
ニュース・活動報告

親を頼れずに育った当事者たちの声をスピーチとして発信しているコエール。
発信は、【コエールチャンネル】としてYouTubeで公開しています。さらに、当事者たちが、企業・学校・地域に出向き、参加者と共に考えるコエールワークショップでは、行動する仲間を増やすことを目的に活動しています。
7月17日に、関西福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科1年生の授業「当事者と福祉」に登壇した、しまのレポートをお届けします。

しま プロフィール/ 幼いころ「しつけ」と称して当時の母親のパートナーから兄と共に暴力を受ける。虐待のおそれから、小中学生の頃、児童養護施設で生活を送る。看護師やシングルマザー・貧困家庭・DV家庭の子ども預かる託児施設でボランティア活動などを経験し。現在は看護師として、訪問看護を行っている。
虐待は誰にとっても、他人事ではない
授業の中で、コエールワークショップを開催していただくにあたり、事前に担当の森先生と打ち合わせを行いました。伝えたいことはたくさんありましたが、その中で絞り伝えたいことをひとつにしました。森先生の授業に対する思いをお伺いする中で、私も同じ思いだった「他人事ではない、誰でも加害者になる」ということ伝える時間にしたい、と授業に臨みました。
学生たちは1週間前の授業内で、私が発表したスピーチ【シングルマザー家庭のこども】を鑑賞してくれていました。スピーチには入りきらなかった幼い頃の生活や虐待の様子、虐待を受けている反動から問題児として学校で迷惑をかけていたことなど、私の経験の詳細を話すことから授業はスタート。6人程度のグループに分かれた学生たちはメモを取ったり、真剣に耳を傾けてくれている様子で、子どもの頃の私が母や兄に宛てた手紙を読む部分では、涙ぐむ学生の姿もありました。


ワークショップ当日のスライドより
ワークショップでは、学生たちに、自分ごととして考えてもらえるように「年長さんの時の夢はなんでしたか?」「暴力のある生活の中にあった唯一の幸せな時間はなんだったでしょうか?」など質問を投げかけ、考えてもらう時間をつくりました。「暴力のある生活の中にあった唯一の幸せな時間」に対する、ほとんどの学生の答えは、「母親と過ごす時間」でした。実際、当時の私の生活では、母が早く仕事が終わる日には、「〇時に〇〇駅に待ってるよ」という置き手紙が机の上にあり、学校から帰って、その手紙を見つけた時はすごく嬉しく幸せな時間でした。
授業後の学生アンケートより
【シングルの子育て・適切とは言えない子育て(環境)について、考えたこと・感じたこと】
「周りの環境が大切だと感じた。シングルで子育てしている人は余裕がなかったり、周りを頼ることができなかったりすることがわかった。
だからこそ、周りの人が気にかけることが大切なんじゃないかと感じた。」
「シングルの子育ては、経済的にも精神的にも負担が大きく、支援がないと孤立しやすいと感じた。
親が頑張っていても、周囲の理解や制度が整っていないと、安心できる環境ではないと思った。」
【しまの生い立ちを知った感想】
「産んだ親として有り得ない、責任を持ってほしい。」
「本当に苦しくなった。1番信頼しているであろう母親に見捨てられたも同然のことを言われて辛いと感じた。」
「お母さんにとって彼氏の存在が、私が思っていたよりも強いものだったんだなと思った。」
「今でもお母さんとは仲良いのか?恨んでいないのか?」
「施設へ入るとなった時は、どんな気持ちだったのかを知りたい。」
授業の最後に、ダイレクトに素直な感想が聞けたことは、私にとっても大きな収穫でした。
発信する側として、参加者がどう感じてどこに興味を持ち、何を知りたいのかを掴むことができ、想像以上に深い時間になったと思います。学生から、「この【当事者と福祉】の授業の中で、1番興味を持てた内容でした」と感想をいただき、登壇させていただけたことをとても有難く思っています。
対面で伝えることができたからこそ、より多くのものをお伝えできました。
また、スピーチを動画見た直後の感想では「親が子を見捨てるなんて有り得ない」という感想が多かったのですが、ワークショップの後では、そういった感想はなく「母親だけの問題ではなく周囲の環境問題ではないか」「シングルになりたくてなってる訳じゃないのでシングルに人たちに対してもっと支援をするべきだと感じました。」と、学生たちの視点が変わったのことを感じられた感想がほとんどでした。
子どもは虐待に気づけないから、社会全体で考えていきたい
授業が終わると、1人の学生が私のもとに駆け寄ってきて「実は、私の家庭でも・・・」と当時は気が付かなかったけれども、成長していくにつれて自分の幼少期の体験が一種の虐待だったかもしれないことに気づいた、という話をしてくれました。
私にも経験がありますが、この“殴られる生活”が当たり前ではない、されてはいけないことをされているということに、子どもの頃は気が付きませんでした。保護されてから初めて知ったのです。保護される前は、殴られる環境から逃げるように友達のところへ遊びに行ったり、祖母の家へ行ったりして過ごしていました。当時は殴られることに関して誰にどう話したら良いかわからない、話していいことなのかも分からない、ということがありましたが、今でもこういった子どもや若者は多くいるのではないかなと思いました。
なぜ虐待が起きてしまうのか、きっかけや問題を共に考えることで「新たな加害者を作らない」予防にも、繋がります。虐待を起こすきっかけとして「余裕がなくなった」タイミングがあげられますが、「殴ってしまうかもしれない」という虐待への意識や知識が少しでもあれば、自分がこの先の人生で、気持ちや金銭的に余裕がなくなった時、事前に頼れる場所や相談する場所があることを知っているだけで、虐待を防げる可能性が高まります。

自分事として考えるワークショップは、参加者に変化をもたらします
虐待の後遺症
虐待は当時の話では終わらず、その後大人になったあとでも後遺症が残る大きな問題です。成人後に「親密な人間関係の構築が難しい」「虐待の連鎖(自分が親になった時に無意識に同じ行動をしてしまう)」「慢性的な精神疾患や社会的孤立」「経済的困難」などの影響があり、暴力を受けたその時だけでは終わらないのが、「虐待」の怖さです。私に虐待をしていた母の彼も「虐待」を受けて育ち、「虐待の連鎖」を起こしていました。多くの人には理解できないことかもしれませんが、彼にとっては、あれがあたり前の教育で、力によって押さえ込むことが正しい教育だと信じていたのではないかと、今になっては思います。暴力を受けた私自身もまた、もし親になった時同じように暴力を振るわないか、「虐待の連鎖」を起こさないか…という不安はすごくあります。だからこそ、虐待はその時だけで終わる問題ではないということを私自身も常に意識し、誰もが当たり前に知っている社会にしていかなければならないと思っています。

高校卒業後、看護学校に入学し、看護師免許を取得。現在は、訪問看護師として飛び回っている。

2024年には、念願の語学留学のためにカナダへ。自分の力で次々と夢を叶えているしま。
コエールワークショップは、虐待や貧困等で親を頼れずに育った当事者の声をリアルに聞くことで、社会の一員として自分には何ができるだろうか、と考えるきっかけを与えます。「虐待という言葉を知っている」「虐待を見たら通報する」というような知識から一歩進んで、実際に目の当たりにした時にどう行動したらよいのか、という具体的なことを自分事として考える時間となります。
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企業で

社内の研修などに活用されています。
・社会的養護についてさらに深く知りたい
・会社の社会貢献活動にもっと従業員を巻き込みたい
・従業員のハートに火をつけたい
・自社にできることを当事者と考えたい
地域で

地域の講演会として開催されています。
・社会的養護についてさらに深く知りたい
・市民に学べる機会を提供したい
・児童虐待防止月間を広めたい
・地域全体で虐待児童を守っていきたい
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