退所者支援の現場から

【連載 10】ちいさな一歩

「初めてバイトが3ヵ月続いたよ」と、ある退所者が言いました。
皆さんはこの言葉を聞いてどのように返すでしょうか。

「え? 今まで3ヵ月続いたことなかったの?」
「バイトで3ヵ月続くのがやっとのようじゃ正社員への道はまだまだ遠いよね」
「そうなんだ?すごいじゃん!(普通は3ヵ月くらい続けるのが当たり前だけどね)」

もちろん関係性によって湧いてくる言葉も感情も異なるとは思いますが、この退所者の言葉を心から喜べる大人がどれだけいるでしょうか。

退所後支援の難しさのひとつに、『その人なりのちいさな一歩』に気づけるかどうか、があると私は考えています。

「今、自分がどうしたいか」をはじめて言えた人。
遅刻や無断欠勤をしなくなった人。
役所にひとりで行って手続きを終えることができた人。
「死にたい」と言わなくなった人。

多くの人にとっては当たり前のことかもしれませんが、本人たちにとっては、不安や恐怖との闘いの成果であったり、変わろうとする努力の表れだったりします。
長く続く関係、特に数年以上関わっているなかでは見過ごしてしまいそうな変化であることも多いです。似たようなことを繰り返してストレスを溜めたり投げやりになっている様子に触れていると、話を聞いているほうとしてはネガティブな点にばかり意識も向きがちになります。しかし、そんなときに『ちいさな一歩』を見つけることができると、素直に「すごいな」と思うことができます。

きっと私たちが想像している以上に、迷ったり苦しんだり、やる気になったり、諦めたり、怖かったり、逃げたかったりする日々の生活があるのかもしれません。だからこそ、傍から見ると『ちいさな一歩』にとらえられてしまうかもしれないその一歩は、本人にとって『おおきな一歩』なんだと思います。

彼らがその一歩を踏み出す道は、私たち大人で構成されている社会のなかにあります。
「役所の人が丁寧に教えてくれた」
「バイト先の店長が自分の様子に気づいて話を聴いてくれた」
「不動産屋が事情を考慮して物件を探してくれた」
こういうことで、社会への不安がちょっと減ったり、知らない大人が怖くなくなったり、「生きていけるかも」と思えたりするのではないでしょうか。

 

(事務局スタッフJ)


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