ニュース・活動報告
児童虐待は、殴る・蹴るなどの暴力を加える「身体的虐待」、十分な食事を与えないなどの「ネグレクト(育児放棄)」、暴言や脅しで子どもの心を傷つける「心理的虐待」、そして「性的虐待」の4つに分けられます。そのいずれもが年々増加の一途をたどり、2019年に児童相談所に報告された件数は計19万3780件にのぼりました。報告件数が増えている背景には、児童虐待に対する社会的な関心の高まりがあるといわれますが、一方で多くの専門家は、報告されていないケースがなお多数あると見ています。
◆心理的虐待が最多
虐待の報告件数を種類別にみると、「心理的虐待」が最も多く全体の56%。次いで「身体的虐待」が25%、「ネグレクト」が17%、「性的虐待」が1%強となっています(※)。
児童相談所での児童虐待相談対応件数(2019年度)
「お前なんか産まなければよかった」などの暴言で子どもの心を傷つける「心理的虐待」は、本来、表面化しにくいものですが、2004年の児童虐待防止法改正以降、子どもの面前でのDV(ドメスティックバイオレンス=パートナー間の暴力)が「心理的虐待」として報告されることになったため、件数が急増しました。面前DVはもちろん子どもの心に深い傷を残す重大な問題ですが、それ以外の「心理的虐待」は多くが家庭外に知られないままになっていると考えられます。
◆見つけやすい身体的虐待
子どもの体に物理的な傷を残す「身体的虐待」は、最も見つけやすいものですが、それも大ケガをして病院に行ったり、学校や保育所などで気づかれたりして初めて、問題になります。衣服に隠れる部分だけに暴行を加えるような場合は、簡単には気づかれません。
◆気づかれにくいネグレクト
「ネグレクト」も、子どもの衣服がひどく汚れていたり、見るからにおなかをすかせているなど、よほどの異状がなければ気づかれにくいものです。幼い子どもが外に出してもらえないまま家で放置されているようなケースは、その子の存在すら周囲に知られていないことがあります。「ネグレクト」が直接的に虐待死につながるケースは少ないとの関係者の思い込みも、「ネグレクト」が見過ごされやすい原因になっていると言われます。
◆表面化しない性的虐待
そして、最も表面化しにくいのが「性的虐待」です。「性的虐待」は子どもの心身に深い傷を残しますが、被害者が被害を知られることを恥じて口を閉ざすケースが多いですし、被害者が幼い場合は、被害を自覚できないこともあります。関係者が、「性的虐待の被害者は思春期以降の女子」と思い込みがちであるため、それ以外の被害が見えにくくなっていると指摘する声もあります。
児童虐待に対する社会的関心は確実に高まっています。けれども、今もなお見過ごされたままの虐待ケースを見つけ、人知れず苦しんでいる子どもたちを救うためには、さらに私たちみんなが意識を高め、子どもたちのSOSに耳をすませていかなければなりません。
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