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就労事情
写真:コラム【経済的な不安4_就労事情】影のある若者の後ろ姿

かつては、児童養護施設や里親家庭で育った子どもたちの8割が、高校を卒業すると就職していました。高卒での就職は、大卒時の就職活動とまったく違い、学校があっせんする企業に就職することが多いため、就職先が見つからないということはあまりありません。しかし、就職後に離職する割合が高く、対策や支援が求められています。

 

◆就職後3カ月で既に1割以上が離職

ブリッジフォースマイルの調査によると、2020年春に高校や特別支援学校などを卒業した子どものうち、62.1%が就職し、そのうちの8割が、正社員・正規公務員として就労しています。しかし、就職して3カ月後にはすでに10.7%が離職しています。また、前年の2019年春に就職した子どもたちは、就職後1年3カ月後に30.8%が離職しています。

 

高校卒業直後に正社員として就労した施設生活経験者の雇用状況(2020年6月現在)(※)

棒グラフ(高校卒業直後に正社員として就労した施設生活経験者の雇用状況_2020年6月現在()

 

 

厚生労働省のデータと比較すると、退所者の離職率はかなり高いことがわかります。1年目では既に14ポイントの差が出ており、3年目になるとその差は21.9ポイントに開きます。

 

全国3年後離職率(厚生労働省調査)と施設生活経験者の離職率の比較(※)

棒グラフ:全国3年後離職率(厚生労働省調査)と施設生活経験者の離職率の比較(1年目では既に14ポイントの差が出ており、3年目になるとその差は21.9ポイントに開いている)

 

◆就活スキルがない高卒就職者が直面する、転職の難しさ

大学生の就職活動の場合は、働き始める1年以上も前から、何カ月もかけて自己分析や企業分析を行い、自分が選んだ複数の企業の試験や面接を受けて内定を取ります。一方、高校生の就職活動は、今も多くの場合、学校が企業とやり取りをして、就職を希望する子どもたちに就職先をあっせんします。子どもが応募できるのは、原則1人1社だけ。1社から内定を獲得すると、就職活動は終了しなくてはならないことがほとんどです。

 

多くの子どもたちは、働くとはどういうことか、世のなかにはどんな仕事があるのか、自分に合った仕事とは、自分が好きな仕事とは何かを、じっくり学んだり考えたりすることなく、1社限定の就職活動を行うことになります。

 

このため、高卒で就職した先を辞めて転職活動をする場合は、学歴がハンデになるだけでなく、自己分析や履歴書・職務経歴書の作成、面接、転職先選びなどの就活スキルが身についておらず、なかなか条件の良い転職につながりにくいのです。ブリッジフォースマイルの調査でも、高校を卒業して就職してから年数がたつにつれ、正社員・正規公務員の割合は下がる傾向があり、2016年春に最初の就職をした子どもたちの、4年3カ月後(2020年6月時点)を見ると、正社員・正規公務員の割合は65.3%となっています。不安定なアルバイトや派遣社員などの仕事に就く子どもが増えていることがわかります。

 

◆離職が生活基盤の崩壊に直結してしまう

高卒就職者が転職する際に直面する問題は、必ずしも児童養護施設や里親家庭の出身者に限ったことではありません。しかし、親が頼れず、自分で働いて生活費をまかなわなくてはならない子どもたちにとって、こうした問題はより深刻です。

 

職場の人間関係や仕事の進め方などで悩みがあっても、身近に相談できる大人がいないと、一人で悩みを抱え込んで精神的に不安定になったり、離職したりしてしまうこともあります。また、離職後の転職活動がうまくいかない場合は収入が絶たれるので、住む場所を失うなど、生活に困窮してしまう可能性があります。

 

まずは、中学・高校生の早い時期から、自分に合った仕事、好きな仕事は何か、「働く」とはどういうことかを知り、考える機会を持つことが必要です。また、もし離職した場合にも、できるだけ自分に合った、条件の良い転職先を見つけられるようサポートが必要です。

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