
ニュース・活動報告
ミサワ流 社会支援×ビジネス
<左:認定NPO法人ブリッジフォースマイル 代表 林恵子 右:株式会社ミサワ デジタルコミュニケーション部 板垣茉由さん>
インテリアの企画・製造・販売を手掛けるミサワは2011年の株式上場を機に、社会支援活動に大きく踏み出します。その皮切りがブリッジフォースマイル(B4S)への支援でした。これまでにシェアハウス・居場所事業で計11カ所に対してトータルコーディネートや家具の寄付などを実施。B4Sの寄付仲介制度「トドクン」にも、毎年20点ほど家具を提供しています。「明日も頑張ろう」と思える空間を、社会的に立場が弱い人にまで届けたい――。社会支援とビジネスを絶妙に掛け合わせたミサワならではの取り組みを、デジタルコミュニケーション部の板垣茉由さん(広報・PR担当)に聞きました。
社会支援への道、上場を機に一歩
――B4Sへの支援が始まったきっかけは。
2011年に当社が東証マザーズ(現・東証グロース)に上場した際、これからは上場企業としての立場も備わるので社会支援活動にしっかり取り組もうという機運が社内で高まりました。ちょうどそのタイミングに、当社のunicoブランドの家具がお好きなB4Sの方から問い合わせがあり、「家具を寄付して欲しい」と要請されたと聞いています。それがきっかけで2012年から、シェアハウスや居場所の支援に取り組み始めました。
――その後13年にわたって活動が続いています。B4Sへの主な支援内容を教えてください。
実際に家具の無償提供や空間のトータルコーディネートをしていただいた、親を頼れない若者向けのシェアハウス
親を頼れない若者向けのシェアハウスや居場所に対して、家具の無償提供や空間のトータルコーディネートに取り組んできました。空間の色味のほか必要な家具や配置などをデザインして、ご提供できる家具は寄付するのがトータルコーディネートです。予算が限られる場合は、家具を寄付するだけの場合もあります。また、施設で生活する高校3年生がB4Sの独り立ちのためのプログラムを受講すると得られるポイントを使って、生活必需品を選べる寄付仲介制度「トドクン」にも、毎年20点ほどの家具を無償で提供しています。
――空間設計や寄付をする際に、特に気遣っている点は。
いろいろありますが、トータルコーディネートにおける色味は大きな要素の1つです。暖色系は明るい気持ちになるといった効果が見込めるので、人が集まりやすいリビングなどでは家具やラグ、カーテンなどに積極的に取り込んでいます。こうした設計には、当社の店舗ディスプレイ業務を統括する「VMD(ヴィジュアルマーチャンダイザー)」をアサインしています。
寄付の場合は、新生活のスタートに間に合わせることが重要です。伺った納期にお届けするため、倉庫スタッフとも緊密に連携しています。頑張って在庫を探そうとする姿勢を通して、できる限り要望に応えたいという倉庫スタッフの強い意欲を何度も感じました。
――これまでの支援活動を通じて、どのような手ごたえがありましたか。
「トドクン」にご提供いただいた家具
2023年の夏に現在の担当に就いて何度か活動に携わってきたのですが、やはり家具を提供した施設や学生の方から感謝の言葉をいただくたびに大きなやりがいを感じます。VMDや倉庫スタッフを含めて、「支援活動に携われてよかった」という気持ちは一致していますね。一方で、状況によってはご提供できる製品が乏しい場合もあり、歯がゆさを覚えることもありました。
――苦労やトラブルもあったのではないでしょうか。
トドクンの家具は新居にお送りすることが多いのですが、配送を指定された日に受け取っていただけず、倉庫に戻ってきてしまうことがありました。配送業者が受け取る方に電話をしたのですが、見慣れない番号からの着信を警戒されて連絡が取れなかったそうです。最終的には児童養護施設のスタッフに間に入っていただいて届けることができました。
以前と比べて電話をする機会は減りましたし、もしかしたら施設出身の方は見知らぬ番号からの着信により不信感を持つのかもしれないという気付きにつながりました。今では配送の際になるべく児童養護施設の方にもご連絡を入れるようにしています。通常の仕事をしているだけではわからない配慮のあり方を学びました。
社会支援の継続 企業へのメリットも重要
――長年にわたって支援活動を続けられたポイントはどこにあるのでしょう。
個人的な解釈も含みますが、受け取る側だけではなく当社にもメリットがある点は重要だと感じています。無償でご提供している品は「B品」といい、家具の機能としては問題ないものの傷がついたり、商品の入れ替えで生産を止めたりしたものが中心です。傷を補修するなどして当社のアウトレット店舗で販売しても、買い手がつかないと在庫として蓄積することになるので、定期的に処分しなければなりません。廃棄には費用がかかりますし、環境にも負荷を与えます。
そうした「B品」をご提供することで、コストの抑制やサステナビリティに配慮した取り組みにつながる点は当社にとってもメリットです。社会支援活動と企業活動が表裏になっていると言えるかもしれません。
――2024年はミサワによる社会支援活動のリリース公表が増えました。
それにはいくつかの要因があり、中でも企業によるESG(環境・社会・企業統治)関連の活動が当たり前になったことは大きいです。支援の要請を受けて対応するだけでなく、今までお付き合いのなかったNPO法人に対して、当社から家具の提供を持ちかけるなどより積極的に取り組むようになりました。
これは活動を続ける中で浮かんだ課題の解決策でもあります。「家具を寄付して欲しい」と声がかかるタイミングにご提供できる在庫がなかったり、在庫が積みあがった時に声がかからずに処分せざるをえなかったりすることが悩みの種でした。「B品」の在庫状況をにらみつつ、当社からご提供を持ち掛ける活動にも取り組むことで、廃棄ロスやコストの抑制と社会支援につなげています。
また、これまでの活動の認知が広まって支援の要請を受けることが増えたほか、広報体制が整ったことで積極的に情報発信ができるようになったことも背景にあります。
――社会が企業に求める役割は以前と比べて変化しているのでしょうか。
顧客や株主だけではなく、地域や社員を含めたあらゆるステークホルダーと信頼関係を築いていく立場が求められています。もはや商品を作って売るだけでは、企業として生き残れません。企業活動と社会支援活動を両輪に据える必要があると思います。
明日の「頑張ろう」をすべての人に
――ミサワの社会支援活動は、親を頼れない若者や一人親を対象とするケースが目立ちます。
実際に家具の無償提供や空間のトータルコーディネートをしていただいた、身近な理解者との繋がりをつくる居場所「B4S PORT あきば」
ややイメージの部分もありますが、若者や一人親は経済的にも社会的にもつらい立場に置かれることが多いように感じています。そういう方々にもunicoの家具を使っていただくことで、「自分にも地球にも心地良い、感性豊かなライフスタイルをすべての人に。」という企業理念に、少しでも近づけるのではないかという思いが根底にあります。
――経済的に余裕がないと、インテリアにまでお金を回す余裕が持てません。そういう方々にunicoを使ってもらうことで、どういう効果を期待しているのでしょう。
インテリアには嗜好品の側面があり、どうしても後回しになりがちだということはわれわれも理解しています。しかし、家で過ごす時間が充実していれば、日々の充実にもつながります。仕事でつらいことがあったり、人とうまくかかわれなかったりして悩む時も、自分の家や立ち寄る居場所の居心地がよければ、「明日も頑張ろうかな」という気持ちがわいてくるかもしれません。同時に、身の回りの空間を充実させることが、前向きな姿勢や日々の活力を生むということに気付いて欲しいという思いもあります。
――今後も社会支援活動を続けていくうえでの課題や抱負はありますか。
どちらも少なくありません。課題の中で特に大きいのは、やはりコストでしょう。トドクンの家具の寄付は関東圏に限定しているのですが、これは輸送費用が原因です。例えば配送会社の方にも活動の意義を理解していただいて、共に社会支援に取り組む動きにつなげられれば理想だと考えています。
また、当社内において現在の社会支援活動に携わる部署は限られているため、どうしても社員の自分ごとになりきっていない面があるように感じています。「こういうことをしてみたら?」という提案が社内のあちこちから挙がってくるような組織文化が形成されれば、活動にも拍車がかかるでしょう。
社内外の仲間づくりに向けて、この先も知恵を絞っていきたいです。
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