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子どもたちの未来のために 企業とNPOの協働が築く持続可能な社会

企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility=CSR)が重視される現代において、企業とNPOの協働への注目が高まっています。一方、NPOとの協働に関するノウハウやネットワークがないことから、その重要性は認識しつつも一歩を踏み出せずにいる企業もすくなくありません。

企業が事業活動を通じて売上や利益を追求しながら、社会問題の解決にも積極的に関わることでブランド価値の向上や持続的な成長を実現していくためには、どのようにNPOとの協働を進めていけばよいのでしょうか?本記事では、企業とNPOの協働のポイントや事例についてご紹介します。

 

 

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1. なぜ企業とNPOの協働が重要なのか

現代社会には、環境汚染や破壊、紛争、貧困、差別などの深刻な問題が多岐にわたって存在し、複雑さを増しています。私たちや子どもたちの未来を、そして地球を守るために、こうした社会問題を総動員して解決すべく世界中でSDGs(Sustainable Development Goals)*への取り組みが叫ばれるようになりました。

*2015年9月に国連で採択された2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットから構成される「持続可能な開発目標」

 

こうした潮流はビジネス環境においても大きな変化をもたらしています。企業はいま、単なる営利活動や慈善事業の域を超えて自社の戦略と社会問題を連動させながら、自社のみならず社会の持続的成長を見据えた積極的なアプローチを行うよう、ステークホルダーから強く求められているのです。

 

しかしながら、複雑多岐にわたる壮大な社会問題と向き合うためのノウハウやリソース、ネットワークを持ち合わせておらず、取り組みが鈍化してしまっている企業も少なくありません。そこでCSR活動に積極的に取り組む企業を中心に、自社ビジネスとの親和性が高く自社が取り組むべき社会問題に精通し広いネットワークや豊富な実績を有するNPOと協働することで、取り組みを加速させようとする動きが出てきました。

 

これまでNPOの多くが、社会問題の解決に寄与する専門的な知見やノウハウ、広いネットワークなどを持ち合わせていても、財政的理由から安定した運営や活動の継続に難航してきました。企業が経営資源や技術力などを提供することで、NPOは高い専門性を発揮しながら効果的に社会問題の解決に貢献しつづけることができるようになるでしょう。

 

「持続可能な社会の実現」という壮大なテーマを前に、企業とNPO双方の強みを活かした協働は、相乗効果を発揮しながらより大きな社会的インパクトをもたらすことを期待されているのです。

 

 

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2. 企業とNPOの協働メリット

企業とNPOが協働するメリットについて、それぞれの視点でもう少し詳しく見ていきましょう。

 

|企業視点

企業がNPOとの協働で得られる大きなメリットの一つとして、自社だけでは解決が難しい社会問題に取り組めるようになることで、ステークホルダーからの期待や要請に対応しやすくなることがあります。従業員や顧客、取引先や株主などからの信頼や評価を得ることで、社会に存在意義を強く示していくことが可能となり、環境変化が激しく不確実な時代でも中長期的なビジネス成長や価値向上を目指していけるのです。

 

また、NPOと協働し新たな知見やノウハウ、ネットワークを取り入れることで、新規ビジネスのヒントや機会、イノベーションの創出につながるケースもあります。

 

|NPO視点

NPOにとっては、企業から資金や物資、人材などの経営資源や技術力を提供してもらうことで、安定した活動を継続して行える他、活動の幅を広げることも可能となります。これまで限られたリソースでしか実現できなかった活動の量、質ともに向上させることで、社会問題の解決が加速します。

 

また、企業と協働することでNPOの社会的な認知度が向上することもあり、さらなる支援を得やすくなるといったメリットもあります。

 

私たちブリッジフォースマイル(B4S)にとっても、児童養護施設や里親家庭などから社会に巣立つ“親を頼れない子どもたち”の自立を支援する上で、企業との協働は欠かせません。ご支援いただいたご寄付や物品は、親を頼れず今の生活や将来に不安を抱える子どもたちを支えるための活動資金や子どもたちが一人暮らしをする際の生活必需品の準備などに活用しています。また、企業との協働を通じて、奨学金支援や仕事体験機会の提供など子どもたちの将来への不安を軽減しながら人生の選択肢を増やしていけるような活動も積極的に行っています。

 

企業のご担当者のみなさまのお話を伺っていると、企業理念の体現への貪欲さを感じずにはいられません。単に寄付をして“支援する側”となるのではなく、未来を担う子どもたちの可能性を広げることで自社やステークホルダーも成長しつづけられる社会づくりに貢献しているのです。

 

 

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3.企業とNPOの協働形態

企業とNPOの協働形態は実にさまざまです。ここではいくつか代表的なものをご紹介しますが、協働は大きな可能性を秘めていますので“自分たちらしい”協働のあり方を企業とNPOで模索していきましょう。

 

|寄付

もっとも代表的な協働形態の一つとして、企業からNPOへの寄付があります。NPOの多くは、会員からの会費や支援団体からの助成金、国や地方自治体からの補助金などさまざまな方法で資金調達に努めているものの、活動資金のほとんどが企業や個人からの寄付で賄われている状況です。

 

特に助成金や補助金は大変ありがたい一方で、申請要件の厳しさや手続きの煩雑さに加え限られた財源の配分を巡っての競争の激化などから獲得のハードルが上がっていたり、一度申請が通っても行政や提供団体の方針変更などで需給の継続が難しかったり、資金使途が限定されているため本当に必要な支援に充当できなかったりといった懸念もあります。NPOにとって活動に共感してくださる方からの金銭の寄付は社会問題の解決に向けた活動の維持や支援の充実のためになくてはならない存在なのです。

 

金銭の寄付には、一括寄付、継続寄付の他に、商品やサービスの売上の一部を社会問題の解決に取り組む機関や団体に寄付する「コーズマーケティング」などがありますが、物資の寄付や広告枠、会場などの場所、ITインフラなどの金銭以外の寄付を提供している事例もあり、企業の強みを活かした寄付が実現しています。

 

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|共同プロジェクト

企業とNPOが協働して特定の社会問題を解決するためのプロジェクトを立ち上げ推進する形態です。企業が資金や技術、場所等を提供しNPOが現場での実行力を発揮することでより効果的な協働が可能となります。例えば、従業員も巻き込みながら社会問題の解決に貢献していく研修やワークショップの企画・実施、エシカル商品の開発・販売など双方が利益を得ながら社会問題も解決できるようなプロジェクトをいいます。

 

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|ボランティア・プロボノ

企業の従業員が直接NPOの活動に参加し、社会貢献を行うボランティア活動も代表的な協働形態の一つです。専門的な知識やスキルがなくても参加しやすいボランティアに対し、自身の専門性を活かして無償で社会貢献活動を行うプロボノ活動も広がりを見せています。例えば、法律、会計、マーケティング、IT、デザインなどさまざまな分野で活躍するプロフェッショナルがNPOの業務を直接支援することで、NPOの運営力強化につながります。

 

大手企業の中には、ボランティアやプロボノを従業員教育の一環として導入し、その活動実績を自社のウェブサイトで発信することで企業価値の向上に努めている企業もあります。

 

 

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4.企業とNPOの協働事例

このように企業とNPOの協働にはさまざまな形態がありますが、実際にはどのような協働事例があるのでしょうか。みなさまにはぜひ自社の事業やCSR方針と親和性の高い社会問題に取り組むNPOとの協働をご検討いただければと思いますが、ここでは私たちB4Sの協働先企業の事例をいくつかご紹介させてください。

 

|ギャップジャパン株式会社 様

2015年から、B4Sの郵便物の発送や寄付品の仕訳といった事務作業、店舗でのインターンや短期アルバイトの受け入れ、商品の寄贈など多岐にわたりご支援いただいています。これらはすべて「洋服を売る以上のことをしよう」というGap様の企業理念のもと、社員のみなさまが自発的に行ってくださっています。

 

|サイボウズ株式会社 様

2017年から、「巣立ちプロジェクト」*や「振袖イベントの着付けや撮影会」などB4Sの各種プログラムの会場としてオフィスをご提供いただいています。また、不要になった本の寄付「チャリボン」に全社的に取り組んでくださり、2020年からは子どもの仕事体験の機会としてインターン受け入れにもご協力いただいています。

*「巣立ちを目前に控えた高校3年生」を対象に、半年間・全6回にわたり「一人暮らしに必要な知識・スキルについての学び」や「仲間づくりの場」を提供するセミナー

 

|日本オラクル株式会社 様

2015年に、社員のみなさまによるB4Sへの寄付企画「Oracle Charity Heart Run」を開催以降、継続して「カナエール」や「コエール」へのご寄付、「ジョブプラクティス」の実施、仕事体験と奨学金で子どもたちを応援する「キャリア支援プロジェクト」など、さまざまな形態での協働にご尽力いただいています。

 

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5.企業とNPOの協働の進め方とポイント

企業とNPOの協働はうまくいけば社会問題の解決を加速し、双方にとっても多くのメリットをもたらします。しかしながら、目的や価値観の違いから協働が思うように進まない、効果を見出せないといったケースも少なくありません。企業がNPOとの効果的な協働を実現するためにはどのようなことに気をつけていけばいいのでしょうか。

 

|目的・ゴールの明確化

まずは「なぜ協働するのか」の目的を明確にしましょう。自社の事業との親和性やCSR方針との整合はもちろん、実際に実行に移せるかの実現可能性や、いつまでにどんな成果を得られていれば関係者が納得するのかの成果も含め検討し、協働の先のゴールを見据えながら目的を設定するようにしましょう。

 

目的がないままNPOと協働しても「予算がないから」「忙しいから」「成果が見えないから」「周りから納得を得られないから」などの理由で頓挫してしまいかねません。

 

|パートナーの選定

協働を成功させるためには、目的や価値観が合致しているパートナーを選定するようにしましょう。協働により目的を達成できそうかはもちろん、目的達成に向けたプロセスを進めていく上で信頼関係が築けそうか、何か問題が発生した際には建設的な議論を通じて双方が納得できる形で解決策を導き出せそうかなどの視点もパートナー選定には欠かせません。

 

|協働内容や計画・役割の決定

寄付や共同プロジェクト、ボランティア・プロボノなどさまざまな協働形態がありますが、企業とNPO双方の目的達成のためにもっとも効果的な協働のあり方がどのようなものなのかしっかりと話し合って決めましょう。

 

協働形態やテーマが決まったら、今度は具体的な計画や役割も明確にします。もちろん途中で変更の必要が発生することもあると思いますが、軌道修正しやすいように全体像を事前にすり合わせておくことが重要です。計画や相互の役割、責任があいまいなまま協働を進めてしまうと、リソースを割いたにも関わらず思うような成果につながらなかったり、重大なトラブルを引き起こしてしまう可能性すらあります。

 

|目標設定と効果検証・改善の継続

協働の成果を可視化するため、KPI(重要業績評価指標)を設定し定期的に進捗を追いましょう。例えば、社会問題関連の指標であれば、従業員の社会貢献活動への参加率や活動時間、満足度、CSR活動への投資金額と支援者数、プロジェクト参加者数や満足度など、環境問題関連の指標であれば、環境保護活動によるCO2削減量やエネルギー消費量、廃棄物削減量などが挙げられます。

 

企業とNPOの持続可能な協働を実現するためには、定期的なミーティングやレポートなどを通じて相互にKPIの進捗を確認しながら改善を図っていくことが重要です。また、併せてパートナーシップのあり方も必要に応じて見直していくことで、より良い協働関係を築くことができます。

 

 

6.子どもたちの未来のために 企業とNPOの協働が築く持続可能な社会

企業とNPOの協働により企業の資源や技術力とNPOの専門的な知見やノウハウ、ネットワークが交わることで、一組織だけでは解決できない社会問題に対し大きな力を発揮します。

 

特に社会問題が深刻化、複雑化している昨今、教育・福祉・環境など多岐にわたる分野で企業とNPOが協力しながら中長期の視点で問題解決に取り組まなければ持続可能な社会の実現は難しいでしょう。

 

次世代を担う子どもたちが安心して健やかに成長できるような社会の実現のために、いまできることを一つずつ。企業とNPOが手を取り合い、ともに学びあい、成長しあいながら持続可能な社会の実現に向けた協働を進めていきましょう。

 

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