ニュース・活動報告

巣立ちプロジェクト2020@熊本<第3回 しっかりさんの金銭管理>
熊本巣立ち3回目_セミナー参加のボランティアとスライド

巣立ちプロジェクト2020 〜第3回 しっかりさんの金銭管理@熊本
開催日時・場所:2020/12/12・19 オンライン(Zoom)による実施
参加人数(両日合計):高校生38人/ボランティア28人
講師:キクリン

 

児童養護施設を来年春に退所予定の高校生たちを対象とした「巣立ちセミナー」。熊本では全4回をオンラインで開催中です。
第3回目の今回のセミナー、テーマは「金銭管理」です。前回の「一人暮らし」の時にも生活に必要なお金について学びましたが、今回は「税金」「保険」など、見慣れない、耳慣れないお金について学びを深めます。


講師のキクリン。癒しのモアイ像を時々使いながら、難しいお金の話をわかりやすく説明してくれました。

講師は社会保険の専門家でもあるキクリン。演劇で鍛えた七色の声を使いわけ、随所に思わず誰かに出題したくなるようなクイズをはさみ…と、楽しみながら学べる工夫がつまったセミナーでした♪

 

◆ミッションゲーム
まずは、それぞれのグループで簡単な自己紹介をしてから、本日メインの「ミッションゲーム」がスタート!

 

自分の進路に近い「役割」を選び、その役割に応じて決められた「収入」のなかで、13のミッション(「支出」)をクリアしよう!というゲームです。
このゲームを通じて、イメージのわきやすい衣食住だけでなく、保険や税金、臨時支出まで、リアルなお金の使い道を知っていきます。

 

◆社会に参加することを学んだ前半戦
前半のミッションは「所得税・住民税」「健康保険」「年金」「雇用保険」…と難しい言葉が並びます。
選んだ役割によって(ゲーム上の)税額や保険料は決まっているのですが、それぞれが何のためのお金なのか、丁寧に学んでいきました。高校生は資料と画面とにらめっこしながら、メモを取りながら、がんばりました!

 

健康保険と年金は、就職すれば会社が手続きしますが、学生やアルバイトで生活している間は自分で加入手続きをしなければならないので要注意です。
もし手続きをしなかった場合には、医療費を満額支払わなければならなかったり、将来受け取れる年金額が減ったりするリスクもしっかり伝えます。

 

「『社会保険』は困ったときに社会みんなで助け合う仕組み、『税金』は国や自治体が社会のために使うお金になるんだよ」というキクリンのまとめに、気持ちが引き締まったり、「大人になること」を感じたりした高校生もいたのではないでしょうか。

途中、「知っている税金をあげてみよう」というミニワークにも挑戦!
今の生活に一番身近な「消費税」、車好きな高校生からは「自動車税、重量税」、20歳になってから…というヒントをもとに「たばこ税、酒税」など続々とあがります。ほかにも、固定資産税、相続税、事業所税、法人税など、なかなか高校生が耳にすることはないように思う税金もあがりました。

 

◆それぞれの生活スタイルと運?!があらわれた後半戦
後半のミッションは「貯金」「食事」「水道光熱費」「通信費」など、前半に比べると分かりやすい内容でしたが、高校生一人ひとりの生活スタイルによって、だいぶ支出額にばらつきが出てきます。
例えば「貯金」だと、ガッチリ貯金派:10,000円、コツコツ貯金派:5,000円、ちょっぴり貯金派:1,000円、明日はあしたの風が吹く派:0円、といった具合です。
ここまでの支出額を計算してみると、すでに赤字になっている高校生、ボランティアもちらほら。
ちょっと難しい顔をしていたり、頭を掻いている様子も見えました。

 

“ゲーム”なので、ここでは終わりません!最後に待ち受けていたのは、内容の隠された「ハッピー/トラブル臨時支出」!!

 

4つの記号から1つを選んだ後、キクリンからその内容と金額が発表されました。
ハッピーは友人の結婚式やパートナーの誕生日、トラブルは虫歯や家電買い替えなど、”あるある”な臨時支出ばかりです。
そしてここでさらに運を分けたのは、前半のワークで行ったミッション「貯金」や「健康保険」でした。貯金が少なければ少ないほど、臨時支出はその月の収入から充てるしかありません。健康保険に未加入であれば、治療費は全額負担です。”ゲーム”ですがリアルです。

 

以上でミッションすべてが終了。

 

「ガッチリ貯金を選んでいたから、最後の臨時支出がどちらも0円で、黒字になった」とホッとした表情の高校生、「食費をコンビニじゃなくて、そこそこ自炊にすれば赤字が減らせそう」と赤字の原因を早速分析する高校生もいました。

 

途中、「水道光熱費・通信費、支払い滞納したらどれから止まる?」というミニワークにも挑戦。
回答は様々でしたが、「命に関わるものは最後に止まる」という考え方をばっちりおさえて考えていました!
「命に関わるもの」の順番が高校生それぞれに違ったようで、「本当にどうにもならなくなったら助けを求められるように、携帯は最後まで使えるようにしておいてほしい」という声も。
そうなる前に、だれかに話してほしいし、だれかに話していいんだよ^ ^

 

◆本当にあった怖い話・・・

最後の1時間は、ゲームからがらりと雰囲気を変えて、厳しいけれど大事なことを伝えます。
それは「何のためのお金か、しっかり考える」ということです。

 

巣立ってすぐ、周りの同僚や同級生よりも貯金があったから、気前よく振舞っていたら、すぐに貯金がなくなった。

 

遊ぶお金が足りなくて、カード支払いと同じ感覚でキャッシングや消費者金融でお金を借りた。

 

次の仕事を見つけないまま仕事を辞めたら、収入がなくなった。社員寮だから住まいもなくなった。

 

…どれも先輩が経験した「本当にあった怖い話」です。

 

「お金は『たくさんあること』がいいのではなくて、『必要な分はきちんとあること』がいいとおもいます。そのためにはまず、自分に必要なお金をしっかり理解して、今あるお金や、これから働いて手に入れるお金に見合った使い方をしていくことが大切。そして、少しずつでも貯められるお金があれば、自分の夢をかなえられたり、大事な人のために何かできたりするから。」とキクリンが語りかけます。

 

高校生も、ミッションゲームでリアルにお金の使い道を知ったからこそ、あの「収入」が0だったら、「貯金」がなかったら、ときっと真剣に耳を傾けていたとおもいます。うなずきながら聞いている姿もありました。

 

最後の振り返りでは、
「お金をもらうことしか考えていなかったから、いろんな支出があると知ってすこし不安」
「しっかり考えないと大変なことになる」
「ミッションゲームでちょっぴり貯金を選んだけれど、これからしっかり貯金をしたい」
「お金の使い方を知れたから、あまり使わないように気を付けたい」
など、知ったことで生まれた不安も決意も、高校生はしっかり言葉にしていました。

 

全回オンライン開催という初めての試みが続いていますが、高校生もボランティアも、回を重ねるごとに少しずつ慣れ、休憩時間に歌を歌ったり、残っておしゃべりしたり、セミナーの最後にわざわざミュートを外して「ありがとうございましたー」と声をかけて退出してくれたり…と、伴走するボランティアからも「対面に近い雰囲気になってきた」「信頼関係づくりが出来てきて少しずつ本音で話せたと感じる」との振り返りもありました!

 

慣れてきた頃に、次回はいよいよ最終回。今からすでに寂しさも感じていますが…
ここ熊本は冬の寒さが厳しいので、体調には十分気をつけて、高校生もサポーターも、笑顔でまた会いましょう!

 

(ボランティア:じょら)

 


本セミナーの運営とオンライン化に、公益財団法人日本財団からの助成金を活用しました。

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