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児童養護施設のいま
写真:コラム【親代わり2:児童養護施設のいま】のアイキャッチ画像(児童養護施設の庭で遊ぶ子どもたち)

全国に605カ所ある児童養護施設は、主に社会福祉法人が行政から委託される形で運営しています。運営資金は基本的に国からの「措置費」と地方自治体からの「補助金」でまかなわれていますが、国の基準を超えたケアを行う場合は施設の持ち出しとなるため、多くの施設が一般からの寄付も募りながら、子どもたちのためにさまざまな工夫をこらした運営をしています。

 

◆さまざまな施設の形

施設は規模によっていくつかの種類に分かれます。「大舎制」は、一つの大きな建物の中で20~150人程度の子どもが集団生活をするものです。個室のある施設もありますが、2~8人程度の大部屋に性別、年齢別に分かれて暮らす形が多く、食事は大きな食堂で一緒に食べます。「中舎制」は、大舎制の建物内をいくつかに区切って小さな生活集団の場を作り、浴室や食堂などもそれぞれに備えたもので、1つの生活集団に13~19人の子どもが属します。「小舎制」は建物を解体して敷地内に独立した家屋をいくつか配置し、それぞれの家屋で各12人以下の子どもが生活します。また、「グループホーム」は地域の一般住宅を利用して6人以下の子どもが職員とともに生活するもので、多くが既存の児童養護施設の「分園」として運営されています。

 

◆小規模化の流れと課題

かつてはほとんどの施設が「大舎制」でしたが、子どもの養育にはより小規模で家庭的な形が望ましいとの考え方から小規模化が進み、現在では、大舎制は全体の5割程度となっています。政府は、里親委託率を引き上げるのと並行して施設の小規模化をさらに推進し、ほとんどの子どもが「家庭的養育」のもとで育つようにする方針です。とりわけ一般家庭に最も近い形のグループホームを大幅に増やす方針で、グループホームの職員配置基準を2018年度の6対3(子ども6人に対し職員3人)から倍の6対6に引き上げるという目標も掲げています。

 

ただ、小規模化には多くの課題があります。既存の施設の建て替えには莫大な費用がかかるため、公的な財政援助がなければ建て替えができない施設もあります。小規模化は職員増を伴うため、人件費が増加しますし、そもそも職員を確保するのが難しいという問題もあります。

国は、小規模化を促進するインセンティブとするため、グループホームなど小規模施設の職員配置が手厚くなる一方で、大規模施設の職員配置は子ども5.5人に対し職員1人にとどめられています。児童養護施設は苦しい選択を迫られています。

 

◆質量ともに追いつかない人財の課題

児童養護施設は24時間・365日稼働しています。職員はローテーション勤務ですが、子どもの状況によっては、時間外勤務になることもしばしばです。入所する子どもの6割は虐待を受けた経験から心身に深い傷を負っており、何らかの障害のある子どもの割合も増えていて、専門性が求められています。子どもへの対応が年々難しくなっているのに加え、近年は退所後のアフターケアも義務づけられるなど、仕事は増える一方です。激務に疲れ数年で退職する職員が後を絶たず、現場は常に人手不足の状況です。

 

同じ児童養護施設でありながら、職員の勤務環境、すなわち子どもの養育環境に格差が生じていることも問題です。子どもは自分の入所する施設を選ぶことができません。どの施設に措置されても大きな不公平が生じないような方策が望まれます。

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