ニュース・活動報告
ジョブプラクティスは、働くイメージを描いてもらうために、中高生を対象に行っている「1日仕事体験」プログラムです。通常は企業で実施し、いろいろな施設の中高生が参加します。2021年度は、12社の企業のご協力を得て、15回開催し、のべ155人の子どもたちが参加しました。
今回ご紹介するのは、ICTサービスを提供している企業「株式会社JSOL」のご協力を得て実施したジョブプラクティスです。JSOLでは2017年度から毎年開催していただいており、これまでは本社施設で行ってきました。今回はじめて、東京都立川市にある児童養護施設「至誠学園」を訪問して実施することになりました。JSOLの社員のみなさまと一緒にB4Sの社会人ボランティアもサポート役として参加したジョブプラクティスの様子をお届けします。
はじめに&プログラム概要
当日集まった子どもたちは、小学生から高校生まで10人。自己紹介では恥ずかしそうな子もいましたが、皆ドローン体験を心待ちにしていた様子です。
プログラムは、大まかに以下のような構成になっています。
- JSOLのお仕事紹介&ドローン体験
- 営業体験
- プロジェクト体験
ドローン体験は入り口で、ドローンを使いつつ「ITの力でお客様の希望を叶える」というITの仕事そのものを疑似体験することが、プログラムの狙いです。
1.JSOLのお仕事紹介&ドローン体験
最初は、JSOLが行っているITのお仕事の紹介です。そもそもITとはどんなものを指すのでしょうか。答えは、身の周りにあるパソコンやゲーム機、乗りもの、信号機、生活家電などに組み込まれた「プログラムを使った仕組み・技術」のことです。IT業界には、子どもたちにもなじみ深いゲームや電話の会社もあり、身近な製品・サービスの裏側でITが活躍していることが実感できました。
続いて、JSOLの仕事の進め方を教えていただきました。社員の方が、「お客様の希望を聞いて、希望を叶えるプログラムを作り、テストして、メンテナンスする」というプロセスを、自動パン焼き機の開発に例えて説明してくださいます。難しい言葉もイメージしやすい説明で、メモを取りつつ聞いている小学生の姿も見られました。
いよいよ、楽しみにしていたドローンの操作実習です。子どもたちはチームに分かれ、配布されたタブレットのアプリで、ドローンに出す命令をプログラミングしていきます。離陸から着陸までの動作を設定し、スタートボタンを押すとドローンが始動!好奇心旺盛な子どもたちは、基本の上下・前後左右移動に加え、ドローンをフリップ(宙返り)させたりLEDライトの色を変えたりして、思い思いに楽しんでいました。
2.営業体験
ドローンの操作を理解したところで、次は営業体験の時間です。子どもたちが営業チームになり、お客様役のJSOL社員の方から解決したい課題を聞き取ります。運搬業のお客様で、もっと多くの物を運びたいけれど、人手不足で困っているとのこと。営業チームは荷物の種類や量、運搬先など、詳しい内容を質問します。運びたい物はクレジットカードと聞いて、ドローンが使えそうな予感がしてきました。
子どもたちは、大人のサポートも得ながら、お客様に提案するため、アイディアを磨いていきます。「エンジンを付けて、超速く飛ばそう!」「1日以内に届けばいいって言ってたから、エンジンなくてもいいんじゃない?」「運ぶ人は減らせるけれど、トラブルが起きたら結構補修費用がかかるかも」など、お客さんの立場を考えながら、皆でプランを練りました。
発表の時間がやってきて、子どもたちは堂々とドローンによる自動運搬を提案。お客様も期待してくれて、開発に進むことが決まりました。
3.プロジェクト体験(設計・開発・テスト・納品)
お客様から詳しい飛行ルートを教えてもらい、早速、設計開始。ドローンがゴール地点に到達するには、会場に設置されたテーブルを飛び越え、積み上げた段ボールの間を通り、ホワイトボードの下を潜り抜けなければなりません。まずはメジャーで距離を測り、ドローンをどの向きに何センチ動かせばよいか、一つ一つ手順を書き出していきます。子どもたちは真剣そのものです。しかし、いざアプリでプログラムを組みドローンを飛ばしてみると、目標からずれて、なかなか思い通りにいきません。特に段ボール山が難関で、衝突・落下が続出・・・。子どもたちは、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、あっという間に一時間が経ちました。
ついに、納品会議がやってきました。最初のチームから順に、テスト飛行をお客様に見ていただきます。ヴィーンンンとプロペラの音が響き、ドローンが浮上。設定高度に達して前進、最初の目的地上空で静止、降下、着陸。再浮上、方向転換して前進…と続きます。多くのチームが衝突などで途中リタイアとなってしまいましたが、最初の目的地には、見事全チームのドローンが到達しました。唯一、完璧に課題をクリアしたのは、中盤のチームです。観衆が固唾を呑んで見守る中、悠然と障害物をかわしたドローンは、ぴたりとゴール地点に着陸!その瞬間、満場の拍手が沸き起こり、参加者全員が感動を分かち合いました。
参加した子どもたちの声
最後の振り返りでは、子どもたちから様々な感想を聞くことができました。「うまく飛ばせなかったけれど、楽しかった。」「テストの時は全然成功しなかったのに、最後だけちゃんと飛んで嬉しかった。」など、チャレンジそのものを楽しんだり、成功して達成感を得たりした様子が伝わってきました。一方で、「壁に当たって悔しかった。」「(大人の手助けで)変なズルしてゴールしちゃったから、ちょっと悔しい。」など、自分の力で乗り越えたかったという思いを感じさせる声もありました。また、「ITの仕事には、こういう仕事もあるのかと思って、楽しかった。」「お客様の話を聞いて、考えてプログラムする。時間を有効的に使う」「営業体験は難しかった」「周りへの配慮、細かい調整」など、ITの仕事についての気づきを得た子もいたようです。実施中、熱心にJSOLの社員の方に質問している高校生の姿が印象的でした。
JSOL社員の方の声
今回のプログラムを担当されたJSOLの社員の方に、このようなプログラムを実施している理由や、初めて施設を訪問して実施した感想を伺いました。
- このプログラムはCSR活動の一つで、元々社員がブリッジフォースマイルのボランティアとして活動していた縁で始めました。様々な活動を通じて、企業としての責任を果たすという側面と、IT業界の志望者を増やすためアピールを兼ねて実施しているという側面があります。
- 子どもたちが、仲良く盛り上がっている姿を見て、アウェーであるJSOLのオフィスに来てもらう緊張感もよいけれど、ホームで安心感を持ちながら参加してもらうのもよいなと思いました。
- 施設職員の方は、JSOLのオフィスで実施する時も付き添いで来ていただいていますが、今回は本当に様々な面で協力してくださって、一緒に考えながら取り組むことができました。なかなかない機会なので、社員にとっても刺激が多かったと思います。
- 今日のプログラムには、仕事でうまくいかないことがあっても、自分で別の方法を考えて乗り越えるという要素を取り入れていました。子どもたちは、とても真剣に取り組んでくれて、これが、少しでも将来につながる体験になっていれば嬉しいです。
施設職員の方の声
至誠学園の職員の方からも、最後に感想をいただきました。
- 最初の自己紹介で発言をためらっていた子も含め、最後には子どもたち全員が活き活きと感想を述べていて、心から楽しんだのだろうと感じました。
- 今回のプログラムには仕事体験の面もあって、楽しいだけではなく、お客さんの希望にこたえるという目的意識があったからこそ、何度もやり直しをすることにつながったのだと思います。ITの仕事がどういうものか分かって良かったです。
- 子どもたちには、様々な経験をさせるようにしていますが、今回のように、同じ方向を向いて物事を考えるという機会はあまりないので、このような経験ができて良かったです。こういうことも仕事なのだと知る、良い機会になったと思います。
- 途中退室したため、プログラムの最中の様子は見ていませんが、会場から出てきた子どもたちの様子が本当に楽しそうでした。
おわりに
子どもたちはお仕事体験にワクワク、大人たちは子どもたちのチャレンジ精神と笑顔にワクワク、そんな素敵な3時間半でした。JSOLの皆様、ありがとうございました!
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