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大学等への進学事情
写真:コラム【経済的な不安3_大学等への進学事情】卒業証書の写真

児童養護施設や里親家庭で育った子どもたちの進学率の低さは、格差を象徴する大きな課題でした。今でも全国平均に比べて大幅に低い状態ではありますが、ここ10年ほどで奨学金などの制度の整備が進み、大学などに進学する子どもが増えてきました。

 

◆2割以下にとどまっていた進学率

2005年ごろ、施設出身者の大学、短大、専門学校への進学率は2割に届いていませんでした。大学進学率は1割にも満たず、全国平均の47.3%とは大きな乖離がありました(※1)。

 

しかし、進学率は徐々に上がっていき、2010年代後半ごろには3割を超えるようになりました。ブリッジフォースマイルが毎年全国の児童養護施設を対象に行っているアンケート調査によると、2018年以降は大学や専門学校などに進学する子どもたちの割合は、3年連続で40%を超えるようになり、2020年春に高校を卒業した施設退所者(通信制高校、高卒認定、特別支援学校を除く)の進学率は40.2%となりました(※2)。ただ、前年、2019年春時点の全国の進学率は76.1%なので、まだ大きな開きがあるといえます(※3)。

 

施設生活経験者のうち、高校卒業者の進学率(※1)

棒グラフ:経済的な不安3_施設生活経験者のうち、高校卒業者の進学率(進学率は徐々に上がっていき、2010年代後半ごろには3割を超えるようになっている)

 

高校卒業者からは通信制高校卒業者・高卒認定取得者・特別支援学校卒業者を除いた。

 

進学率が低い理由はいくつかありますが、一番大きいのがお金の問題です。親を頼れない子どもたちは、学費や一人暮らしの生活費も自分でまかなわなくてはなりません。そのため、進学には高校卒業までにアルバイトで100万円以上を貯めておく必要があり、進学後も奨学金を借りても月に10万円は稼がなければならないと言われていました。一人暮らしをしながら、学業とアルバイトを両立させるには、本人の強い意志や高い生活能力が求められるのです。

 

◆お金の支援は増えてきた

しかしその後、企業や財団などによる奨学金支援が増え、大学でも学費減免などの制度が整備されるようになりました。また、「子どもの貧困」が社会問題として注目され、2016年には、国による生活費の実質給付や、返済不要の奨学金給付を発表。経済的な理由で進学を断念するという問題は、解消への兆しが見えてきました。

 

2020年4月現在、児童養護施設や里親家庭などで高校生までを過ごした子どもたちが進学する際には、国から入学金と年間約70万円までの学費減免と、卒業まで年間約90万円までの返済不要の奨学金がもらえるようになりました。

 

さらに生活費については「自立支援資金貸付事業」という制度があります。貸付ではありますが、進学先を卒業した後、5年間就労するという条件を満たせば、返済の必要はなくなります。

 

◆選択肢の拡大、新たな課題

かつては、進学先についても、卒業後に確実に就労先が見つかりそうな、介護、看護、保育などの福祉系の学部が多く、経済学部や文学部、芸術系の学部などは敬遠される傾向にありました。しかし、経済的な問題が減ってきたおかげで選択肢は広がりつつあります。

 

進学の壁は低くなりましたが、問題は残っています。中退率の高さです。2020年の調査では、2016年度進学者91人のうち26人(28.6%)が中退していました。文部科学省の2014 年の発表によると、2012 年の1 年間に大学・短期大学・高等専門学校を中退した学生は2.7%でした。中退を把握する期間が異なるため単純な比較はできませんが、施設生活経験者の中退率は全学生のそれと比較して大幅に高いことがわかります。※2

 

私たちのこれまでの巣立ち支援の経験から、中退の理由は必ずしもお金の問題だけではないことがわかっています。今後は、将来の目標がはっきりしないまま、とりあえず進学の道を選ぶ子どもが増えることも考えられ、中退者がますます増える可能性があります。「何のために進学するのか」といった早期からのキャリア教育や、就学中の精神的なサポート、また、中退してしまった場合の就労支援など、さまざまな支援が必要とされています。

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