ニュース・活動報告

コエール登壇者の声が社会に届くその先に、期待すること ~戸塚区「人権啓発講演会」~

ブリッジフォースマイル(B4S)は2019年に親を頼れない経験をもつ当事者の声を届けるスピーチイベント「コエール」を立ち上げました。昨年から、スピーチを誰でもいつでも見ていただける「コエールチャンネル」としてYouTubeで公開しています。また、スピーチを見たり、聞いたりした方が、その先の社会作りに関心を持っていただけるよう、各方面で「コエールワークショップ」を開催しています。

 

▶「コエールが、新しくなります!①スピーチ動画収録

▶「コエールが、新しくなります!②ワークショップ企業編

▶「コエールが、新しくなります!③ワークショップ大学編

 

2025年2月26日、横浜市戸塚区役所が開催する「人権啓発講演会」(会場:男女共同参画センター横浜フォーラム)に、コエールで当事者活動をしているチャンプとみーたん、そしてB4S代表の林恵子が登壇しました。当日は約230名の参加があり、熱心に話を聞き入る多くの方で会場が埋め尽くされました。
講演会は、第1部で林の講演、第2部でみーたんとチャンプそれぞれのスピーチ、第3部で戸塚区こども家庭支援課こども家庭支援担当係長の河内様と同課こどもの権利擁護担当係長の天城様と共に5人でのトークセッション、そして最後にシンガーソングライターの川嶋あいさんによるミニライブがあり、とても充実した2時間となりました。

 

■講演「親を頼れないすべての子どもが笑顔で暮らせる社会へ~ 子どものために大人ができること ~」

   ブリッジフォースマイル代表 林 恵子

 

親を頼れないこどもたちのために、笑顔の架け橋としてNPOを立ち上げた林ですが、冒頭に、社会的養護を知ったのは「たまたま」だった(詳細は、こちらの「ブリッジ フォースマイル 設立20年になりました」をご覧ください)という話をすると、会場は少し驚いた様子でした。「たまたま」知った林がその後20年間、がむしゃらに多くの支援プログラムを企画立案、実行。思惑違いや失敗を経験しながらも、喜びや希望を持って活動している様子を語りました。
また、例えとして、肥沃な土地に植えられた種と砂漠に植えられた種、どちらのほうがよく育つのかーという問いを会場に投げ、子どもの成長は子どもの頑張りだけでは乗り越えられない格差があること、だからこそ大人たちが頑張らなければならないことを訴えました。

 

<参加者の感想>
●子どもたちが健やかに成長できるよう、私達大人が頑張っていきたいと思いました
●大人が一緒に学び、寄り添うことの大切さを知りました。アンテナはいつも立てていこうと思います
●社会がもっと優しく思いやりを持った関係になれたらと考えさせられました

 

 

 

■児童養護施設退所者のスピーチ

 

1.みーたん「家出を選ばざるを得なかった子どもたち」

広い会場で、少し緊張気味にはじまったみーたんのスピーチは、始終温かさに包まれていました。なぜなら、みーたんの言葉の裏には、いつも誰かに対する感謝があるからです。父親の暴力から逃げるように家出を繰り返していたみーたんが、ある日、警察に保護されたことで人生が変わります。そこから支援へとつながったみーたんが、今まで色んな場面で多くの人に支えられて、ここまで生きてきたこと、そして今はアルバイトと奨学金で大学に通いながら福祉職を目指して自活していることなどを、時折自分の気持ちや願いを交えながら話してくれました。家出をしなければならなかったその子の背景を、大人たちがどうキャッチしていくのか、考えさせられる時間となりました。

 

<参加者の感想>
●自分の苦しかった体験を、社会の気づきのために講演してくれたことに感謝します。
●頑張って生きてきた姿に、こちらが励まされました。自分もできることをやっていきたいです。
●学業も就活もある中、アルバイトができなくなると生きていけなくなるというお話を聞いて、社会がサポートできることについて考えていきたいと思いました。

 

 

2.チャンプ「居所不明児童」

今年の春、自身のフィットネスジムを開業したチャンプは、堂々とした出立ちでステージに現れました。小学校1~3年間、父親と二人で車上生活をしていた経験を持つチャンプは、最近、自分が「居所不明児童」だったことを知ります。小さな頃は “これが普通なんだ”と思って生きていた、子どもは自分でおかしさに気づけない、だからこそ大人たちに、平日の昼間に公園で遊んでいる子ども、身体に傷がある子どもなど、子どもの様子に目を向け、子どもが発しているSOSに気づいて行動してほしいと言います。「知らないことや見て見ぬふりをすることは罪です」と。壮絶な経験をしながらも、全力で自分を守ってくれた父親への感謝の言葉に涙する人も多く見られました。

 

<参加者の感想>
●苦労も多かっただろうに、ご自身の努力もあり、立派に成長していてすごいと思いました。
●過去の自分と今の自分にきちんと向き合い、力強く生きている様に勇気づけられました。
●自分にもできること、すべきことがあるのではないか、と考えさせられる講演でした。

 

 

■登壇者によるトークセッション


戸塚区の虐待防止の取り組みとして、年齢に応じたリーフレットを学校等で子どもたちに直接配布していることが紹介されました。みーたんやチャンプが幼かった頃には、まだ子ども自身があまり知ることのなかった「子どもの権利」について、現在では啓発活動が行われています。もし、自分たちが小さな頃に「虐待へのSOS」や「子どもの権利」について知っていたら、どうだっただろうか?というトークセッションとなりました。
子どもの頃のみーたんは、自分が悪い子だから、父親から暴力を受けると思い込んでいたと言います。でも、もし、現在のような子どもに向けた虐待防止への取り組みに触れる機会が過去にあったならば、「”自分は悪くないのかも”と思うことができたかもしれない。そう思うことで相談しようと思えたかもしれない」と回答しました。
また、チャンプの「もっと早く、誰かにみつけてもらいたかった」という言葉は、重く会場に響きました。

通報に関しては、通報したら余計なことに巻き込まれるのではないか、通報したら子どもたちはどうなるのか、と考え通報できない人が多くいると言います。しかし通報は匿名でよく、通報者には迷惑が掛からないように配慮されています。この現状について林は「まずは子供の立場に立って通報してほしい。通報は子どもだけを助けるのではなく、その家族も助けることにつながります」と訴えました。

 

<参加者の感想>
●インターネットで色々調べられる時代だが、今回のように直接話が聞くことで、知り・考え・学ぶことがより深まりました。
●「もっと早くみつけて欲しかった」というチャンプの言葉が印象的です。
●大変な状況の子どもがたくさんいるということを知るきっかけになりました。

 

 

虐待や貧困など子どもを取り巻く社会課題を知り、自分ができることを考え行動を起こすことの大切さをお伝えしましたが、聴衆の方々の真摯な姿や、数多くの参加者アンケートから、大きな手ごたえを感じました。「行動を起こすこと」はコエールが開始当初から掲げている目標です。コエールは今後も当事者の声で社会を変え、子どもたちを笑顔にしていきたいと思います。
このような機会を設けてくださった戸塚区役所の皆さまに心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

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