ニュース・活動報告

退所者を支える制度

措置延長

児童福祉法による児童の定義は18歳未満であり、児童養護施設や里親家庭など社会的養護下で育った子どもたちは、原則18歳で施設などから巣立ちます。とはいえ、18歳での自立には困難が多いため、必要な場合は20歳まで施設等で暮らすことのできる「措置延長」制度が以前からあり、2011年以降はこの制度の積極的な活用を国が指導してきました。2017年以降は「社会的養護自立支援事業」として、大学などに進学した場合は22歳まで入所を延長することも可能になりました。

 

しかし、ブリッジフォースマイルの2023年度の調査によれば、その年に18歳になった子どものうち措置延長制度を適用された子どもは全体の9%。その時点で1年以上の措置延長を受けていた子どもは6%に過ぎません。また、全国の児童養護施設の4割近くが、過去5年間に1度も措置延長制度を利用したことがありませんでした。

 

ブリッジフォースマイル全国児童養護施設トラッキング調査2023

措置延長が広がらない大きな理由は、多くの施設が18歳未満の子どもでほぼ満杯に近く、18歳以上の子どもの受け入れが物理的に難しいことです。また、大学などに進学したり、就職して社会人となった子どもは、高校生以下の子どもと生活スタイルが大きく変わるため、施設全体の運営が難しくなるとして、職員が受け入れに消極的になりがちなことも背景にあるようです。

 

 

アフターケア

アフターケアとは、児童養護施設を巣立った後の子どもの相談・支援を行うもので、2006年に児童養護施設の業務の一つとして児童福祉法に明記され、2017年には退所後3年間の実施が義務づけられました。

 

アフターケアの内容は、退所後の子どもと連絡を取り合い、必要に応じて相談・支援を行うことですが、具体的に何をどこまでやるかは、施設によってバラバラです。ブリッジフォースマイルの調査によれば、2024年時点でアフターケアのための専任職員がいる施設は59.6%で、兼任が26.3%。14.0%の施設には担当職員がいません。また、担当職員に業務用スマートフォンが貸与されている施設は年々増えているものの、2024年時点で43.9%と半数以下にとどまっています。アフターケアのための経費が認められていない施設も10.8%あります。経費が認められている施設でも、退職者の飲食費が認められているのは68.9%、職員の飲食費は58.3%、退職者の食料品・生活品購入は31.1%などとなっています。退所者の相談にきめ細かく応じるためには、夜間や休日などに連絡を取り合ったり、食事をしながら話を聞いたり、とりあえずの必需品を渡したりすることが有効だと思われますが、そこまではできずにいるか、あるいは必要と思うケアを行うために自腹を切らざるを得ない職員が多くいるのです。

 

アフターケア制度があっても、施設が現況を把握できなくなってしまう退所者はいます。ブリッジフォースマイルの2024年の調査では、退所後1年で把握できなくなっている退所者は2.2%に過ぎませんが、3年後では17.0%にのぼっています。また、里親にはアフターケアは義務づけられていません。

 

児童自立生活援助事業・社会的養護自立支援拠点事業

2024年度からは、退所者を支える制度が大幅に拡充されることになりました。児童自立生活援助事業の拡充と、社会的養護自立支援拠点事業の開始です。

 

児童自立生活援助事業は、これまで自立援助ホームで行われていたもので、18歳での自立が難しい子どもを、必要な場合22歳まで施設で生活させながら自立をサポートするものでした。2024年度以降はこの事業の年齢制限が撤廃されるとともに、児童養護施設や里親家庭などでも行えるようになり、都道府県知事が必要と認めれば、年齢制限なく出身施設で暮らし続けることが可能になったのです。ただし、2024年現在、導入する児童養護施設は限られています。

 

・関連リンク

児童自立生活援助事業について詳しくはこちら

 

社会的養護自立支援拠点事業は、「親を頼れない」若者たち全般の自立支援を年齢制限なく行うまったく新しい制度で、当然ながら児童養護施設などの退所者も対象となっています。退所者を長期的に支えていくためには、施設から新制度にスムーズにつなげていく工夫が必要です。ただし、支援を行う拠点数はまだわずかですし、施設職員でも新制度について十分な情報を得られていないケースがあるようです。一日も早い拠点数の増加、情報の周知が求められています。

 

・関連リンク

社会的養護自立支援拠点事業について詳しくはこちら

 

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