ニュース・活動報告

巣立ちプロジェクト2020@熊本<第4回「知ってるだけじゃダメ!」な大人への相談>
熊本巣立ちプロジェクト4回目_セミナーの様子

開催日時・場所:2021/1/23・31 オンライン(Zoom)による実施
参加人数(両日合計):高校生33人/ボランティア26人
講師:マイケル

 

熊本での巣立ちプロジェクト、最初は初のオンライン開催ということもあり、ドキドキでのスタートだったセミナーも最終回を迎えました。今日は、施設退所後に困ったことが起きた時の対処法について学びます。始めに、施設を出たら心配なこと楽しみなことを話しました。

 

高校生からは「生活費の管理がちゃんとできるかなあ」「朝、寝坊せずに起きなきゃ」という心配事の一方、楽しみなことは「自由!なんでも好きなようにできるから」という意見がダントツです。心配事も楽しみもある、これこそ春を迎える気持ちです。

 

今回のセミナーは、施設を出てから起きるかもしれない4つのトラブルを解決するための学びの時間です。トラブルにあわないのが一番ですが、そうもいかないことはボランティアの大人たちも痛いほど知っているところです。

 

◆トラブル発生①会社トラブル、寝坊した!

「昨夜遅くまでゲームしていて、朝起きたら午前8時50分、会社の始業は午前9時、遅刻は確定!どうする?」という設定です。さあ大変。

まずはブレイクアウトルームに分かれて意見を出し合います。高校生からは「すぐ会社に電話して、上司に謝罪する」「何時に着くかを伝える」などの意見がありました。ボランティアからは、「大人でも多くの人が経験する失敗だけど、その失敗で受けるダメージは学生時代より社会人のほうが大きいから気を付けて」とアドバイスがありました。
全体のワークでは会社への電話は極力始業前に確実に到着できる時間を伝えることや、自分の到着前に電話や来客の予定があれば伝えておくことなどを学びました。

 

◆トラブル発生②健康トラブル、体調不良

次は「今日は仕事があるのに、朝起きたらすごくおなかが痛い!」です。

高校生からは「薬を飲んで様子を見る」「まず上司に電話で事情を話す」などの意見があり、ボランティアからは心当たりがある不調だったら様子を見ていいけど、なければ病院に行くことも考えて、近くの病院を調べておこう、というアドバイスがありました。
全体のワークでは、近くの病院は住まいが決まったらすぐに(体調不良になる前に)調べておくこと、体調不良は早く治すことを優先して、市販薬で無理せず病院を受診することを学びました。また虫歯は施設退所までに治療しておこうというアドバイスもありました。

 

◆トラブル発生③性的トラブル、妊娠

次のトラブルは「自分(交際相手)が妊娠2か月ということが妊娠判定薬でわかった」です。さあどうしよう?

高校生からは「自分は進学なので子どもを育てる経済力がない」「誰かに相談できるメンタルかわからない」という感想、ボランティアからはパートナーと話して相手の気持ちをきちんと聞くというアドバイスがありました。
全体のワークでは、大きな出来事で動揺するけれど、結婚もできる年齢と考えると、今後の人生にとって大きな決断になるので、まずは落ち着いて考えること、ただし産まないという選択をするには手術できる期限が決まっているので、落ち着いてしかもなるべく早く信頼できる人に相談することを学びました。

 

<関連して知っておいてほしいこと>
さらに講師のマイケルから関連して知っておいてほしい3つのことがあげられました。

1つは性の多様性について。性はグラデーションと言われ、LGBTという言葉も全体のごく一部だけしか表せていないことを勉強しました。高校生は身近な経験についてさらりと話し、そういう人の相談相手になりたいという子もいて、大人のほうが教えられる場面もありました。高校生さすがです!

2つ目はジェンダー(社会的性役割)について、男らしさや女らしさより自分らしさを大切にするというお話で、高校生も「男なんだから泣くなよって思ったことがある」「女のくせにって言われたことがある」など自分の経験を話し合いました。

3つ目はデートDVです。パートナーのいる10代女性の44%が経験していて、それがデートDVだと気づいていない場合もあり、実際はもっと多いと考えられること、まずは加害者にならないように、そしてパートナーを「怖い!」と思ったらまず逃げて信頼できる人に相談することを学びました。

 

◆トラブル発生④職場トラブル

最後のトラブルは、「職場で上司に怒られて、つい「こんな会社辞めます」と言ってしまいました」これも大変です!

高校生からは「謝って取り消してもらう」「貯金ができていたらやめるかも」などの意見があり、ボランティアからは、悪くないのに怒られることもあるけど、周りの人は見てわかっていてくれるから感情的にならず、愚痴を聞いてくれる人も見つけておこうとアドバイスがありました。
全体のワークでは、感情的に言ったときは冷静になって謝ること、新卒ではなく一般の再就職は平均3カ月かかるので決して甘くないし、どんな大人も何か我慢して働いているから、本当にやめたいと思った時も今の会社の良い点も思い出して冷静に考えることを学びました。
その一方「しちゃいけない我慢」もあって、暴力や給料未払などは我慢せずブラック企業はやめるべき。しなくちゃいけない我慢としちゃいけない我慢、冷静な判断が必要な社会人生活は難しいですね。

 

◆先輩トーク
最後に施設退所者である先輩(大学生)2人からお話を聞きました。
2人とも退所前には今日参加している高校生と同じ心配を抱いてのスタートだったこと、現在2人ともほぼ自炊で、一人暮らしでもある程度のキッチン設備が必要だということ、生活費管理で焦った経験、防犯上気を付けていることなどを話してくれました。そして後輩の皆さんに「一人暮らしは寂しいので、残りの日々を施設の人と楽しく過ごして、感謝も伝えておいてね」というメッセージをいただきました。大学の勉強は大変という2人ですが、夢の実現のために頑張っている様子が頼もしく見えました。

最後に、B4S熊本スタッフから、B4S熊本にできる居場所「かたるベースくまもと」の案内がありました。「高校生にはたくさんの出会いで安心のつながりを作ってほしい。そのつながりのひとつになれるよう「かたるベースくまもと」でいつでも待っています」と、高校生に語りかけるB4Sスタッフの笑顔に、思わずうるっときました。

さあ、高校生をお見送りです。笑顔で手を振ってオンラインを退室する高校生や、退室時間後も画面に残って、ボランティアやB4Sスタッフと雑談&おしゃべりしてくれる高校生もいました♪
今年度のセミナーは全てがオンラインで、高校生と直接会うことはできませんでしたが、こうして楽しく会話と笑顔を交わし合えるようになったことを、とても嬉しく思いました。
そして、オンラインで東京・佐賀・福岡から駆けつけてくれたボランティアとの出会いは、将来熊本を離れても全国に支えてくれる大人がいることを高校生に伝えてくれたことでしょう。そう、寂しいなんて言っている場合じゃない、本当はこれからが始まり。
社会に出るみんなのことをいつでも見守り応援していきます!

 

(ボランティア:サリー)

Bridge for Smile

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