「親を頼れない」
子どもの現状

巣立ちの時期に
「親を頼れない」子どもが
直面する社会の大きな壁

親を頼れない子どもたち
「18歳の巣立ち」の現実

児童養護施設や里親家庭で育った子どもたちは、原則18歳で自立を求められます。多くは「実家」というセーフティネットがありません。困ったときに頼れる先がないため、「何かあっても自分だけでなんとかしなければならない」という強いプレッシャーや孤独感を抱えています。

自立生活に立ちはだかる壁

進学や就職といった進路の選択に加え、生活基盤の確保や手続き、家事など日常生活の準備も必要です。水道・電気などのライフライン契約や、保険・年金の手続き、金銭管理など、学校で教わらないことが多く、親の支援がない彼らにとっては一つひとつが大きな負担です。病気や失業時にも頼れる人がいないため、「すべて自分で乗り切らなければ」という孤独感が深まります。そして、お金の不安です。高校生の頃からアルバイトで貯金をして巣立ちに備えたり、公的な奨学金制度なども拡充してきましたが、自力で生計を立てられなければ、住む場所を失うリスクに直結してしまいます。

精神的な困難と孤立

施設退所者の多くが虐待を経験しており、心に深い傷を負っています。その結果、希死念慮や自傷行為、依存症、人間不信などのメンタルヘルスの問題が表れやすく、精神科通院率は全国平均の約8倍に上ります(退所者24.2%、全国平均3.1%)。

精神科通院率は全国平均の約8倍

不適切な環境で育った子どもたちは自己肯定感が低く、将来の夢や目標を描くことが難しい状況にあります。また、孤独につけこんでくる、悪意ある大人に騙されやすい傾向があります。

進路選択における課題:
進学か就職か

高校卒業後の進路について、児童養護施設退所者の進路は57.1%が就職、39.8%が進学を選択しています。文部科学省による進学率の算出方法に揃えると施設出身者の進学率(44.7%)は、全国(81.2%)と比べて著しく低い水準です。

高校卒業後の進路

「全国児童養護施設トラッキング調査2025」によると、2024年度に高校等を卒業した人のうち、進学が39.8%、就職が57.1%、無職が1.4%、その他が1.7%でした。文部科学省「高等学校卒業者の学科別進路状況(令和6年3月卒)」の調査では、全高校卒業者の大学等・専門学校等への進学率81.2%、就職が14.1%。

進学:学費・生活費・精神的負担

学費の負担は公的な奨学金制度の拡充により軽減されつつあります。それでも奨学金とアルバイトの収入で学費と生活費をやりくりする必要があり、経済的に厳しい状況に置かれています。
また中退率も高く、2024年度入学者の8人に1人は、入学から1年ほどで中退しています。中退の理由としては、「学習意欲の低下」が最も多く、次いで「出席日数不足」、「メンタル不調」となっており、経済的な問題以外の理由で就学継続が難しくなっています。

進学した施設生活経験者の2025年6月現在の状況 中退率:16%~35%
中退、休学の理由 *複数回答

中退後の就労状況は厳しく、正社員・正規公務員としての就労は18.3%に留まり、36.6%が不安定雇用(派遣・契約社員・パート等)、11.4%が無職となっています。

進学先を卒業または中退した施設生活経験者現在の状況

就職:安定就労の難しさ

就職した退所者について、早期離職率の高さから安定的な就労に至っていない実態があります。高校卒業直後に正社員として就職した人のうち、就職から3ヶ月後で14.3%、1年3ヶ月後で44.9%が離職しています。これは、転職が当たり前の現代社会においても高い離職率と言えます。また、入社3ヶ月で離職した人のうち、7.1%が無職となっています。
背景には、高校の就職活動では、業界や職種についても自分の適性についてもよくわからないまま、勤務条件だけで就職を決めてしまうことがあります。生活の余裕のなさ、対人関係の苦手さなども影響しています。

高校卒業直後に正社員として就労した進路就職者の現在の雇用状況

目標も計画もないまま早期に離職してしまうと、次に安定した職に就くのが難しくなります。就職活動の方法を知らないだけでなく、短い職歴から自己アピールもうまくできません。「稼がないと生きていけない」という状況では、手っ取り早く収入が得られるアルバイトなどを選択しがちで、キャリアを重ねていくことができません。
社員寮など住まいの支援を受けていた場合は、離職と同時に住まいも失うことになります。

どのような進路選択にしろ、不安定な状況に陥りやすい子どもたちが安心して何度でもやり直しができるような、継続的な支援体制の整備が求められています。

自立を支える制度

児童養護施設などを巣立つ子どもたちを支援する制度は、近年少しずつ整備されてきました。20歳まで出身施設で暮らせる措置延長制度の拡充や、出身施設が巣立ち後の子どもたちの相談に乗る専任職員の配置、未成年の就労・自立を支える制度だった「児童自立生活援助事業」の利用対象者の拡大などです。
2024年度からは、都道府県にアフターケアが義務付けられ、支援年齢上限の撤廃や、相談・支援を行う「社会的養護自立支援拠点事業」がスタートするなど、「親を頼れない子ども」全般を、年齢制限なく長期的に支えていく体制がようやく整い始めました。

児童自立生活援助事業

児童時自立生活援助事業は、これまでは未成年の就労自立を支える「自立援助ホーム」が行う事業でした。20歳までは施設で暮らしながら自立の準備をするもので、必要な場合は22歳まで延長することもできました。2024年度からは、年齢制限を撤廃するとともに、児童養護施設や里親もこの事業を行えるようになりました。すなわち、児童養護施設や里親家庭で育った子どもたちが、必要ならば成人後も、一度措置を解除された後でも、施設等で自立のためのサポートを受けられる制度ができたのです。

とはいえ、児童養護施設がこの事業を行うためには、専任職員の配置などが必要で、2025年時点で導入をした施設は16.2%、導入予定がある施設は14.0%です。18歳未満の子どもたちで常に手一杯の施設も多く、導入した場合も受け入れ人数はごく限られたものとならざるを得ません。

社会的養護自立支援拠点事業

社会的養護自立支援拠点事業は、2024年度にスタートした新しい事業で、これまで自治体毎に独自のアフターケア事業を行っていたものが全国で統一されたものです。「居場所の提供」「相談支援」「専門機関へのつなぎ」「一時的な住まいの提供(任意事業)」を行うもので、年齢制限はありません。児童養護施設や里親家庭を巣立った若者に加え、かつて一時保護所で保護された経験はあるが施設入所にはいたらなかった若者、そして、虐待経験がありながら公的支援につながることなく育った若者がはじめて対象に含まれました。

具体的な事業はNPO法人などが自治体から委託を受ける形で行います。ブリッジフォースマイルもLINEでの相談支援(https://www.b4s.jp/care/)を始めたほか、全国数カ所に「B4S PORT(居場所)」や、緊急時に宿泊できる「ショートステイ」を設置。多様な背景をもつ「親を頼れない若者たち」を対象としたサポート活動を行っています。

広がる支援格差
児童養護施設などを巣立った孤独な若者たちのための長期的な支援制度ができたこと、また虐待経験がありながら公的支援につながることのなかった若者たちへの支援制度が初めて実現したことは、画期的な制度改善と言えます。

とはいえ、新しくはじまったばかりの制度にはまだまだ改善の余地があります。実際にどのような支援が行われるかは、自治体や施設、事業を請け負う事業者によっても異なります。子どもたちは自分で生まれる地域や育ちを選ぶことができないのに、たまたまどこに生まれたかで受けられる支援が大きく変わってしまうのです。制度のはざまに落ちる子どもたちをどう救い上げていくかを、行政、民間、そして社会全体で考えていく必要があります。

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