ニュース・活動報告

【プレスリリース】全国初の児童養護施設退所者のトラッキング調査を開始しました

 

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NPO法人ブリッジフォースマイルは、
全国初の児童養護施設退所者のトラッキング調査を開始しました。
今後10年にわたり、状況の変化を追跡していきます。
虐待等を背景に親を頼れないまま施設を退所する子どもたち。
初回の調査報告書から見えたのは、高校卒業後の
中退率および離職率がいずれも全国平均より大幅に高いこと。
現況不明の退所者は14%(退所後3年3カ月)となり
支援が必要な人ほど連絡がとれないアフターケアの難しさでした。

 

 ( 47都道府県の628施設に向け実施。有効回答数146施設 回答率23% )
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■進学環境は改善している一方、入学から1年3カ月で14.8%が中退
施設ごとの進路指導の方針に大きな差がみられる
高校卒業後に進学した子ども達の進路について、施設職員にアンケートを実施しました。給付型奨学金制度の拡充などもあり、進学率はこの3年間40%を超えていますが、大学への進学率には変化がなく、専門学校への進学が増えています。中退率は依然として高く、入学から1年3カ月で14.8%が中退しています。専門学校の中退率が大学と比べて高いのも特徴です。中退後に正社員・正規公務員で就労している人は16.3%に留まり、中退が不安定な生活につながりやすいことを念頭においた進路指導が欠かせません。
進路選択の傾向は、施設による違いが大きく、この5年間で10人以上の高校卒業者がいる99施設を分析したところ、大学等への進学率は施設によって0%から80%まで大きな差がありました。

 

■就職後わずか3カ月で10.7%、1年3カ月で30.8%が離職
高校卒業後に就職した施設生活経験者の8割は正社員・正規公務員として就労しています。しかし、就職後わずか3カ月で10.7%、1年3カ月後には30.8%、3年3カ月後には61.1%が離職しています。これは、厚生労働省の調査による高校卒業者の離職率(1年目16.8%、3年目39.2%)と比べて大幅に高くなっています。就職してから年数が経つにつれ正社員・正規公務員の割合が下がっており、就労経験の浅い状態での離職は、不安定な就労環境につながりやすいことが伺えます。

 

■施設生活経験者の40%がなにかしらの問題傾向を抱えていた
満18歳の3月末(原則、施設を退所する時期にあたる)における、施設経験者の問題傾向を分析しました。施設職員がなにかしらの問題傾向があると認識していた人は、40%に上りました。大学等進学者の卒業者と中退者を比較すると「社会性欠如」の項目において「問題があった」とされる卒業者は23.2%である一方、中退者は52.0%という結果でした。
また、生活保護非受給者と受給者を比較すると「精神疾患」の項目において「問題があった」とされる非受給者は22.1%である一方、受給者は71.7%という結果でした。問題を抱えたまま退所した人ほど、中退や生活保護に至りやすいと言えます。メンタル面で課題を抱えている人への支援は高い支援スキルや長期間の関わりが必要となる傾向があり、支援体制の整備が急務です。

 

■施設が現況を把握できていない退所者は14%。支援を必要とするはずの退所者と関係が切れている
退所者の現況は施設を出て年数が経つほど把握しづらくなり、退所後3年3カ月で14.2%の人の現況が分からない状態です。高校卒業後の進路が「無職・その他」の場合、37.0%の人の現況が把握できずにいます。
また、進学者のうち中退者の現在状況「不明」が25.0%に上ることからも、本来支援を必要としているはずの人が、施設とつながることができず、関係が途絶えてしまっていることが伺われます。
退所者との関係を維持するためには、日頃から連絡を取ったり、困ったときに力強くサポートできる環境を整えたりすることが求められます。より困難な状況にある人に対する支援には、人員や予算の確保が欠かせません。

 

本調査は、全国初の児童養護施設退所者のトラッキング調査です。退所者一人ひとりの状況を追跡できるよう、1年に1度、今後10年にわたり調査を続けます。


【全国児童養護施設 退所者トラッキング調査2020】

調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設/628件
調査時期:2020年6月16日(火)~8月6日(木)
調査方法:Web回答、または郵送回答(児童養護施設ごとに自由選択)
有効回答数:児童養護施設数 146件(有効回答率 23%)/ 退所者数 2,560人
調査目的:

全国の児童養護施設を退所した人の進学や就労の状況、施設の自立支援の現状などを把握し、自立に向けた支援の課題を明らかにすること

主な調査内容:

退所年や高校卒業の有無とその後の進路について、「退所時」もしくは「18歳の3月末時点」と、「現在」における状況の調査(住まい、就労状況、施設と本人とのコミュニケーション手段や頻度など)
退所者一人ひとりの状況を、1年に1度、10年間継続して調べるトラッキング調査
次年度以降は前年に登録した退所者については「現在」の状況のみの回答を回収する予定


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