ニュース・活動報告
~2年間の巣立ちプロジェクトを経験して(前編)~
施設や里親家庭から巣立つ高校3年生を対象に、一人暮らしを準備するための「巣立ちプロジェクト」。2022年度、首都圏では7つのリアル会場と4つのオンライン会場の計11ブランチで開催しました。参加したのは202人の高校生。そして、のべ175人の社会人ボランティアのみなさまに高校生をサポートしていただきました。
社会人ボランティアの一人、ニックネーム「寿司ボーイ」が、巣立ちプロジェクトに参加し感じたことを届けてくださいました。寿司ボーイは、昨年初めて巣立ちプロジェクトに参加し、2年目の今年はブランチリーダーとしての参加です。前編・後編の2回に分けてお届けします!
◆自分が本当にしたいことは何だろう…B4Sとの出会い
社会人12年目。毎日の仕事に忙殺されて自分を見失っていたとき、気分転換に南の島に逃避行したのがちょうど2019年のコロナ禍前の秋でした。毎日ぼんやり海に沈む夕日を眺めながら「自分が本当にしたいことは何だろう…」と考えていました。
そんなときに、ふと、頑張っているのに生まれた環境、育った環境によって、理不尽な思いをしていたり、チャンスを逃していたり、チャレンジをあきらめざるを得ない若者がいることを知り、何か力になりたいと思いました。
帰国しても、その想いは消えず、友人や家族と話す中で、親を頼れず、社会的養護下にいる子どもたちの自立を支援しているB4Sの存在を知り、「これだ!」とボランティアとしてのエントリーを決意しました。
◆研修あり・一人でない安心感から巣立ちプロジェクトへの参加を決意
いざ、エントリーしてみたものの、B4Sの活動は子どもたちとコミュニケーションをとるうえで一定の知識と経験が必要であったことから、自分の軽はずみな言動が、子どもたちを無意識に傷つけてしまうのではないかという不安もありました。
そのため、初心者でも参加ができるプログラムを探したところ、事前研修もあり、先輩ボランティアや事務局と一緒に取り組める「巣立ちプロジェクト」の存在を知り、まずはここから始めてみようと思いました。
巣立ちプロジェクトはリアル会場とオンライン会場から選ぶことができますが、オンラインのボランティアが不足していると聞いて、オンラインブランチのメンバーとして参加したのが1年目でした。
◆意識したのは「困ったときに相談したい」と思ってもらえること
巣立ちプロジェクトは高校卒業と同時に児童養護施設や里親家庭などを巣立つ高校生の一人暮らしの準備と巣立ち後の自立支援を目的とした半年間のセミナーです。主に、コミュニケーションの取り方や、一人暮らしの住居の選び方、自立した後に必要となる行政手続き、税金の仕組みなどについて社会人ボランティアとともに学びます。
高校生にとってのメリットは「一人暮らしの知識の習得」、「退所後のネットワーク」、「一人暮らしの生活必需品の獲得」で、その中でも「退所後のネットワーク」はB4Sならではの提供価値だと思います。
僕自身は、初めての巣立ちプロジェクト、初めてのボランティアでしたが、この目的を踏まえ、まずは「困ったときに相談したい」と思ってもらえるように、意識して取り組みました。
◆オンラインのメリットはどこからでも参加できること
はじめての巣立ちプロジェクトの参加経験を通じて2つの気づきがありました。
1つ目は、オンラインならではのメリットについてです。
オンライン、オフラインそれぞれの良さがあると思いますが、オンラインのメリットの一つとして物理的な制限がないことが挙げられます。
高校生にとっては、慣れない環境よりも、施設や里親家庭などから参加できたほうが、そばに施設職員さんや里親さんがいることへの安心感が得られます。顔出しできないケースでもカメラオフで参加できたり、学校行事や就活などやむを得ない事情での遅刻、早退、体調がすぐれないけど参加はしたいといった高校生の事情に寄り添えたりすることも、オンラインならではのメリットだと思います。
また、高校生、ボランティアの双方に言えることですが、PC1台で気軽に参加できるため、場所にとらわれないといったメリットもあります。実際、ブランチ内でも、他県から参加してくれた高校生、アメリカから参加してくれたボランティアがいました。
2つ目は、巣立ちプロジェクトに関わる方々の魅力についてです。
まず、驚いたのは高校生についてです。過去に辛い経験をしているがゆえに、話題もセンシティブで、気を遣うシーンも多いと勝手に考えていましたが、いざ接してみると、大人顔負けの芯の強さやたくましさ、自分の将来への責任感を持ち合わせていました。その一方で、趣味などの話になると無邪気な一面も垣間見え、自分の高校時代と変わらない印象を受けました。高校生が教えてくれた趣味や好みの世界を聞き、次回までに勉強してその成果を披露すると喜んでくれたことも印象的です。
次にボランティアの方々についてです。例えば、僕のブランチには、多種多様な経験を積まれている方がいましたが、新卒からずっと同じ会社に勤め、会社内での人脈が主だった僕にとっては刺激を受けることがとても多かったです。それぞれが異なる環境で活躍していますが、日々忙しい中でも「親を頼れない子どもたちのために何か力になりたい」という想いは共通で、心の温かい方が多かったです。
特にブランチを率いるリーダーは、同じボランティアとは思えないほど、きめ細やかな配慮と全体統率をされていました。そんな方々とのお付き合いを通じて、自分自身の内面の成長も実感することができました。
最後に、B4Sの活動範囲の広さについてです。社会的養護という言葉の解像度が上がるほど、必要とされる支援の幅は広く、現実は思った以上に深刻だということを理解しました。子どもたちが施設や里親家庭から巣立つまでの支援はもちろん、自立後の支援も同じくらい重要だということも学びましたが、こうした多岐にわたるニーズに応えるため、B4Sがさまざまなプロジェクトを整備してきたことや、幅広い活動をしていることを改めて認識しました。
◆新たな視点を求めて2年目はオフラインを決意。そして、次のチャレンジへ
初めての巣立ちプロジェクトへの参加を通じて、たくさんの気づきや学びを得ながら、社会的養護の現状や課題の深刻さ、巣立ち支援の重要性を理解しました。そのうえで、「子どもたちが困ったときに相談したいと思ってもらえるような存在になる」という自身の目的も踏まえ、巣立ちプロジェクト終了後も、若者たちと接点を持てる「自立ナビ」や「アトモプロジェクト」「よこはまポートフォー」などの活動にも参加するようになり、継続的にコミュニケーションをとっています。
実際に、巣立ちプロジェクト後、自立ナビで継続支援している若者からは「勤め先にまだ馴染めないので仕事の悩みを相談したい」や「自分の将来について話せる大人が周りにいないので聞いてほしい」という話をしてもらえるようになりました。
子どもたちのこういった声にもっと応えるためには、施設、里親家庭を巣立ってからも相談できる環境を増やすこと、そのためには巣立つ前からのコミュニケーション、相互理解がとても大切だと思います。巣立ちプロジェクト1年目の経験を糧としつつ、「今度は新たな視点で子どもたちの支援の輪を広げるための取り組みにチャレンジしてみたい」という思いから、翌年の巣立ちプロジェクトは「オフライン」での参加を決めたところ、「ブランチリーダーをやってみないか?」というお声がけをいただきました。
とてもそんなふうには見えませんが…
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