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巣立ちプロジェクト2025:自分を知り、自分を大切にする生き方を学ぶ【活動報告】

児童養護施設などで暮らす子どもたちは、原則18歳になると施設を巣立ち、自分の力で生活を始めます。ブリッジフォースマイル(B4S)では、そんな巣立ちを目前に控えた高校3年生を対象に、自立に向けた準備を支える月1回・半年間の連続セミナー「巣立ちプロジェクト」を実施しています。セミナーでは、「暮らし」「お金」「仕事」「健康」「人との関わり」など、巣立ち後の生活に欠かせないテーマをサポーター(社会人ボランティア)と一緒に考え、学んでいきます。

 

◆巣立ちプロジェクト2025が無事終了! 

昨年度に続き、本年度も首都圏、佐賀、熊本、北海道から263名の高校3年生(申込時:271名)と高校生を支える123名のサポーターが参加し、実地とオンライン合わせて14か所のグループ(ブランチ)で全6回のプログラムを実施しました。

半年間にわたる活動の中で、高校生たちは自分自身の将来や価値観について考えを深め、サポーターは伴走者として一人ひとりの想いに寄り添いました。プロジェクトは、自立に向けての知識を得るという目的だけではなく、困ったときには適切な人に相談をしたり、周りを頼る大切さを感じてもらえるような、コミュニケーションスキルの重要性も実感してもらうことを目指しています。

 

◆昨年大きく改変したプログラムを、ブラッシュアップ

昨年度※、会場型プログラムを大きく改変し、今年度はそのカリキュラムを基盤にさらなる改善を行いました。参加した高校生やサポーターから寄せられたアンケートを精査し、その意見を反映させながら内容をアップデート。ワーク数の増加による内省時間の充実や、身近な大人の話をクイズ形式で行うなど、主体的に学べる設計へと発展させました。
各回は、その日のテーマに関するグループトークから1日が始まり、実際に考え、選び、高校生同士やサポーターと対話する体験を通して、自分自身の本音や価値観に気づいていきます。1日の最後には、「自分はどうありたいのか」「自分らしさや大切にしたいものは何か」などを整理する時間を設ける構成になっています。

※昨年度は、それまで一人暮らしのノウハウや危険回避など、知識の伝達が中心だったプログラムから、「自ら考える力」を重視したプログラムへと、今年度は内容を全面的に見直し、アプローチを大幅に変更。

 

 

  「人生は旅のようなもの」
  「人生という名の船の船長はあなた自身」
会場型のプログラムでは、高校生一人ひとりが自分の人生をどう進んでいきたいのかを考える時間を重ねていきました。

 

全6回で目指す方向を、みんなで共有

 

●ワークの一例(会場型):第1回 自分自身の価値観を整理

初回の第1回のみ、関東のブランチは合同開催でした。

初回は、コミュニケーションや価値観について考える時間を設け、多種多様な価値観が書かれた価値観カードを使って、自分自身の価値観を整理するワークに取り組みました。
さまざまな価値観が記載されているカードを使い、高校生たちはその中から自分に合った「価値観カード」を選び、「自分が大切にしていること」を整理していきました。

自分の価値観を整理することは、今後の選択や判断の軸を持つことにつながります。何を大切にしたいのかが明確になることで、住まいやお金、キャリアといったテーマを考える際にも、自分なりの基準を持って向き合うことができます。そのため本プログラムでは、すべての土台となる「自分自身を知る」時間を初回に設けています。

 

自分の価値観に合ったカードを、みんな真剣に探していました

 

はじまってすぐのチェックイン(自己紹介)では、「来るのが楽しみだった」と言う子もいれば、「眠い、疲れている」と話す子もいます。年相応のさまざまな高校生が、いろんな児童養護施設や里親家庭から集まってくるため、初回は毎回、高校生も大人たちも緊張します。それでも明らかに、お昼休憩を挟みながら半日同じ時間を過ごすと、来た時と帰る時では空気が違います。さらに、第2回、第3回とつづくことで生まれる変化や成長を、個人だけでなくブランチとして、皆で実感できることも、巣立ちプロジェクトの醍醐味です。

 

 

●ワークの一例(会場型):第5回 お金

また、第5回の「お金」をテーマにした回では、B4S独自の「MISSIONゲーム」を実施しました。
MISSIONゲームは、20歳になった自分を想定し、1か月の生活費や収支を実際に算出していくカード型のシミュレーションワークです。カードにはさまざまな出来事やミッションが記されており、高校生たちはそれらに対応しながら、リアルな生活を疑似体験していきます。
参加した高校生たちからは楽しみながら取り組みつつ、「思っていたよりお金がかかる」「選ぶことの難しさを感じた」などの声も聞かれ、体感的な学びにつながっている様子が見られました。

 

▼「お金」がテーマの1日の流れ
午前

  • 「あなたにとって“お金”とは?」「お金の良い面・難しい面は?」についてグループトーク
  • B4S独自のMISSIONゲーム(1か月の生活を想定して収支を算出するカードゲーム)
  • トラブル対策に関するクイズ

 

午後

  • サポーターによるマネーストーリーのシェアやクイズ
  • ライフプランワーク

  (将来の支出を具体的に試算し、自分の人生に必要なライフイベントを取捨選択する)

 

1回のセミナーの中に、インプットとアウトプットをうまく組み込みながら、飽きさせない工夫をしています

 

ー高校生の声ー 

「今日のお金プログラムは、正直難しかった。知らない言葉がたくさんあって、計算も大変だと感じた。」

「奨学金も検討しているので、もともと自分でお金について調べているので、知っている部分もあった。」

「お金やりくりのシミュレーションでは、少しお金が余る計算になったので、ほっとした。」

 

ーサポーターの声ー

「個別の質問タイムでは、「引っ越しの時にトラブルに遭ったことはありますか?」など、たくさん質問してくれました。自分の将来についてきちんと考えられていると感じました。」

「私が参加したグループは、お金に対して、シビアに捉えている高校生が多かったです。もっと、浪費しているかなと思っていたが、今使えるお金に制約があるらしく、きちんと管理している人が多いようでした。(施設によってはバイト代などを管理している施設がある)ただ、働き出して自由になるお金が増えた時に闇雲に使ってしまわないか心配だと言う高校生もいました。」

 

 

こうしたワークを通じて、巣立ちプロジェクトは「知識を教えられるだけの場」ではなく、自分ごととして考えることの大切さを体験しながら学べる場となっています。

 

◆修了式を終えて…

 1月に行われた最終回の修了式では、高校生とサポーターがそれぞれの思いを言葉にしました。

 

ー高校生の声ー 
 「自分は0歳の時から施設で暮らしている。普段の生活では、同じように施設や里親家庭で育った人に出会うことがほとんどなく、自分以外にもこんなにたくさん仲間がいることを初めて知った。」
 「ありのままの自分を受け入れてくれたこの場所に、心から感謝している。」

「最初はめんどくさい、行きたくないって思ってたけど  沢山新しいことも学べたし、自分の将来を少しずつ知れてとても良かった。」

「自立について考える時間が出来てよかった。」

「普段誰も僕のことに関心を持ってくれないから、唯一の居場所だと思えた。必要としてくれてありがとう。」

 

巣立ちプロジェクトが単なる学びの場にとどまらず高校生一人ひとりが自分自身と向き合い、安心して過ごせる“居場所”になっていったことが伝わってきます。

 

 

サポーターの中には思わず涙ぐむ姿もあり、

「“自立”とは、一人で何でもできることではない。必要な時に必要な人を頼り、SOSを出せることも自立。だから、何かあった時には一人で抱え込まず、周りを頼ってほしい。」
「また、いつか会える日を楽しみにしてる。」
と、巣立ちを迎える高校生一人ひとりに温かい言葉が贈られました。

 

第1回目の時は、ぶっきらぼうだった高校生も、最終回には仲間にもサポーターにも会うことを楽しみに参加してくれている様子を毎年見かけます。

信頼してもいい人がいる、と、高校生が巣立ちプロジェクトを通して少しでも感じてくれることが、B4Sにとっての大きな役割です。

 

横浜(土曜日)ブランチのメンバーのみなさん

 

◆事前・事後アンケートから見えてきた変化

巣立ちプロジェクトでは、参加した高校生に対して、プログラム参加前と全6回のプログラム修了後に、同一内容のアンケートを実施しています。その結果、参加前と比べて意識や捉え方に変化が見られる項目があり、巣立ちプロジェクトが高校生一人ひとりの気づきにつながっていることがうかがえました。

 

●「だまされたとき、犯罪被害にあったとき、頼れる機関について知識がありますか?」 

「はい」と回答した高校生は、参加前の37%から、全6回のプログラム修了後には66%へと大幅に増加しました。

この結果から、巣立ちプロジェクトを通して、万が一の場面で「どこに頼ればよいか」を具体的にイメージできるようになった高校生が増えたことがうかがえます。

 

 

●「あなたは、自分自身を誇りに思っていますか?」

 

「思う・やや思う」と回答した高校生は、参加前の48%から、プログラム修了後には61%へと増加しました。

この結果から、巣立ちプロジェクトへの参加が、高校生一人ひとりの自己肯定感や自分自身へのまなざしに、前向きな変化をもたらしていることがうかがえます。

 

◆次年度に向けて

巣立ちプロジェクト2025では、アンケート結果に見られる数値の変化だけでなく、高校生一人ひとりの言葉からも、確かな手応えを感じることができました。
「自分らしさを考えること」「スキルや知識を身につけること」「互いに関心を持ち認め合うこと」が、将来や自分自身への向き合い方を少しずつ変えていくと私たちは信じています。

次年度に向けては、こうした参加者の声や変化を大切にしながら、より多くの高校生が安心して参加でき、自分のこれからを前向きに考えられる機会を広げていきたいと考えています。巣立ちプロジェクトは今後も、親を頼れない子どもたちが希望を持って羽ばたけるよう、取り組みを続けていきます。サポーターの募集は5月頃開始予定です。ぜひ、まだ参加したことのない方は、ご検討ください。

 


セミナー中はB4S独自の単行本をフル活用!

巣立ちプロジェクトの全参加者の共有テキスト

『巣立ちのための60のヒント~施設から社会へ羽ばたくあなたへ~』

林 恵子・編著/NPO法人 ブリッジフォースマイル (明石書店)

 

 

高校卒業と同時に社会へ出なければならない子どもたちに対し、社会に潜む危険や、引越しの手続きなど、社会で生き抜くための知識やスキルがつまったハンドブックです。これまでに全国400ヵ所以上の児童養護施設、自立援助ホーム、里親家庭、ファミリーホーム、児童相談所にご購入いただき、ご活用いただいております。施設の子どもたちだけでなく、一人暮らしを始めるすべて若者にとって必要な内容がまとめられています。時代に合わせて改定を行っています。詳しくはこちら

 

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