ニュース・活動報告

知られていない子どもの権利
コラム【子どもの権利1_知られていない子どもの権利】のアイキャッチ画像

子どもを主体とする「子どもの権利」という考え方は、比較的新しいものです。1924年のジュネーブ宣言や48年の世界人権宣言、59年の児童の権利宣言などでも子どもの権利はうたわれていましたが、それらはあくまで「保護されるべき対象」としての権利でした。一方、78年に草案が国連に提出され、約10年の議論を経て89年に採択された「子どもの権利条約」は、子どもを保護の対象としてだけではなく、一人の人間として認め、自己決定を含めた権利の主体としてとらえた、画期的なものでした。

 

◆子どもの権利とは

「子どもの権利条約」が定めた子どもの権利は大きく分けて四つあります。「生きる権利」(すべての子どもの命が守られること)、「育つ権利」(もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療や教育、生活への支援などを受け、友達と遊んだりすること)、「守られる権利」(暴力や搾取、有害な労働などから守られること)、「参加する権利」(自由に意見を表したり、団体を作ったりできること)です。

 

また、「子どもの権利条約」には四つの原則があり、「命を守られ成長できること」「差別のないこと」に加え、「子どもの最善の利益」(子どもに関することを行う時は、その子どもにとって最もよいことを第一に考える)、「子どもの意見の尊重」(子どもは自分に関する事柄について自由に意見を表明でき、おとなはその意見を十分に考慮する)が掲げられています。

 

◆遅れる日本の取り組み

この条約に基づき、各国はそれぞれの社会のあり方を見直し、子どもの権利を守るための体制整備を進めているわけですが、日本における取り組みは十分とは言えません。

 

日本が子どもの権利条約を批准したのは1994年で、現在までに批准した196カ国のうち158番目という遅さでした。また、児童福祉法が改正され、子どもが「権利の主体」として国内で初めて法的に位置づけられたのは、批准から22年後の2016年でした。日本では、この条約は子どもの死亡率が高い紛争国や途上国のためのものと受け止める向きが多かったことに加え、子どもの権利を前面に押し出すことは子どもを甘やかし増長させることになるとの危惧が背景にあった、と専門家は指摘しています。

 

条約の批准国は、国内での条約実施状況を定期的に国連に報告し、それをもとに国連が改善すべき点などを勧告します。日本もすでに5回の報告を行い、勧告を受けてきました。勧告では、婚外子や外国籍の子ども・障害のある子どもなどへの差別、子ども虐待の頻発、子どもの自殺の頻発、ポルノなど子どもへの性的搾取、人権教育の不十分さ、過度に競争的な教育システムなど、さまざまな問題点が指摘されています。子どもの権利に関して日本には多くの課題があることが明らかになったわけですが、社会の反応は鈍いままです。

 

◆子どもの権利に無関心な日本人

そもそも日本では、子どもの権利条約自体を知らない人が多いのです。国際的な子ども支援団体「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が2019年に行った調査によれば、条約を「内容までよく知っている」「内容について少し知っている」と答えたのは、子ども(18歳以下)が32.9%、おとなが16.4%。「名前だけ聞いたことがある」は子ども35.5%、おとな40.7%。「聞いたことがない」は子ども31.5%、おとな42.9%でした。子どもは学校で条約について学び、内容にもある程度関心を持っていますが、おとなは多くが無関心なのです。

 

子どもの権利条約を知っていますか?

グラフ:子どもと大人に子どもの権利条約を知っていますか?と聞いたもの。子どもの回問(よく知っている8.9%、少し知っている24.0%、名前だけ聞いたことがある35.5%、聞いたことがない31.6%)、大人の回問(よく知っている2.2%、少し知っている14.2%、名前だけ聞いたことがある40.7%、聞いたことがない42.9%)

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンによるアンケート調査

 

調査では、「日本では子どもの権利は十分尊重されているか」との質問もあり、「尊重されている」は子ども18.7%、おとな31.0%、「あまり尊重されていない」が子ども24.2%、おとな5.0%でした。おとなは子どもを尊重しているつもりでも、子どもはあまり尊重されていない、と感じているのです。実際に日本では、子どもが直接にかかわる教育や福祉の現場においてさえ、子ども自身の意思がきちんと問われ、尊重されることは少なく、子どもはおとなが決めたことに従っていればよい、とされていることが多いと言えるでしょう。

 

子どもにもおとなと同じく、ひとりの人間としての主体的な権利がある。そのことを社会がきちんと認識することが、子どもの問題を解決していくうえでの第一歩となるはずです。

Bridge for Smile

認定NPO法人ブリッジフォースマイルのホームページへようこそ!

私たちは、児童養護施設や里親家庭などで暮らす、親を頼れない子どもたちの巣立ち支援をしているNPOです。
ご関心に合わせ、以下から知りたい項目をお選びください。