ニュース・活動報告

元施設職員、アフターケアの担い手になってみた

某児童養護施設で施設職員として働いていた私。ブリッジフォースマイル(以下、B4S)を初めて知ったのは、職員になって一年目の冬、高校3年生の児童が退所を前に、児童相談所のケースワーカー(児童福祉司)と面談をしていたときのことだった。福祉司は最後に、「アフターケアをやっている団体があって。〇〇さんなら合うんじゃないかなと思う。良かったら」とおもむろにチラシを取り出して説明してくれた。子どもはチラシをじっと見つめていたが、職員一年目の私にとって『NPO?児相と施設以外に子どもたちを支援する団体がある?アフターケア?』、疑問符が浮かんだものの、「リービングケア(施設退所前の準備に関する支援)」に精一杯だったのを今でも覚えている。

 

そんな私が、児童養護施設と母子生活支援施設での職員を経て2020年5月、コロナ禍の真っ最中にB4Sへ入職した。「施設コミュニケーションチーム」に所属し、都内を中心に児童養護施設等の職員の方たちへ自立に向けたプログラムのご案内や、セミナーの企画・運営を中心に施設との窓口業務に携わっている。

 

入職して早々、B4Sの働き方やコミュニケーションツールの活用に驚いた。社会情勢を受けいち早くオンライン化が進められていた。基本的に在宅中心で会議は全てオンライン。SNS、Zoom、kintone、Salesforce、Messengerなど、さまざまなツールを駆使していた。職員時代はせいぜい記録やメール、ときどき調べ物をする程度。そもそも、一般的な福祉施設では個人情報漏洩に対するリスク管理が徹底されていて、事務所からPCを持ち出すことや子どもにPCを操作させることへの危機意識がものすごく強い。普段、一定の職員しか日常的にPCに触れることがない現場の職員にとって、コロナ禍のオンライン化というのは大変な作業だったに違いないと感じている。

 

B4S入職後は、試行錯誤しつつ、実地開催していたセミナーのオンライン化を進めていった。直接対面の方が子どもたちにとっては温度感が伝わるし、非言語コミュニケーションも取りやすい、実際に体験する方が価値がある、などオンラインに対して懐疑的な意見があったのも事実だった。しかし、実際にやってみると「意外と成立するものだな」ということが分かった。例えば、園内感染を防ぐために子どもたちが個室から参加する工夫が功を奏し、特性のある子どもが落ち着いて参加できたり、普段PCを使いなれない中学生がPCに触れたことで楽しめたり、遠方にいる施設が参加できたりなど、今までにはない新しい発見を垣間見ることができている。

 

とあるオンラインセミナーでは「引きこもりで他児との関わりが無い子を個室から参加させたい」との話があった。そんな状態の子が参加するだけでも十分なのだが、講師が質問を投げかけると自分なりに考えた意見をきちんと発言していて、同席していた職員さんもまさかこんなに話せるとは…と喜んでいた。そこから半年後「引きこもりがちだった子がセミナーに参加したのをきっかけに前向きな進路選択ができるようになった」との報告を受けた。それはきっと本人にとっても職員にとっても将来に向けた大きな前進だったのではないかと想像すると、なんだかとても胸が熱くなった。

 

子どもと直接的な支援や関わりをするのは、言うまでもなく施設職員や児相職員が担っている。ただ、輪の中心に子どもを据えたとき、最初の層に施設や児相がいて、そこを取り巻く資源あるいは環境の一つとしてB4Sが存在していると考えている。単発セミナーのように関わりは点にすぎないかもしれないが、何かをきっかけに点と点が繋がり、支援の輪が広がり、施設や制度だけでは担いきれないことを我々がサポートできればと思うのだ。もちろん、子どもたちの生活環境や人生のステージが変化するにつれ、必要な関わりや支援も異なっていくだろう。

 

立場や役割が変わっても、子どもや退所者の幸せを願う気持ちは皆が共通だと信じて、今日も今日とて子ども支援に携わっていきたいと思うのである。

施設コミュニケーションチーム あめり
元児童養護施設職員。
ブリッジフォースマイルに入ってみて感じたことを徒然なるままに綴ってみました。

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