ニュース・活動報告
開催日時・場所:2019/12/8日
参加者数:高校生 18人/ボランティア16人
講師:ありぽん
児童養護施設を来年春に退所予定の高校生たちを対象とした『巣立ちセミナー』が、早くも第5回を迎えました。
今回のテーマは金銭管理。
初回のセミナーで、多くの高校生が退所後の不安として挙げていた項目です。
春からの新生活をスムーズに進めていくために、どんな目的でどれぐらいお金が必要なのか、予期しない出費を抑えるにはどうすればよいのかなど、お金の使い方に関する心構えを学んでいきます。
もうすぐクリスマスということで、サポーターは赤や緑の服をまとい、会場もクリスマス風に飾りつけ。講師のありぽんの元気な掛け声でセミナーが始まりました。
◆お金、税金、社会保障の基礎知識
まずは自己紹介を兼ねて、日頃「お金で工夫していること」を話し合います。
高校生からは早速「封筒貯金!」「収入の半分は手をつけない」といった意見が出てきました。
続いて、給与明細の見方や税金、社会保障の役割などをざっくり学んでいきます。
高校生も大人も何となく知っているけれど、詳しくは知らないことがいろいろ。
講師の解説を、その話題に詳しいサポーターが補足し、皆で理解を深めていきます。
◆思わぬ出費に備えよう ~ ブリッジ学園物語
次は、ケースワーク「ブリッジ学園物語」。
児童養護施設ブリッジ学園を退所後、フリーターになったA君と、A君の相談相手“しっかり先生”とのやり取りを通じて、社会保険の役割や借金の怖さを学びます。
ありぽんのまわすマイクに合わせて、一言ずつA君の台詞を読んでいく高校生たち。
比較的落ち着いた雰囲気で淡々と読んでいましたが、ケガをきっかけにお金に困ったA君がヤミ金の広告を見つけて「こ、これだ~!」と言う場面で感情がこもり、笑いが起きました。
読み終えた後の話し合いでは、高校生から「そもそもなぜ保険証を持っていなかったのか」「医療費に困った時点で人に相談すべきだった」「貯金しておけばよかった」などの意見が出てきます。
高額療養費制度を利用したことがあるサポーターからは、手続きをスムーズに進めるコツの紹介もあり、皆で、病気などへの備えや困ったら相談することの重要性を確認しました。
その後改めて、正社員、フリーターといった立場別に、病気やケガ、出産、倒産などの場面で社会保険からもらえるお金を金銭管理シートに記入していきます。
正社員とフリーターのシートを見比べながら、「思った以上にもらえる金額が違いますね。やっぱり正社員がいいです…」とつぶやく高校生も。
社会保険の意義と種類の違いを実感した様子でした。
◆クリスマス・ランチ
今回は、ランチもクリスマス風で豪華版!
色鮮やかなオードブル、お寿司、ケーキが並びました。
…が、それぞれの取り皿を見ると、意外と控えめに盛り付けている高校生たち。
いつもと違って大皿から取り分ける形式だったため、全員に行き渡るように気遣ってくれたようです。
「遠慮しないで、もっと取っていいよ!」とサポーターに促され、照れくさそうな優しい笑顔を浮かべる姿が印象的でした。
◆目指せ、やりくり上手! ~ ミッション・ゲーム
午後の部では、クレジットカードの注意点やお金がない時の遊び方、節約術について話し合った後、月々のやりくりを疑似体験する「ミッション・ゲーム」のワークに進みました。
「貯金」「食事」「娯楽」といった支出場面ごとに、「外食グルメ派」「そこそこ自炊派」など、自分はこうしたい(こうするだろう)と思うカードを選び、カードに書かれた金額を手元のシートに書き込んでいきます。
そんなに贅沢したつもりはないのに早々に予算オーバーし、「赤字過ぎてやる気が出ない…」と嘆く声もちらほら。実際、サポーターも含めて参加者の多くが赤字になってしまいました。
しかし、なかには3万円以上黒字になる高校生も!
しっかり貯金していたため、思わぬ臨時出費を回避できたことが成功につながったようです。
そこで、高校生たちは改めて支出のイメージを見直します。赤字の人は原因を振り返り、どうやったら予算の枠内で出費や貯金をうまく配分できるか、試行錯誤していました。
最後はこれまでの総復習で、仕事を辞めてから次の仕事が見つかるまでに必要な費用を見積もります
仕事を辞めてしまうと、収入はゼロになる一方で、日常生活に必要なお金は減りません。
高校生も大人も、次に進むには備えが必要なことを実感するワークでした。
◆社会人トーク
締めくくりの社会人の話はミキティから。
私生活や仕事での体験を踏まえて、「大きな出費は、本当に自分にとって必要かどうか、よく考えて」「行政などからよく分からない手紙が来たら、無視しないで周りに相談して」と明確なメッセージを送ってくれました。
◆1日の振り返り
前回の不動産の話と合わせ、新生活に必要なお金について一通り学んだ高校生たち。
振り返りの時間には、「計画性を持ってお金を使おうと思った」「一人暮らしの出費が予想より多かった。風邪をひかないように、健康に気をつけたい」「国民健康保険は絶対に入ろうと思った」などの言葉が聞かれました。
難しい話もありましたが、それぞれに学び取っている様子が伝わってきて、頼もしく感じました。
『巣立ちセミナー』は残すところあと1回。
進路が決まったという嬉しい報告が相次ぐ一方で、採用面接や入試を間近に控えて忙しい中で参加してくれている高校生もいます。
全員の進路が無事に決まるよう祈りつつ、巣立ちの日を晴れやかに迎えられるよう、最後まで一緒に学んでいきたいと思いました。
(サポーター:なっきー)
-
2024.09.22巣立ち支援「前向きさ生み出せる止まり木に」 親を頼れない子どもや若者の巣立ち 居場所づくりで寄り添う
-
2024.09.22巣立ち支援安心・安全な子ども・若者の居場所とは? “つながり”が防ぐ子ども・若者の孤立
-
2024.07.15巣立ち支援【OPEN】親を頼れない若者の新しい居場所『B4S PORT さっぽろ』@札幌