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子どもたちが抱える「内面の課題」
子どもたちが抱える「内面の課題」

ブリッジフォースマイル(B4S)では、児童養護施設を退所した若者たちの状況を継続的に調べるトラッキング調査を行っています。

 

◆中退者の半数 「学習意欲の低下」

2021年度の調査によると、高校を卒業して大学・短大・専門学校などに進学した若者の27.1%が、卒業後2年3カ月のうちに学校を中退しています。中退の理由(複数回答)は「学習意欲低下」が最も多く57.3%、次いで「メンタル不調」が43.9%で、気持ちの問題で中退に至るケースが多いことがわかります。

 

中退理由

 

また、高校を卒業して就職した若者は、当初は70~80%が正社員・正規公務員となりますが、そのうち12.5%が就職後3カ月までに離職。3年目までには約40%が最初の勤務先を離職しており、4年目になると正社員・正規公務員ではない就労形態か無職が40%を超えてしまいます。

 

◆「内面の課題」 退所後も影響

施設退所者の多くがなぜ早期に中退・離職してしまうのか。その理由のひとつが、彼らの抱える「内面の課題」であると考えられます。

 

厚生労働省が全国の児童養護施設を対象に行った調査(2018年時点)では、入所児童の36.7%が心身に何らかの障害を持っていると診断されています。最も多いのは「知的障害」の13.6%で、他にも「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」8.8%、「注意欠陥多動性障害」8.5%、「反応性愛着障害」5.7%、「外傷後ストレス障害(PTSD)」1.2%などがみられます。

 

B4Sのトラッキング調査ではこうした状況を、診断のついていないグレーゾーンにまで対象を広げて調べています。この調査では、退所者たちが施設から巣立つ前の段階で、「精神疾患の診断または疑いあり」が19%、「発達/知的障害の診断または疑いあり」が33%にのぼりました。

 

精神疾患や精神障害の有無        発達障害や知的障害の有無

 

また、「対外感情コントロール」「対自感情コントロール」「依存傾向」「社会性欠如」「金銭管理」の項目ごとに問題があったかどうかを職員に尋ねたところ、どの項目でも「非常に問題があった」「問題があった」「やや問題があった」など何らかの問題があったケースが35~45%程度でした。また、退所者の9.3%が不登校、5.9%が自傷行為を過去に経験しています。おおむね退所者の4割が何らかの「内面の課題」を抱えた状態で施設を退所しているのです。

 

内面的な問題傾向の有無

 


児童養護施設の入所児童の6割以上が虐待を受けた経験を持っており、その経験が彼らの「内面の課題」と深く関連しているとみられます。施設の職員たちはその深刻さを理解していますが、診療やカウンセリングなどの専門的なケアが十分に行われている施設は決して多くありません。ケアができていた場合も、退所後は時間的・経済的な制約もあり、継続できなくなるケースが多いようです。

 

そうした退所者たちが勉学や仕事の継続に困難を感じることがあるのは当然とも言えます。彼らが困難を乗り越え、自らの人生を切り開いていけるようにするためには、出身施設や自治体、NPOなどが気軽な相談場所を提供するなど、社会全体でサポートを行っていく必要があります。

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