ニュース・活動報告
B4Sが施設退所者などの居場所として横浜市に設置している「よこはまPort For」(以下「YPF」)。今年で開設10周年を迎えます。
前編では、開設以来、継続的にYPFに関わってきたB4S職員のMattyに、入職の経緯や安全安心な居場所づくりのための心がけ、10年前と今を比較して感じることを聞きました。後編では、Mattyが考える居場所の役割や、退職にあたり伝えたいこと、人とつながることへの思いなどを取り上げます。
◆居場所は自立を目指す場。でも、強引に自立させる場ではない
先ほど、居場所には、自立を目指す場という意義もあるとお話ししました。ただ、強引に自立させる場ではない、とも思います。本人が自立したい、就職したいと思ったらサポートはできますが、本人がそういう気持ちになっていないのに、自立させようとしても、うまくいきません。自分の心安らげる場所をキープして、辛くてもここに来ればまた頑張れる、そういう場所が居場所だと私は思っています。YPFの名前の由来となった「港」のように、傷ついたら一旦休んで自分を修繕し、また外に出ていく、そうしたことができる安心安全な場所を作りたいという思いで、これまで取り組んできました。
YPFでは、途中から居場所機能と個別支援機能を担うスタッフが分かれましたが、個人的には、今の形になってよかったと思います。居場所と個別支援は役割が違います。「一息つきにおいで」という居場所と、時に厳しいことも言う個別支援を、同じ場所で同じ人が行うのは大変です。個別支援でちょっときついことを言われても、居場所では甘やかしてもらえる。家庭でどちらかの親に叱られて、もう片方の親に慰めてもらうような、そんな役割分担ではないでしょうか。もちろん、居場所に来ているからと言って、「仕事をやめたい」という利用者に、簡単に「やめたらいいよ」とは言えません。でも、「大変だね」という寄り添いはできる。そういう意味で、機能が分かれたことは良かったと思います。
◆環境を整え、過ごしやすい場をつくる。細かいことの積み重ねが信頼につながる
居場所として環境を整えて、安全安心な場を作ることが大事だと思います。そのために、こまめなメールチェックや日用品などの過ごしやすい環境を整えることはお願いしたい。そうした細かいことの積み重ねが信頼関係につながります。
たくさん人がいると、つい人任せになりがちですが、私は自衛隊時代から「率先垂範」と言う言葉を大事にしてきました。自分でやって見せて、利用者もスタッフも、それについてきてくれたらと思っています。完璧にできる訳ではありませんが、良いと思うところを真似てくれたら嬉しいです。
社会人ボランティアの方たちを含め、多くの人がYPFの運営に関わってくれていますが、若い方にもっと来てもらいたいです。やはり若い人のほうが利用者と話しやすく、世代に合った話ができるので。
料理はできなくても大丈夫。そのうち覚えます。それより、利用者の話をよく聞いてくれる人に来てもらいたいです。ボランティアの方たちの中には、親切心で自分が良いと思うことを教えようとする方も多いですが、善意の押し付けにならないよう、利用者のニーズを尊重することが大切です。
◆横浜、佐賀、熊本、3つの居場所をつなげる取り組みを始めた理由
私は、元々人とのふれ合いが好きなんです。数年前に、1年間世界旅行した時も、ホテルにはあまり泊まらず、民泊でオーナーや一緒に泊まった人とのやり取りを楽しみました。今もその時の縁でつながっている人が結構います。音沙汰がなくならない限り、自分から連絡を絶つことはありません。元々まめな性格ですが、一人暮らしということもあり、誰かとつながっていることは自分にとっても大事で、自分が安心感を得ている部分もあります。
そんな性格もあり、熊本と佐賀にもB4Sが運営する居場所ができたので(※1)、居場所の合同ミーティングを始めました。昨年のクリスマスには、3カ所をオンラインでつないで、一緒にビンゴをやったりしました。
私は熊本は居場所の立ち上げ時にサポートに行って、熊本のスタッフと仲良くなっていたし、佐賀のスタッフからは困っていることがあると聞いたので、じゃ、ちょっと意見出し合ってみようと思って企画しました。ミーティングやイベントといった経験を共有して、お互い相談できる関係ができるとよいと思います。仲間がいるって安心できるじゃないですか。それが一番。顔も見たことがない人に、なかなか相談できませんからね。
これは、利用者も同じで、九州から上京する利用者にとって、オンライン上であったとしても、YPFに行けば顔を知った人がいる、というつながりがあれば心強いでしょう。
YPFに来る若者たちとは定期的にテニスもやっています。彼らに趣味を持ってもらえたらいいなと思ったことがきっかけです。参加者も増え「テニス部」と命名し、つなサポ(※2)に認定されている社会人ボランティアさんも加わって、月2回ほど実施しています。毎回7~8人ぐらい集まる自主サークル活動です。フットサルとか、自分から活動したい子は結構います。でも、何かやりたいという気持ちがわかない子も多い。そうした内向きの子が、外に向かって活動できるようになるきっかけを作ることも、B4Sのひとつの役割かなと思っています。
◆これからはボランティアとして、細く長くつながり続けたい
退職後は、本当は海外旅行に行きたかったのですが、今はなかなか海外旅行には行きづらいので、当分は国内であちこち回る予定をしています。
B4Sの活動については、今後はボランティアの1人として、YPFやアトモ、それから10年間ずっと通っている施設で実施する自立支援セミナー(※3)に参加したいと思っています。
居場所について言えば、その場所を自分の居場所と感じるかどうかは、知っている人がいるかどうかという要素が大きいと感じています。知らない人しかいなければ、「居場所に帰ってきた」というイメージはわきにくい。実際、特定のスタッフに会いたくて、YPFに来る人もいます。もしかしたら、私に会いたいと思ってくれる人もいるかもしれない。そうした要望に完全に応えることは難しいですが、細く長くつながっていけたらいいなと思っています。
「居場所」は、ただ場所があればよいのではなく、利用者を思い工夫を重ねるスタッフがいて成り立つのだと感じました。私も、丁寧にB4Sでのボランティア活動に取り組んでいきたいです。
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