
ニュース・活動報告

児童養護施設などで暮らす子どもたちは、18歳になると施設を出て、ひとりで生きていかなければなりません。ブリッジフォースマイルでは、巣立ちを目前に控えた高校3年生を対象に、月1回の半年間にわたるセミナー「巣立ちプロジェクト」を実施し、自立するための準備をサポートしています。
◆巣立ちプロジェクト2024が終了しました!
2024年度は、首都圏、佐賀、熊本、北海道から200名の高校3年生と、それを支える127名のサポーター(社会人ボランティア)が参加し、全6回のプログラムを終えました。夏から冬にかけ、半年にわたる活動を通じて、高校生とサポーターが一緒に学び、成長する場となりました。
このプロジェクトの最大の目標は、「安心の格差」「希望の格差」を抱える高校生が、少しでも不安を取り除いた状態で、新しい環境に飛び込めるようにすること。伴走するサポーターがさまざまなワークショップを通じて、
「頼れる大人がここにいるよ」
「困ったときは、いつでも連絡してね」
と、メッセージを繰り返し発信することで、人に聞く・相談する大切さを伝え、未来への希望を育む場となることを目指しました。
◆2024年度の新たな挑戦:「問い」に向き合う力を培う! プログラムの改変
これまで一人暮らしのノウハウや危険回避など、知識の伝達が中心だったプログラムから、「自ら考える力」を重視したプログラムへと、今年度は内容を全面的に見直し、アプローチを大幅に変更。
正解が一つではない「問い」にどう向き合うか──。それを考える経験こそが、この予測困難な時代を生き抜く力になると考えています。
2024年度事前・事後アンケート結果より
▼あなたは、自分の将来について明るい希望がありますか?
希望がある・どちらかといえば希望がある⇒全体の77%から84%に増加。
→「将来への不安をあおるのではなく、希望を伝える」ことに取り組んだ今回のカリキュラム。高校生たちが将来をポジティブにとらえられるように工夫されていた結果となった。
▼あなたは自分自身を誇りに思いますか?
思う・やや思う⇒全体の54%から63%に増加。
▼自分の意見、事情、感情を、相手に理解してもらえるように伝えることができますか?
はい⇒全体の65%から78%に増加。
→特に会場型巣立ちは「問い」と「対話」をテーマにワークを進める場面が多かったので、自分の意見や感情を相手に上手く伝える練習をできる機会が多くあった。
▼相手の話を聞き、相手が伝えようとしている内容や感情を理解することができますか?
はい⇒全体の79%から90%に増加。
「やりっぱなし」の支援にしないため、参加前後での子どもたちの知識習得度、不安感の変化、自己肯定感の向上などを定量的に測定し、プログラムの改善を続けています。
●ワークショップ例:自己紹介からはじまるコミュニケーション
まずは「ニックネーム」「今の気持ち」「尊敬している人や好きな芸能人」「最近嬉しかったこと」を紙に書きだす作業を行います。自分のことを客観的に整理する時間をとってから、相手を見つけて声をかける、グループをつくって互いに自己紹介するステップへ。自分について話すとともに、他者の話に耳を澄ませ、会話をつづけます。
会場には、高校生のにぎやかな声と笑顔があふれました。
「巣立ちプロジェクト」は、参加者が安心して失敗を経験できる場でもあります。高校生は、サポーターと話したり、参加者同士で意見を交換したりすることで、コミュニケーション力を高めていきます。
●ワークショップ例:未来日記を書いてみよう
たとえば20歳のとある一日、キミはどこで、何をして、何を思っているんだろう?
「働いたお金で、夢だったフィンランドにオーロラを見に来ている」
「20歳の誕生日に、初めての居酒屋に。お酒は口に合わなかったけど、これからもっと楽しみたい」
具体的な言葉にしてみることで、想像できる未来が少し広がります。
一方で、数年後の自分を思い描くことに戸惑う高校生も。そんな時は、寄り添うサポーターが、自然にイメージを引き出すための言葉がけを行います。
◆「18歳は人生の朝の9時」修了式を終えて
最後に、「巣立ちプロジェクト」の修了証を授与。一人ひとりに、伴走したサポーターから涙と笑顔と共に、熱い応援のメッセージが贈られました。
「さよならは言わない、また会おう」
「18歳は、長い人生の朝の9時。あなたたちには可能性しかない」
「これからの社会をつくるのは、きみたち。窓から見えるこのきれいな景色のように思い描いて」
●サポーターインタビュー:けっちゃん
【プログラムの感想】
去年までと大きく変わったので大変だったけど、やってみたら良かった。明らかに回を重ねる度に、関係性ができてきた。
【高校生に伝えたいこと】
順風満帆の時はいい。つまずいたときに、頼ってほしい。お互い同士もつながってほしい。そのための居場所事業もある。
【企業、社会に伝えたいこと】
教育をROIではかるのは、直接的には無理。だけど、使えるお金の1%でも支援先として向けてもらえれば、社会は変わるのになと思う。
●サポーターインタビュー:ミシェル
【プログラムの感想】
高校生同士が自主的に進めていくワークが良かった。一方で、サポーターの資質はより問われるようになったと感じる。
【高校生に伝えたいこと】
何があっても、ひとりじゃないよ!力になりたい人は、きっといる。B4Sやアトモプロジェクト、自立ナビゲーションもある。また会おうね。
【企業、社会に伝えたいこと】
活動を知って、できるところに参画してもらえれば、やさしさの連鎖が広がる。ずっと長くつながってほしい。
◆おわりに ~つながりをつくる次の支援へ~
会場の高校生との雑談の中では「不安はすごく減った」「みんなとのコミュニティができてよかった」とうれしい声が聞けた一方で、「まだコミュニケーションは苦手」という声もありました。
プロジェクトが終了しても、子どもたちの新たなスタートはこれからです。社会の荒波に挑む彼らを支えるため、ブリッジフォースマイルは、相談支援や居場所提供などの自立支援を続けていきます。
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