ニュース・活動報告

親を頼れない若者もボランティアも、読書やものづくりを通して心を通わせる 「孤立」を防ぐ新しい取り組み

ブリッジフォースマイル(B4S)では、虐待などで親を頼れず児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもたちや、そこから巣立っていった若者たちに寄り添った支援を20年以上行っています。
そんな私たちが、社会へ巣立った若者たちに対して防ぎたいと考えているのが「孤立」です。施設で暮らしていたときのように、同じような境遇の仲間は近くにおらず、親も頼れず、理解者も身近にいなければ、次第に孤立してゆき心身に支障をきたすケースもあります。

 

<B4S PORT あきば のようす>

 

寂しいとき、不安なときに「あそこに行けば、頼れる大人や仲間がいる」と思ってもらえるような「気軽に立ち寄れる居場所」として、B4Sでは「B4S PORT あきば」(東京都・地域生活支援事業)、「B4S PORT よこはま」(横浜市受託事業)などの居場所を、全国5カ所で運営しています。

訪れる若者たちが一息ついて明日への英気を養っていけるよう、また困難な状況の未然防止や早期対応につなげられるよう、相談支援や食事・寄付品の提供を行いながら、B4Sのスタッフや社会人ボランティアが若者たちを見守っています。

 

<2025年5月25日に行われた、読書会のようす>

 

現在、そんな居場所を活用して、親を頼れない若者やボランティア、B4Sスタッフたちが「孤立」に対して新しいアプローチをしています。

それは、本を通して心を通わせる「読書会」と、「ケアワークショップ(ものづくり)」の開催です。「ひとりの時間を愛そう」というコンセプトでさまざまな会を開催しています。ひとりの時間で行う読書やものづくりを通して得た気づきや成果を、この会でシェアすることで「自分の意見や解釈を言葉にして他の人に伝え、会話が広がったり、深まったりすることのおもしろさ」を体感したり、「人の考え方に触れることで自身の視野が広がること(=自己理解)」につなげたり、「新しい趣味の開拓」にもつながります。

 

<読書会のようす>

 

「読書会」では、孤独やケアなどのテーマに沿った本をB4Sスタッフが選出し、それを読んできた若者やボランティアが本の感想をシェアしたり、感じたことを付箋に書き出しながら対話を重ねます。また、会のはじめにはグラウンドルールを共有し、安心した環境で自由に話せる場を作ることを大事にしています。

 

<実際使用された付箋>

 

この会の大きな特徴は、若者たちとボランティア、B4Sスタッフが、年齢・所属など関係なく本を通してフラットな関係になれる点です。「支援を受ける側」「支援をする側」という関係ではなく、本を通すことで「読者同士」というひとつの関係になります。その中で、それぞれの背景や感じ方を共有することで、より互いの心を通わせることができるのです。

また参加者の中には本をすべて読んでいなくても、本の感想や意見を共有する空間で傾聴し、その内容から自分の意見をさらにシェアすることを楽しむ方もいます。仕事や学業以外のコミュニティで、人と関わる喜びを感じることができるのです。

 

参加者からは、
「普段はできないような哲学的なお話や、生きることについてのお話がいろんな方とできて楽しかった。みんな温かかったです」
「ひとつの本を通して、こんなにも多くの意見や解釈が出るのにびっくりしたし、自分の意見を肯定してもらえたり、意見を出してもらえたりして嬉しかったです」
「本を読まずに参加したが、皆さんの話を聞いて帰ってから本を読むのがとても楽しみになった」
「読書会を通して自分の考え方や物の見方のクセに気付くことができました」
というようなご意見をいただいております。

 

<編み物会のようす>

 

「ケアワークショップ(ものづくり)」では、講師から各ワークのやり方を教えられながらものづくりを楽しんだり、作業進捗の共有や作品を発表し合ったりします。

ワークの内容は、編み物やパッチワーク、かばんづくりなどさまざまです。例えば、編み物の会では全4回のワークで構成されており、1回目は参加費300円で毛糸とかぎ針が支給され、糸やかぎ針を正しく持つ練習からはじめます。参加者はみるみるうちに上達し、中盤にはリラックスしながら編むことができるようになりました。また、参加者同士で編み方を教えあったり、アレンジを加えたりするなど、回を重ねるごとに自由性をもって楽しんでいるようすが見受けられました。初心者でも気軽に始められ、少人数開催だからこそ手厚いサポートができるのも魅力の一つです。

 

<参加者同士でおしゃべりをしながら編み進める>

 

これらすべてのワークに共通しているのが、「手持ち無沙汰なひとりの時間を、無心で手を動かすことで得られる“精神が統一される感覚がある”趣味の時間に代えられる」点や、「作業中にコミュニケーションを楽しめる」点、「進捗報告会や完成披露会で互いの成果物を褒め合い、高め合える喜びを感じる」ことができる点です。これらを通してひとりの時間を愛することに繋がり、さらに人との関わりを自然に持つことができるのです。
そんなワークショップ会場には、常に優しい空気が流れていました。

 

<参加者の作品>

 

参加者からは、
「この会がきっかけで、はじめて編み物をはじめました。分からないことがあったら講師へ気軽に聞けるし、最近はSNSで編み物について調べて、『今度はこんなのをつくりたいな~』と考える時間が本当に楽しいです」
「新しい趣味をみつけるのって難しいけど、ワークショップを通して気軽に始められるのがいいです」
「自分の手で何かをつくることが小さな成功体験になっています。作品を褒めてもらえることで自信につながったり、こんなものをつくりたい!表現したい!と思う活力や勇気が湧いてきたと思います」
「家庭科の授業だと周りの人と出来栄えを比べてしまったけれど、ここでは上手い下手を気にすることなく自分のペースで作ることができました。自分が編み物をできるようになるとは思わなかったので、嬉しかったです」
というようなご意見をいただいております。

 

<初の試み “甘やかしカレー”>

 

2025年5月25日にDaily Practice Books(東京都・広尾)で、「甘やかし会」と題して行われた読書会・ケアワークショップ(編み物会の完成作品披露会)の最後には、日々頑張る自分を甘やかす「甘やかしカレー」を提供し、参加者でテーブルを囲みながら食べました。

長時間対話し、親睦を深めた者同士で同じ食事を囲む時間は、尊い時間となりました。

会の最後に行われたチェックアウトでは、
「日々働くことや目の前のことに追われて疲れていたけど、この会を通して『生きてる』って実感しました。これからも、こんな時間を大切にしたいですし、いろんな人にこの感覚を味わってほしいと思いました」
「いつものB4Sの居場所とは違う場所で、ゆっくり過ごすことができて新鮮でした。ここで初めて出会った人と対話をするのが楽しかったので、また参加したいです」
というようなご意見をいただいております。


引き続き、B4Sでは本を通して心を通わせる「読書会」や、ワークショップを通して趣味の開拓やものづくりの喜びを体験する「ケアワークショップ(ものづくり)」を開催いたします。

この活動を通して、新しい体験や他者と関わることで「孤立」を防ぎ、より個人個人が自分らしく生きることができる世界を目指しています。

 


 

【読書会やケアワークショップに参加希望のみなさま】
「読書会」や「ケアワークショップ(ものづくり)」は、居場所利用者規定やB4Sボランティア登録の有無関係なく、誰でも参加可能です。
参加に際し、まずは各会の見学からご案内しております。詳しくは、「B4S PORT あきば窓口メール:andyou@b4s.jp」へお問い合わせください。


【この活動を続けるため ご支援のお願い】
この活動は、活動に協賛してくださったみなさまからの募金によって運営しています。継続した活動を実現するには、みなさまのお力が不可欠です。この活動に対するご支援やお問い合わせは、以下のページで受け付けております。

▶ご寄付でのご支援はこちら
 ※「応援メッセージ」や「連絡事項」部分に、「読書会」や「ケアワークショップ」の件をご記入ください。
▶B4Sボランティアとしてのご支援はこちら


【居場所を通常利用されたいみなさま】
B4Sが運営する居場所は、児童養護施設や里親家庭などで暮らす中学生・高校生・その退所者、親を頼れない若者であれば利用が可能です。
こちらから、希望の居場所のページへ進み、「利用案内」からご申請ください。

 


 

【2025年5月25日開催「甘やかし会」企画協力】
企画:YUMEGIWA / 企画・編み物会ゲスト講師:I can’t stop knitting / 企画・甘やかしカレー:Ito Kazuma / 企画・デザイン・会場提供:Daily Practice Books

当事者のための相談・支援

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