スーツ500着に込めた AOKIの理念

「ブリッジフォースマイルはどんな団体ですか?」
そのようにご質問を受ける機会は多いのですが、そんな時私は「社会的養護と呼ばれる児童養護施設などの児童やそこを退所した若者の自立支援を行う団体です」とお答えしていました。
そうすると説明された方の中には、わかったような、わからないような曖昧な顔をされる場合もあって、話している本人も「自立や支援って何とも説明的な表現だなー」と思っていました。
もちろんこの問いに絶対的に正しい答えなどないのですが、先日開催した15周年パーティーを通じて、私なりに「B4Sってこんな団体だ!」と見えてきたものがありました。
私は以前、ニックネームのジャーニーが表す通り、バックパッカーの旅をしていました。その中で訪れたカンボジアで小学校教諭のボランティアを経験し、子どもたちには無限の可能性があること、ほんの少しのきっかけがあればどんな未来にもつながっていくことを実感しました。帰国してから社会的養護のことを本格的に調べ、理不尽な境遇にいるのは海外の子どもたちだけではないと知りました。
施設に措置される児童は、家庭という大きな拠り所をなくし、虐待経験などトラウマを抱えている場合も少なくありません。また、原則として18歳で施設から退所しなければならず、自立していくためには社会の助けが必要な場合もあります。しかし、残念ながら彼らに対する偏見は根強く存在し、制度の面でもまだまだ現実に追い付いていないなと感じることはあります。
B4Sは「子どもたちがどんな環境で生まれ育っても、夢と希望を持って笑顔で暮らせる社会を目指します」という理念のもと15年間様々な活動を行ってきました。
私は、たった2年間しか活動に携わっていませんが、15年という一つの節目を祝うパーティーの担当者をやらせてもらうことになりました。立候補してくれたボランティアさんたちと「そもそもなぜ15周年パーティーが必要なのか」と言う目的を決めることから一緒に考え、準備を始めていきました。15年の歴史を振り返るだけでなく、「未来志向」と「融合」をテーマに決め、今までこんなことをしてきた、これからの5年、10年ではもっとできることがあるという思いのもと15周年パーティーのプログラムを編成しました。
活動を振り返る中で私自身、たくさんの発見がありました。年間222時間も活動に充ててくださったボランティアさんがいたこと(18年度)。ご寄付や物品提供、就労体験インターンシップ受け入れなど、あらゆる形でご協力をいただいている企業が138社もあること(18年度)。退所間際の高校生を対象とした巣立ちセミナー、初年度は7名だったのが、現在は210名も参加してくれていること(19年度)。
また、15周年パーティーはブリッジフォースマイル職員、ボランティア、施設退所者、施設の職員など様々な関係者が集まるイベントでしたが、特定の誰かをもてなすのではなく、関係者全員で互いに健闘をたたえ合う場にしたいと考えました。そのためパーティーの資金も参加から一律で徴収させていただきました。とはいえあまり高額な参加費だと退所者の負担になってしまうと考え、パーティーの飲食代を賄うための「からあげ・シャンパン基金」という募金をボランティアさんに呼びかけたところ、たくさんの方が協力してくださり、9万円もご協力いただけました。
当日は、15年の歴史の中でブリッジフォースマイルに関わりを持ったたくさんの方が集まり、久しぶりの再会を喜び、ブリッジフォースマイルのこれまでの活動を懐かしみました。そして、これから活動に気持ちを新たにすることができました。参加してくれた方の笑顔が多かったのが印象的です。
ここで15周年にあたって退所者が送ってくれたメッセージをいくつか紹介させていただきます。
設立当時と比べるとこの15年で社会的養護をめぐる様々なことが確実に変化していきました。改善し良くなってきたこともありますが、反対に深刻化し取り組んでいかなければいけなくなったこともあります。 それでもB4Sが「続けてきた」、そして「続けていく」ということが持つ意味は大きいと思います。15周年パーティーを通してB4Sで活動するということは、未来のための仕事だと思えるようになりました。
対人支援は迷うことの連続です。正解も終わりもありません。それでもB4Sという団体は15年間チームで考え、行動に移してきました。
今は、「B4Sはどんな団体ですか?」と聞かれたら、私は少しだけ自信を持って「B4Sは関わってくださった方を笑顔にする団体です。そして笑顔をつないでいく、そんな架け橋のような団体です」とそんなふうに答えようと思っています。
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