ニュース・活動報告

退所者支援の現場から〈12〉施設退所者への公的支援

2004年の児童福祉法改正により退所後支援が施設の役割となってから長らく、退所後支援は施設職員が業務外の時間を使い、かかる費用も施設や個人が自腹を切ることが当たり前でした。ある施設長がアパートの連帯保証人として肩代わりしたお金は、400万円を超えると聞きました。そんな退所後支援ですが、着実に前進しています。

 

ひとつは、保証人問題を解決するため2007年に始まった「身元保証人確保対策事業」です。就職やアパートの賃貸契約などで施設長が保証人となって損害を被った場合、その費用が賄われる保険制度です。これにより、施設長が安心して退所者のために保証人になれるようになりました。
ただし、利用できるのは施設との関係が良好な退所者に限られてしまうといわれます。保証金が下りるには定期的に退所者をフォローしていたことが条件になっているからです。
また、新規で利用できるのは施設退所から2年未満の人です。そのため、例えば、退所後会社の社員寮などで生活していた人が、2年後以降に新たに自分名義でアパートを借りるため保証人が必要となった場合には、この制度は使えません。

 

ふたつめは、2017年に始まった「自立支援資金貸付事業」です。進学者には生活費5万円と家賃相当額(東京23区で単身世帯の場合の上限53,700円)が卒業までの期間、就労者には家賃相当額が2年まで、無利子で借りられ、5年間の就労継続により返済が免除になる制度です。
これにより、進学のハードルが大きく下がりました。しかし、学校を中退してしまうと返済をしなければならないため、借金を抱えるリスクを考慮し、利用を勧めない職員もいます。

 

他にも、各都道府県独自で設定している制度は着実に増えています。ただし、それぞれ利用の条件が細かく設定され、いざ利用しようと思っても条件に合わず断られることもあります。利用できる制度や取り組みについて研修など知識を得る機会が少ないことも、職員の悩みとなっています。

 

(事務局スタッフL)

 

児童養護施設退所者の支援制度の利用状況
(全国児童養護施設調査2018:B4S実施)

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