ニュース・活動報告
医療連携支援とは、医療的な支援が必要な若者に対して、臨床心理士や公認心理師などがカウンセリングや心理面接を実施し、必要に応じて、医療機関との調整や同行支援を行い、対象者が適切に医療を受けられるようにする支援のことです。
近年、虐待のトラウマなどで精神的な不安を抱えていたり、施設退所後の環境の変化や人間関係によるメンタルの不調など、精神面の課題を抱えた若者の相談が増えていて、専門的なケアが必要となってきています。
ブリッジフォースマイル(以下、B4S)では、そのような個別支援のニーズにも対応できるように、専門スタッフの配置と運営体制を整え、2022年度より熊本県・熊本市、2023年度より横浜市で医療連携支援を開始しました。
※「社会的養護自立支援事業」が拡充され(2021年度予算 厚生労働省)、メンタルケア等、医療的な支援が必要な者が適切に医療を受けられるように、医療連携に必要な経費(嘱託医との契約等)が国と各地域の行政より補助されるようになりました。
今回のブログでは、熊本事務局の医療連携支援の取り組みについて、専門スタッフの森髙さん(社会福祉士、公認心理師 以下、うぃんびぃ)、吉川さん(臨床心理士、公認心理師 以下、オディ)のインタビューを交え、紹介します。
ー現状の課題、医療連携支援の良さや効果、これからどのような支援の形につなげていきたい、というところを教えてください。
施設入所中の段階からメンタルに課題を抱えている若者が、誰からも何の支援もない状況で自活していくケースで、そのまま課題を抱え続けていることがあります。B4Sが医療連携支援に取り組むことで、退所前から私たち専門スタッフが彼ら彼女らと関われるようになり、関係機関に対して、もっと医療連携の必要性を促していくという視点を持って関わることができます。
専門スタッフが入ることで、病院の先生に適切な質問をすることができますし、病院がどこまでケアをしてくれているか、医療ソーシャルワーカーともやり取りができ、その後、B4Sの関係者間で役割分担をして、支援対象者の自立をどのように支えていけるか、という形で連携支援ができます。専門スタッフが状況を把握し、きちんと交通整理をして、必要な支援を丁寧に届けることの効果が生まれていると思います。(うぃんびぃ)
ー居場所(かたるベースくまもと)に来所する若者との関わりについて教えてください。
オープンスペースで少し参加しつつ全体を見ながら、スタッフへ対応の助言をしたり、若者に顔を知ってもらう、顔つなぎ的な声かけを行っています。心理面接を受けた方が良さそう、となったとき、私の顔と名前を覚えてもらえていると、心理面接を受けるハードルは下がりやすいことや、スタッフが若者との話を進めやすくなるかなと思っています。
スタッフに対しては、「どのような対応の仕方が良かったのか」「前回の居場所の中で少し難しいやり取りがあったけど、心理的に見てどうなのか」など、ミーティング時や個別で話しをする際にアドバイスをしています。
「若者がなぜそういう言動をしたり、そういう関わり方をしやすいのか」という背景が大切で、例えば、「虐待を受けた経験があると、どのような反応が出やすい」「発達の特性がある」など気づくことができます。支援の見立てとともに若者の行動を説明して、その上でこの対応で良かったのか、もうちょっとこうするべきだったのでは、というところをスタッフに助言していくことが必要と考えています。
若者の言動をそのまま受けて、スタッフ自身がそのことでどんどん苦しくなったり、すごく傷ついたりすることもあるので、専門的にアドバイスができる部分はこれからもお伝えしていきたいと思います。(オディ)
ー個別のカウンセリングについて教えてください。(Cさんのケース)
Cさんの場合、かい離症状がでていることをスタッフとの面談の際に本人から相談があり、本人自身も精神科につながりたいが、どこの病院がよいかと検討していました。B4Sで医療連携支援があり、カウンセリングができるということを伝え、つながることができました。インテーク的な形でCさんと会って、Cさんの今のニーズや受診歴などを確認していきました。結果として、医療支援が必要という若者でした。
※インテークとは、相談者がどのような相談内容を抱えていて、その背景にある問題は何かということを明らかにするために、面接をする側が積極的にヒアリングをすることを目的とした初回面接のことです。
医療につなげるまでの間は、日常で少し負荷が掛かると症状がでたり、かなり精神的に不安定になるときもあったので、スタッフにフォローをしてもらいながら、定期的に月1回必ず会うことにしました。本人も自分の症状を自覚しているので、いずれ医療機関にきちんとつないでいく方向です。(オディ)
ースタッフへのスーパーバイズ的な関わりについて教えてください。
※スーパーバイズとは、これから取り組もうとする支援、または今取り組んでいる支援について、スーパーバイザーからアドバイス・指導をしてもらうことを指します。
週に1回ケースミーティングの時間を持っています。スタッフから担当しているケースを出してもらい、どのような支援の見立てや伴走方法が良いかなど、アドバイスをする時間としています。伴走支援の方法を模索する中で、具体的に行っていくことの枠組みをお伝えしています。
この時間では、事例検討というよりも、実際のケース内容を自由に話してもらい、私からの質問や会話を通して、支援のポイントや大事な視点に気づいてもらうようにしています。それを繰り返していくことで、私から「ここはどうですか」と聞かれたことに対して、今後の若者との面接の中で大事に聞いてみようと意識してもらうことです。
これまでは個々人のケースに対応してきましたが、支援スタッフを育てていくということを主にやっています。
精神面・心理面の課題を抱えた若者の支援に対して、何が大事という基本のところをスタッフに気づいてもらう、問題意識を持ってもらうということを大切にしています。
「ケースが抱えるリスクを考える。」
支援者として関わる上で大事なところです。医療的な助言を事前にしていくことで、「そうか、そんなリスクがあるんだったら、そこは気にかけないといけない」ということに気づいてもらえたらと思います。(うぃんびぃ)
ー一緒に仕事をしているスタッフへ質問です。専門スタッフのうぃんびぃがいてくださってどう変わりましたか?
「支援者支援」として本当にいつも寄り添ってくれていて、困りごとや悩みごともたくさん聞いてくださっています。ソーシャルワーカーとしても長く活躍されているので、関係者との連携のより良い在り方や、関係者がどのような役割を担っているか、しかし、それぞれの役割がわかっていてもなかなか動き方が難しい、といった場合も事前確認の大切さや連携あっての支援だという基本と基礎をしっかり教えていただいています。現場での困りごとを相談すると、きちんと情報整理をしてフィードバックをしていただけるので安心します。
ー医療連携の必要性についてどう思われますか?
施設にいる間は通院していたけれど、自立後に途切れてしまうケースもあります。傍ら絶対つながっておいた方がよいと思う若者も数多くいます。関わりを持ちながら、どう医療につなげていくかが大事なところになります。
施設等からB4Sへつながる際、引継ぎとしてきちんと情報を聞き取っておかなければいけません。B4Sでカウンセリングを実施して次の医療につながるようにするためには、成育歴や入所理由、診断がどのくらいあるか、今までカウンセリングをどの程度やっていたか、もしくは全くやっていなかったなど、そういった情報をもとにした見立てが大事になってきます。聞き取って継続して受け取ることで、切れ目のない支援ができていくと思います。
診断の情報は、年金や手帳にも関わる部分なので、いつからどの病院にかかっていて、必要なときはその病院に問い合わせなければいけないこともあります。やはり支援はつなげていくことが大事です。(オディ)
右:うぃんびぃ(熊本事務局 社会福祉士、公認心理師)
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