お金の問題」――。親を頼れず、「実家」というセーフティネットがないまま、児童養護施設や里親家庭から社会に巣立つ子どもたちが直面する、最も大きな壁の一つです。かつては、こうした子どもたちへの国や自治体からの公的支援は、社会に出ると同時にぷっつりと途絶えていました。しかし近年は、少しずつではありますが、さまざまな形で巣立った後も継続的に支える仕組みが生まれつつあります。

 

◆一人暮らしの準備にかかるお金の支援 

児童養護施設や里親家庭など、社会的養護の枠組みの中で支援されている子どもの生活を支えるために国や自治体から出ているお金は「措置費」(里親家庭の場合は委託費)と呼ばれます。そしてその中に引っ越し準備金のような形で、自立支度金(巣立ちの準備資金)が用意されています。

 

自立支度金の金額は、自治体によって異なりますが、東京都の場合は約27万円。しかし、一人暮らしを始めるにあたっては非常にお金がかかります。アパートの契約や家電、家具、寝具などの必需品を購入すると、あっという間になくなってしまいます。多くの子どもたちが、一人暮らしに必要なお金を貯めるために、高校生のころから多くの時間をアルバイトに費やしているゆえんです。

 

自立支度金は給付金(返済しなくてもいいお金)ですが、公的支援としてはこのほかに、「自立支援資金貸付事業」という制度もあります。これは、巣立ちの際に借りられるお金ですが、一定の条件を満たすと返済しなくてもよくなります。就職する場合は、2年以上就労すること。進学の場合は、進学先を卒業した後、5年間就労することが条件です。この制度は、各都道府県の社会福祉協議会が行っていて、ホームページにも情報が掲載されています。

 

◆高校卒業後も、施設や里親家庭で生活

以前は、高校を中退したり卒業したりすると児童養護施設や里親家庭を出なくてはなりませんでした。多くの子どもが18歳(またはそれ以下)で、巣立ちを余儀なくされていたのです。

 

実は、自立の準備ができていないなどの場合には施設や里親家庭での生活を20歳の誕生日まで延長することができる「措置延長」という制度があったのですが、これまではほとんど使われてきませんでした。特に都市部では、児童養護施設の数が足りず、新たに入ってくる子どもたちを受け入れるために、措置延長を行う余裕がなかったからです。

 

しかし最近では、「必要な場合は積極的に措置延長を行うように」と国が後押ししていることもあり、措置延長の利用が増えています。措置延長がされていれば、引き続き児童養護施設や里親で生活しながら進学したり、就職先を探したりすることができるので、一人暮らしで必要な費用が要らず、経済的な負担は大幅に軽くなります。

さらに2017年には、22歳の誕生日まで施設等で生活を続けることができる「社会的養護自立支援制度」もできました。

 

巣立ちの準備ができるまで施設での生活を続けるための選択肢は増えています。

 

◆一人暮らしで避けて通れない「保証人」の問題 

未成年者の契約には保証人が必要です。通常は親が保証人になりますが、児童養護施設や里親家庭で生活していた場合は、施設長や里親が保証人になることを求められます。

 

しかし、本人が病気やケガなど何らかの理由で家賃が払えなくなると、保証人である施設長が本人に代わって家賃の滞納分を支払うなど、身元保証人や連帯保証人として賠償を要求されることがあります。

 

こうした場合に、施設長や里親が支払った経費の一定額を助成する「身元保証人確保対策事業」があり、都道府県等の社会福祉協議会が運営しています。

 

◆制度は拡充、今後の課題は「活用」 

巣立ちに関わる公的援助は、ここ20年ほどでさまざまな制度が整ってきました。

ただ、こうした公的支援が適切に活用されるかどうかは、子どもの巣立ちの準備を直接サポートしている児童養護施設職員や里親の、知識、経験や考え方によって変わってきます。

 

例えば、自立支援資金貸付制度は、一定条件をクリアできれば返済の必要がありませんが、借金になってしまうことを恐れて活用を勧めない職員や里親もいます。また、措置延長についても、活用が進んでいる施設とそうでないところで差が出ています。

 

子どもたちを支える大人が制度を理解し、適切に情報提供を行うことが求められています。

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