
ニュース・活動報告
ブリッジフォースマイル(B4S)では、さまざまな事情で親を頼れない子ども・若者たちが気軽に立ち寄れる居場所として、「B4S PORT」を全国で展開しています。B4S PORTでは、B4S事務局の職員と社会人ボランティア(サポーター)で構成するスタッフが、日々訪れる若者たち(ユース)を迎えています。
今回は、東京・浅草橋にあるB4S PORTあきばで、開設当初から関わっているスタッフによる座談会を開催しました。前編は、居場所スタッフになった動機や活動して良かったこと、心境の変化などをめぐる対話をお届けします。

左から、でんひょん(サポーター5年目)・りゅうりゅう(B4S職員)・すむー(サポーター5年目)
■親を頼れない若者たちの力になりたい
――皆さんが居場所スタッフをやろうと思ったきっかけや理由を教えてください。
りゅうりゅう(B4S職員):僕はB4Sに転職する時、居場所スタッフの採用枠に自ら応募しました。理由は自分の人生のルーツに関わっていて、自分自身が親子関係に葛藤がありました。幼少期から親の言うことが絶対、親が敷いたレールに乗っていくということに違和感があり、一方で、そこから逃れられない自分もいて、社会人になっても最初の職場までは、親が喜ぶような人生を歩んできました。でも、それは自分にとっては苦しいことでした。
そうした経験から、親子関係を対等なものにしていきたいという思いが強く、社会的養護を経験した子どもたちと自分に通じる部分を感じ、彼らの支援をしているB4Sに入りました。
居場所スタッフを選んだのは、利用者と中長期的に関われることが大きかったです。当時、自分でコーチングも実施していた時期で、個別支援で緊急時に対応するよりも、相手と話をしながら中長期的に関わる方が、自分の力を発揮できるのではないかと思いました。
でんひょん(サポーター5年目):私は、ボランティアを始めようと思ったとき、巣立ち後の若者の支援に関心を持ちました。児童養護施設について調べる中で、施設にいる間は公的なサポートが増えてきている一方、施設を出るとサポートが減って、経済的・精神的に大変な状況になる若者がいることを知り、何かできたらいいなと思いました。
B4Sは、プログラムが明確で、ボランティアが何をするかも分かりやすく、研修もある。それで参加を決めて、巣立ちプロジェクトや自立ナビで楽しさ、気づきなどを得ながら活動していましたが、もう少し退所後の若者をサポートする何かができたらと思っていました。その頃ちょうどB4S PORTあきばの立ち上げの話があり、タイミングや自宅からの距離を考えてもできそうだったので、「これはめぐり合わせだ」と感じてやってみようと思いました。
すむー(サポーター5年目):私は事務局から声をかけてもらったことがきっかけです。B4Sのメインのプロジェクトは高校生までが対象なので、それまでの子どもたちと接する機会は多いのですが、退所後のユースと関わる機会はそれほど多くありませんでした。
一方で、当時、家に帰れないユースが世の中にたくさんいるというニュースが気になっていて、そういう人たちとどう関われるのだろうと思っていました。そんなタイミングでスタッフ募集の話があり、居場所ならユースと関わることができるのではないか、居場所に来る子たちが悩みや生きづらさを抱えていたら、彼らに対し自分も何かできることがあるかもしれない、そんな思いで参加しました。
スタッフもサポーターも受け身の人はいない印象です。月例ミーティングで、前月の振り返りを共有したり、サポーター同士で居場所への関わり方について意見交換したりしていますが、なかなかない機会だと思います。
でんひょん: 月例ミーティングは、シフトに入った時に感じたこととは異なる視点の話も聞けるので、プラスアルファで得られるものがあり、前向きな気持ちになりますね。
りゅうりゅう: 事務局側としても月例ミーティングはありがたいです。居場所運営は事務局が主導しますが、どうしてもNPO目線、福祉目線に寄りがちな面があります。ミーティングを通じて、一般社会で仕事をしている人から意見をもらうことは、社会との接続という居場所のポイントを考えても結構大事な気がします。

B4S PORTあきばのInstagram(https://www.instagram.com/b4s.portakiba/)
■若者の居場所は、自分にとっての居場所でもある
――居場所スタッフをやってみて、よかったと思うことを教えてください。
でんひょん: 居場所に来るユース、スタッフ、サポーターとの接点を通して、新しい世界が広がりました。若者の福祉についての知識や人との接し方を学んだり、今どきの歌や映画、本に触れたり、これまで自分がいた環境では出会わなかった人や物、出来事に出会えます。最初は「お役に立ちたい」という思いでしたが、今では自分自身が思いがけずいい機会をもらっていると感じます。人と話したり、一緒にご飯をつくったり、お皿を洗ったり、居場所での時間が生活の一部になり、月2回ほどここで過ごすことが楽しみやリフレッシュにもなっています。気づけば、ここは自分にとっての「居場所」にもなりました。
参加当初は、ユースにとって自分が必要とされるのか不安でした。でも、ふたを開けてみれば、話をしてくれるユースはたくさんいて、次に会ったときに前回の話の続きをしてくれる人もいます。ですから今は、ユースたちが私と会話する中で、話したい話ができて、笑ったり考えたりしてくれているだろうと感じるし、たぶん役に立てているだろうと思うことにしています。専門知識が必要なことは、経験豊富な事務局スタッフ、心理士さん、弁護士さんなど専門家に対応していただける体制もあるので、自分はあれこれ考えすぎず、今までのまま過ごせたらと思っています。
すむー: 私も最初は、「自分ができる範囲で若者を支援しなければ」という気持ちが強かったと思います。でも、2年半ほど関わる中で、今はサポートする人・される人というより、一緒にこの場所にいる仲間という感覚の方が強くなりました。
巣立ちプロジェクトは支援の方法がはっきりしていて、サポーターに求められていることをやっている感がありますが、ここではそこまでサポーター然としていなくていい。B4S PORTあきばの存在自体が私にとってとても自然で、生活の一部のようになっています。友達から「よくボランティアを続けられるね」と言われますが、自分ではあまりボランティアをしている感覚がありません。さまざまなユースと一緒に過ごすこと自体が面白く、ここに来ることが楽しみになっています。
でんひょん: 長く関わることで、ユースたちの変化を見ることができるのも興味深いです。生活が整い仕事が忙しくなってあまり姿を見かけなくなる人もいれば、なかなか心身のコンディションを保てない人もいます。それでも、たまに来てくれると「つながろうとしてくれているんだな」と感じます。そうした変化を見られることが、励みでもあり、うれしさでもあります。
りゅうりゅう: 僕は、居場所に関わって丸6年経ちますが、思うことは大きく二つあります。一つは、自分は、立ち上がる、挑戦する若者の姿を見ることが好きなんだな、ということです。親を頼れない環境で育ってきたことはそれなりのハンディキャップですし、加えて障がいなど、別の困難を抱えている人もいます。それでも、自分なりにもがきながら前に進もうとする姿を見ると、心を揺さぶられるし、応援したくなります。
例えば、長く就労していなかった人が仕事を始めることは、社会的には小さなことに見えても、その人にとっては相当な挑戦です。そうした挑戦に、微力ながら関われることは、やはり嬉しく思います。
あともう一つ、最近では障がいとの関わりがかなりのウェイトを占めています。障がいに関わる仕事に携わるとは思わずに入職しましたが、特性を持ちつつ、親を頼れない若者がどう自分らしく生きていくのかということは、とても大事な問いだと思っています。
■見えにくい困難への気づき
――サポーターの方も、障がいに対する受け止め方で変わったことなどはありますか。
でんひょん: ここに来るようになって、かつて同じ職場で働いていた人のことを思い出しました。なんとなく独特だなという印象を持っていましたが、その人が3カ月ほどで退職することになった時、自分は発達障がいを抱えているのに、職場にそれを伝えていないと医師に話したら怒られた、すみませんでした、と言って辞めていったのです。当時はそうした特性を持つ人たちと日常で出会う機会はほとんどないと思っていたのですが、ここに来て、存在は見えにくいけれど実は結構身近にいるんだ、と意識するようになりました。最初は戸惑いもありましたが、今は彼らと距離を取るのではなく、一緒に過ごす在り方があるのではないかな、と考えています。
すむー: 私は、幼少期から目に見えて分かる障がいのある人と接する機会が多かったので、特に戸惑いはありませんでした。ただ、ぱっと見で分からない人たちが結構いらっしゃるんだということは、ここで改めて知りました。最初は接し方が難しくて、どこまでフランクに話していいのかなとか、随分考えましたし、日々試行錯誤しています。でも、いろいろな人に出会えて面白いなと思っていますし、だからこそ、居場所のスタッフを続けているのかもしれません。
りゅうりゅう: そういう試行錯誤を楽しめるかどうかは、サポーターの方には大事なスタンス(姿勢)ですね。人それぞれにいろいろな特性があり、その現れ方や程度もさまざまです。そうした違いを前提に、相手との関わり方を考えてもらえたらと思います。
後半は、ユースへの想いなどをお届けします。
聞き手:なっきー(ライター、「B4S PORTあきば」サポーターも兼任)

当事者たち向けに発信している「相談支援ページ」(https://www.b4s.jp/care/)。ここから居場所につながる虐待サバイバーも多い。
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