ニュース・活動報告

厚生労働省が公表した「実態調査」によせて

先月、厚生労働省から「児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査」が発表されました。

かなり分厚い報告書でしたが、ひととおり目を通しました。

気になったところを、今後何回かに分けてご紹介していこうと思っています。

 

さて、今回の調査は、

・児童相談所設置自治体の担当職員に対するケアリーバー支援に関するアンケート
・児童福祉施設職員や里親へのケアリーバー 一人一人に関するアンケート
・ケアリーバー本人へのアンケート
の3つのアンケートから構成されています。

 

◆ケアリーバーって?

最初に、大前提として押さえておきたいところとして、今回の調査では、「ケアリーバー」という耳慣れない新しい言葉が使われました。


「ケアリーバー(care leaver)」とは、「社会的養護経験者」という意味。
「児童養護施設や里親に措置された経験がある人」ということです。
「leaver」という言葉の意味を考えると、現在措置中の子どもは除くということでいいのだと思います。

 

今回調査対象となったケアリーバーは、平成27年(2015年) 4月~令和2年(2020年) 3月の間に、中卒以上で措置解除となった人です。

理論上は令和3年(2021年) 1月31日の時点で高校1年生相当の年齢から25歳の若者(平成27年度に20歳まで措置延長されて卒業)が回答をした可能性があります。

 

◆配布率35%。回答率は40%

調査対象者に対する配布率が35%。回答率が40%程度なので、調査対象全体からすると回答率は14%程度にすぎません。

今回のケアリーバー本人に対するアンケートは、児童養護施設や里親など(以下、「施設など」とまとめます)からケアリーバー本人にメールまたは郵送でアンケートを送り、回答をしてもらう、という形式をとっています。

配布率は35%ですから、65%のケアリーバーにはこのアンケートが配布されていません。


なぜ、配布されていないのでしょうか?
施設などが案内できない理由としてあげている6割は「住所・連絡先不明」。
65%の6割、つまり、「約40%の若者が、巣立ち後5年以内に施設などと連絡がつかなくなる」ということです。

 

施設に若者との関係性を聞いたところ、調査票を配布できた若者については、「施設との関係が良好」と施設が考えている若者が、8割超えていました。

一方で、配布できていない若者については、「施設との関係が良好」と施設が考えているのは5割ほど。
かなり差があることがわかります。

 

ですから、本調査で示された結果が施設などから巣立った若者の声のすべて、と考えると、ミスリードになりそうです。

こういった事情を踏まえて読み解く必要はありますが、若者の生の声を実際に全国レベルで拾った調査は初めて、ということも考えると、一定の価値はあると感じています。

 

◆若者とつながり続けるには?

配布率の結果を見て、B4Sが実施している自立ナビゲーション(以下、自立ナビ)のことを思い出しました。

 

自立ナビとは、施設などを退所した若者に、月1回会ったりメールでやりとりをしたりして、近況や生活、仕事上での不安や悩みの聞き役になるものです。一人に対し、専任の社会人ボランティアが付く伴走支援です。

 

自立ナビの伴走期間は、原則、施設などから巣立ち後の2年間です。

自立ナビが順調に進む若者の多くは、施設とつながっています。

しかし、2年の間に、徐々に連絡がとれなくなっていく若者もいます。

連絡がとれなくなっていく若者のなかには、施設とも疎遠になっているケースもあります。


できれば、ずっとつながっていてほしいと思うのですが、若者に「連絡をしろ」「社会人ボランティアとつながれ」と強制することはできません。
どうしたら、つながり続けることができるか…。
結局は、若者に「つながりたい」「また会いたい」と思ってもらえるような関係性を作ることが大事だと思うのです。

子ども・若者支援担当 矢森 裕章
今回取り上げたのは、膨大な調査結果の入り口だけです。
結果は公開されています。気になる方は、ぜひ、目を通してみてください。

Bridge for Smile

認定NPO法人ブリッジフォースマイルのホームページへようこそ!

私たちは、児童養護施設や里親家庭などで暮らす、親を頼れない子どもたちの巣立ち支援をしているNPOです。
ご関心に合わせ、以下から知りたい項目をお選びください。