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“親ガチャ”って何? 子どもは親を選べない!当事者たちとのトークイベント開催
親ガチャイベント画像

「親ガチャ」とは、子どもの立場から「親は自分では選べない」「どのような環境に生まれるかは全くの運任せ」という意味で使われる言葉で、若者を中心に、SNSなどで急速に広まりました。

児童養護施設の出身者、親を頼れなかった当事者たちが、「親ガチャ」から思うことや自分の経験を参加者と共有し、1人ひとりができることを考えるオンラインイベントが11月20日、開催されました。

 

■当事者にとっての「親ガチャ」とは?

イベントの開催趣旨は「親ガチャ」に対して、良い悪いといった議論ではなく、想いの共有、意見交換です。

まず、参加した4人の当事者(コエール2020、2021のイルミネーター)はこの言葉の流行をどう受け止めているのかを話してもらいました。

 

ヨウ

僕はいわゆるヤングケアラーでした。母が入院先で「子どもだけで生活している」と話したことがきっかけで、高校生の時から児童養護施設に入所することができ、国立大に進学して、今は小学校の教員をしています。

個人的には、親の質の良し悪しは自分の人生にはあまり関係なかったと感じます。ただ、本当に困っている子どもたちが大勢いるからこそ、この言葉がネットスラングとして若者に定着してきているのは分かります。

 

むんちゃん

私自身は、母親から暴力などの虐待をうけながら育ち、大学時代には過干渉と金銭搾取に遭っい、大学中退を余儀なくされました。

「親ガチャ」は安易に使いたくないと思ってきましたが、なぜ中退したのか聞かれたとき「親ガチャ外れてさ」という一言で何となく理解してもらえたので、「そうか、こうやって使うんだ」と腑に落ちた経験はあります。

 

呑ん(のん)

実家は経済的には余裕がありましたが、母親から虐待を受け、同居の祖父母からは口止めされ、周囲に相談しても何もしてもらえず、「こういうことは言ってはいけないんだ」と思って育ちました。自分で家を借りられる20歳になって、ようやく家を出ました。

今は会社員をしていますが、AC(アダルトチルドレン)の症状に時折悩まされ、恋人に支えてもらっています。私は大人になるまで「外れ」だったと気づけませんでした。この言葉の流行で、子どもが、早くから自分の家庭環境に気づけるのはいいことだと思います。

 

キティ子

高校3年間を児童養護施設で過ごしました。「親ガチャ」という言葉は自分でも、Twitterなどでもよく使っています

私の場合、きょうだいの中で施設に入ったのは私だけなので、同じ親でも「ガチャ」の結果が違うこともあるのかもしれません。ただ、そんな中にあっても「外れたままで終わりたくない」、自分で「当たり」にしていこうとしている人に感動します

 

 

続く、代表の林によるファシリテートで行われた意見交換では、

あえて「親ガチャ」という言葉を使うとしたら、どんな状況が「外れ」なのか

大人になった現在、「ガチャ」をどう受け止めているのか

といったことも語られました。

 

 

■登壇した4人の当事者が、改めて「親ガチャ」について考えたことは?

後半は、ブレイクアウトルームに分かれて、4人の当事者を囲んでのグループセッションと、各グループで話されたことのシェア、当事者の感想が語られました。

 

ヨウ

僕の場合は”親ガチャ”は外れても、いろいろな人に満たしてもらっているおかげで、こうやって頑張って生きていけていると思います

僕のクラスにいる30人ほどの子どもたちに対しては、しっかり教室の中で満たしてあげて、一緒に良い未来作っていけたらいいと思います。

当事者を支援したい人たちに伝えたいことは、いろんなことを考えすぎるより、目の前のその人をしっかり見て、一生懸命やってくれるだけで、当事者は幸せなんじゃないかなと思います。

 

むんちゃん

子ども時代は、親も環境も選べなかった。でも今の私には、夫と家庭を築いていますし、子どもたちもいます。今度、子どもが小学校に上がりますが、うちの自治体ではどの学校に行くかは自由です。こんなふうに、実際は選べることって多いですよね。”親ガチャ”という言葉には違和感があったけど、今日話してみて、自分を顧みるきっかけになったと感じています。

 

呑ん(のん)

親は選べないけど、周りの大人たち、友達によって、当事者を取り巻く環境ってちょっとずつ良くなっていくのではないかと感じました。

周りの人たちが『当たり』になることで、その子たちにとっていい環境にしていくことができる、その辺を希望として見ることができました。私自身は『当たり』の親になりたいですし、『当たり』の大人になれるように頑張りたいなと思いました。

 

キティ子

皆さんとお話しして、”ガチャ”に対する考えが結構変わったところもありました。

仮に『はずれ』だったとしても、自分が変わって行動していけば良いものに変えていけるかもしれない。大事なことは、いろいろな考えがあることをわかった上で、他者を攻撃しない状態を作っていってほしいということです。

 

 

■参加者の感想『私たちに何ができるのか?』

最後に参加した大人たちの感想をいくつかご紹介しましょう。

多くの気付きがあり、長い感想を寄せてくださった方もいらっしゃいました。

みなさま、どうもありがとうございました!

 

Aさん

”親ガチャ”という言葉は、今もしっくりきてないのですが、この言葉が話題になったことで、こうして考えるきっかけになったのはすごくよかったと思います。当事者の方、参加者の方の話を聞いて、仮に”親ガチャ”が失敗だったとしても、その先の人生で得られるものは、必ずしも失敗にはならない。大事なのはきっとそこなんじゃないかな、というのを改めて実感できました。

 

Mさん

困難な幼少期を色々な方のサポートやご自身の力よって、「外れの親ガチャ」から「当たりの子ガチャ」に変えた当事者の方々のお話を聞き、「かわいそう」という偏見がなくなり尊敬の念を抱きました。自分自身も「当たりの大人」になりたいなと実感できた貴重なイベントでした。
 

Nさん

グループディスカッションでは、親の立場で意見をシェアしてくださる参加者もあり、共感・理解が深まりました。聞かせてもらうことが、知らなかったこと想像できなかったことの気づきに繋がります。さんの勇気とB4Sとの信頼関係に感謝しつつ、もっとこのような機会があればいいと思います。

 

Mさん

当事者からの「やっと自分の育った環境をわかりやすく伝えられる、他者とイメージを共有できる言葉と出会えた」という意見を聞いて、なるほどそういうポジティブな捉え方もあるのかと新たな知見がありました。

「親ガチャ」に限らず、人生には数多くの「運」に左右される要素があるので、そういった要素に挫けずに、未来の子どもたちが環境に左右されずにやりたいことができる社会にするため、自分に出来る支援を続けたい、という思いを改めて抱きました。

 

Wさん

「親のせい」という気持ちと、どう区切りを付けていくのか、4人のみなさんが、それぞれ自分なりに消化・昇華し、とてもポジティブに考えられており、印象的でした。虐待の事件や事案が報道されると、結局「親のせい」にし、終息していきます。なぜ、その親が、そうなってしまったのか。背後にある社会課題に目を向け、解決の糸口を探っていかないと、同じことの繰り返しになります。私たち一人一人も「当事者」だという意識が必要だと考えます。

当事者として話をしてくださったヨウ、むんちゃん、呑ん、キティ子、ご参加のみなさま、感想をお寄せいただいたみなさま、どうもありがとうございました!

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