ニュース・活動報告

巣立ちプロジェクト サポーター座談会  

ブリッジフォースマイル(B4S)の活動の主軸でもある、巣立ちプロジェクトは、児童養護施設や里親家庭などからの巣立ちを目前に控えた高校3年生を対象とした、月1回・半年間にわたる「一人暮らしの準備に向けた」セミナーです。複数の施設や里親家庭から集まった高校3年生と、ほぼ同人数のサポーター(B4Sでは、社会人ボランティアのことを「サポーター」と呼んでいます)からのサポートを受けながら、引越しの手続きや金銭管理、危険から身を守る術など、一人暮らしに必要な知識、スキルを学びます。一人暮らしを始める不安の軽減と、具体的な予防策を知れること、そして社会には応援してくれる多くの大人が存在することを知れる大きな機会となっています。2023年度の巣立ちプロジェクトに参加したサポーター3名による座談会をお送りします。

 

 

■2023年度 巣立ちプロジェクト

関東圏で開催された巣立ちプロジェクト(以下、巣立ちPJ)は、会場開催とオンライン開催の2通りの参加方法があり、全体が13のグループに分けられました。(東京・神奈川・千葉・オンライン)各グループはブランチと呼ばれ、サポーターと高校生と事務局スタッフで構成された20~40人がメンバーです。各ブランチは、サポーターの中からリーダーが選出され、リーダーを中心に運営しています。全6回のプログラムには、それぞれ講師も参加し、巣立ちに必要なスキルをワークショップを交えながらみんなで学びます。また、北海道・熊本・佐賀でも巣立ちプロジェクトが地域性に合わせた形で開催されています。

 

 

 

はかた 福岡在住なので、毎回、オンラインブランチに参加しています。今年は例年より少人数のブランチでしたが、10人程いたサポーターは、関西・秋田・山梨・福岡、そしてベトナムと、あちこちからの参加でした。最初から密な関係を築けた、仲の良いブランチでした。高校生たちは、2020年のコロナ初期と比べると、PCやタブレットの操作にとても慣れていて、zoomでの参加に関してはまったく問題を感じませんでしたね。

 

ローズ 過去にオンラインブランチの経験もありますが、今回は横浜ブランチを担当しました。今までの巣立ちPJの経験から言えば、徐々に距離が縮まっていくものだと思っていましたが、今回は最初からビックリするくらい人の波長が合っているブランチでした。私はリーダーでしたが、サポーターみんなが積極的な人たちで、リーダーとして何も困ることがなかったです。会場開催なので、お弁当を調達する役目などもサポーターにはありますが、そこも自発的にどんどんと楽しんで担ってくれていました。

 

れいころさん はじめてB4Sの活動に参加しました。私は、はかたとは別のオンラインブランチでしたが、とても人数が多いところでした。多様な人たちが集まっているなぁーという印象です。サポーターは、ベテランから新人までさまざまでしたが、グループワークで私がファシリテーターとなった時は、一緒のチームのベテランの方が温かく見守ってくれている感じがしました。

 

はかた オンラインで何か困ったことなどありましたか?

 

れいころさん 手元のプリントに書き込んで行うワークの時などは、ちゃんと書いているのかどうかまではわからないので、最初は不安もありましたが、書き終わるとパッと顔をあげてくれるので、その表情が頼りでした。回を重ねるごとに、高校生とも打ち解けていく感じは嬉しかったです。

 

 

■よくできたプログラム構成

ローズ 全6回のブログラムが、本当によくできていると思いますね。生きることに直結することが、しっかりと組み込まれているなぁと毎回感心します。

 

はかた 初回のテーマは、【コミュニケーション】でしたけれど、ワークの中で知らず知らずに体験して学べる工夫がされていましたよね。はじめましての自己紹介の時に、【推しについて】というのがありましたけれど、あれだけでもその人となりや、興味や特技がわかりました。そして高校生にとっては、「相手のことを聞く前に、自分のことを話すといいんだな」とか、「自分のこんな話にみんなは反応してくれるんだな」とかいろいろ気づきがある機会だったと思います。

 

ローズ うちのブランチがちばん盛り上がったのは【物件探し】の回。自分事として、一生懸命ワークに取り組んでいました。生活に必要なものを、自分が選択して購入するシミュレーションでは、買い過ぎな子、節約しまくる子、いろいろな高校生がいましたが、自分の特性が若干わかったんじゃないかしら。

 

れいころさん 自分も勉強になることばかりでした!

 

ローズ ほんとうにそう思います。『巣立ちのための60のヒント』は、独り立ちする人全員に読んでもらいたいくらい、情報の宝庫だと思います。

 

『巣立ちのための60のヒント~施設から社会へ羽ばたくあなたへ~』は、

社会に潜む危険や、引越しの手続きなど、社会で生き抜くための知識やスキルがつまった

B4Sが制作に関わったハンドブックです。巣立ちプロジェクトでも、本書を活用しています。

 

れいころさん 内容としては、あまり面白くないのかな?と心配していた保険の話なども、高校生からすごく反応がありました。セミナー終わりの振り返りの時に「保険や医療費のことを、ちゃんと知れて良かった」という声が多くありましたね。親がいれば当たり前に相談できるようなことや、人前で面と向かってはなかなか聞きづらい性教育の話など、よく網羅されているセミナーだと思います。セミナーの内容が少し重いと感じても、それ有りきで、振り返りの時はざっくばらんに話しやすくなっているようにも感じます。

 

はかた コンテンツを考える人たちが、常にブラッシュアップしていますよね。そして、生きることに一生懸命に向き合う高校生たちは、知識や経験を1つも2つも抜きん出たものを持って社会に出ていくんだなと感じています。

 

ローズ 切実であり、そこに切迫感を感じますね。ポジティブな人、不安な人、いろんな高校生がいるけれども、どの人からも素直な部分を感じられた時間です。

 

れいころさん 講師の方が、必要な時には、きちんと厳しく物事を伝える姿勢にも刺激を受けました。後ろ盾がない中で自分の財産を守る大切さなど、高校生がその現実を直視して真剣に聞き入っている様子は、オンラインの画面越しでも伝わってきました。私もそうですが、サポーターたちもハッとした瞬間だったと思います。

 

 

■サポーターとしての楽しさ

ローズ 自分の活動としての楽しさは、人から教わったり、アドバイスをもらったり、そういう機会がここにはある、ことが大きいです。会社ではそれなりに年次が上にもなり、もうそんなに注意を受ける機会もないですから(笑)、新しいことを知る・教わるという機会が嬉しいんです。

 

はかた セミナーが終わったあと、毎回、1時間くらいサポーターで茶話会をしていたんですが、そこでの振り返りや、みなさんの感想を聞くのが楽しかったです。B4S特有のニックネーム文化がすごく良くて、年齢や経歴に関係なく、親近感を持って喋りやすいですよね。仕事でも友達でもない不思議な感じです。

 

ローズ そうそう!そして、信頼感と安心感が生まれますよね。たぶん、共通の目的を持っている集まりだからじゃないかなと思います。ここにいるみんなが高校生の為に集まっている。だから、初めて会った時から信頼できちゃう感じがあります。

 

B4Sに関わる人は、全員、自分でニックネームをつけるという文化があります。そして、子どもたちや高校生、サポーターとして関わる社会人ボランティアや事務局スタッフの全員がニックネームでお互いを呼び合います。本名を出さないことで支援対象者には安心してもらい、大人たちにとってはフラットな関係構築の一助となっています。さらに、「共通の目的を持った仲間」という意味では、事務局スタッフは、サポーターに対して絶大なる信頼と感謝があります。その信頼があるからこそ、さまざまな活動を共に進めていけるのです。

 

れいころさん 終了後のサポーター同士の振り返りでは、意見交換が活発で熱量を感じました。より良くしたいからこその議論ができることが、すごいなと思います。

 

 

■多様な大人の話に触れる 『社会人の話』

セミナーでは、毎回その時のテーマに沿った『社会人の話』をサポーターが2名ずつ発表します。世の中には、いろんな人がいていろんな考え方があることや、さまざまな働き方があることなどを、高校生たちは少し知り合いになった大人たちから聞くことができます。

 

れいころさん 私は『お金の話』をしました。自分がフリーランスに転向した時に、一時的ですが、不安からお金に囚われすぎた時期がありました。自分の目指す仕事とお金のバランスに難しさを感じた中で学んだことを、高校生に聞いて欲しいなと思いました。

 

ローズ 私のブランチでは、『心が折れた話』の時に、芸人を目指していた経験がある方が話してくれました。心が折れた瞬間で話は終わらずに、その方がその現実とどう向き合ってきたかまでを話してくれたんです。さすが舞台にあがった経験があるだけあって、魅力たっぷりの10分弱でした。どのサポーターも自分の本当の話をそこで話してくれるので、高校生には確実に伝わり、刺さっている感じがあります。

 

はかた 身近な人がギャンブル依存で大変なことになって、そばにいた自分も傷ついたというような話をしてくれたサポーターもいました。大変な経験をシェアすることで、依存の怖さなども伝わったと思いますね。とにかく、多種多様な学びが『社会人の話』の中にもあります。

 

 

■高校生の声

はかた コミュニケーションに苦手意識があった高校生が、オープンクエスチョン(「はい」または「いいえ」の応答では回答できない質問)などの話し方の工夫を知れて、人付き合いの参考になったと言っていました。他にも、将来、自分が誰かを支援するような活動をできるようになりたいと話してくれた高校生もいましたね。

 

れいころさん 私のブランチにも、誰かの為に!とか後輩の為に!と話す人が何人かいました。あと、ここで何を学んだとかだけではなく、同じような境遇の人が他にもたくさんいることを体感できたことが、いちばん大きかったと言う高校生もいました。同じ時間を過ごすことだけでも、本人たちの安心感につながるんだということを私も学ばせてもらいました。

 

ローズ 高校卒業後は、仕事をしながらお金を貯めて、いつか進学を目指したいと考えている高校生がいたんです。その彼が最終回の時に、「必ず良い結果をB4Sに報告したいと思っています」と言ってくれたんですね。私たちに対して、こんなふうに思ってくれるんだと、とても嬉しかったです。彼が報告する場所として、私もB4Sの活動に関わりながら待てることが、ほんとうに幸せです。決して簡単なことではないと思うけれど、がんばって欲しい!とサポーター一同、あの時に思ったと思います。

 

巣立ちPJに参加した高校生が、その後もサポーターや同じ境遇の仲間たちとつながれるようにと、B4Sにはアトモプロジェクトがあります。みんなで集まってスポーツやゲームやBBQなどを楽しみます。また、決まったサポーターと定期的に連絡を取り合う自立ナビゲーションや、ふらっと立ち寄れる居場所など、巣立ち前と巣立ち後を継続して支援する体制をB4Sではさまざまなプログラムを通して行っています。

 

 

■サポーターからのメッセージ

はかた 就職や進学など、これからがんばっていく高校3年生と出会う度に、胸が熱くなります。巣立ちPJで出会っても、その後また会うことが難しい高校生が大半ですが、私たち社会人の後輩になる彼らを、ずっと「がんばれ!」って応援しています。

 

ローズ 若者たちの「やりたい!」という気持ちが、いろんな扉を開けていくと信じています。B4Sにはそれをサポートする土壌もあると思うので、私もこれからもサポーターを続けていきたいです。18歳の若者から私も元気をもらって、日々を過ごしています。

 

れいころさん 本やネットで知ることもできるけれど、行動して、社会課題や支援の可能性を知りたいと思っていました。今回、巣立ちPJに参加したことで、リアルをたくさん知れました。目の前にいる高校生と触れ合う中で、私たちサポーターもそれぞれが考えて伴走していけるこの環境が私にとってもありがたいと思っています。社会問題に対して、何かしたいと考えている人にとっては、とてもおすすめできるボランティア活動だと思います。私は、これから、自立ナビゲーションにも参加予定なので、楽しんでがんばっていきたいと思います。

 

 

2023年度の巣立ちプロジェクト全体として、277人の高校3年生と、215人のサポーターで駆け抜けた半年間。すべてがすべて、大成功だったわけではありません。それでも、サポーターはじめ施設職員のみなさまや事務局スタッフなど、ここに関わる大人たち1人ひとりの温かな気持ちは、かけがえのないものだったと思います。どうぞ、巣立ちプロジェクトがこれからも続けられますように、サポーター活動寄付などでご支援ください。

 

 

 


巣立ちPJや自立支援セミナーなどの各プログラムに参加した高校生たちには、参加ポイントが付与されます。ポイントは『トドクン』(寄付仲介システム)を通して、生活必需品と交換できるシステムになっています。『トドクン』では随時、企業や個人から寄付品または寄付購入金を募集しております。

Bridge for Smile

認定NPO法人ブリッジフォースマイルのホームページへようこそ!

私たちは、児童養護施設や里親家庭などで暮らす、親を頼れない子どもたちの巣立ち支援をしているNPOです。
ご関心に合わせ、以下から知りたい項目をお選びください。