退所者支援の現場から

【連載 05】社会の中での意外な生きづらさ

B4Sのプロジェクトを通じ多くの退所者と出会いました。彼らと接していると、虐待などの経験がなぜ社会に出てからも生きづらさにつながってしまうのかを目の当たりにすることがあります。

一見するとどこにでもいるごく普通の女の子。彼女は行動力もコミュニケーション力もあり、新しいコミュニティに入り初対面の人たちと仲良くなるのも上手です。しかし、しばらく経つとそのコミュニティの中で傷つき、居づらさを感じ去っていく、という事を繰り返します。
誰かがいじめるわけでも、冷たくされたわけでもありません。
彼女が傷つき、どうして良いかわからなくなってしまうのは、人々の悪気のない何気ない質問です。

「地元はどこ? 私は○○だよ!」
「ひとり暮らし? じゃあ、お正月はご両親のところに帰るのかな?」
「親御さんはどこの出身?」

こんなたわいのないやり取りは、会話の糸口として当たり前のように交わされます。ですが、退所者の中にはこの会話をどう処理してよいか戸惑います。そして、こう聞かれたことで自分が置かれた環境と世の中の‘普通’との違いをまざまざと感じてしまう子も少なくありません。
こんな会話をやり過ごせないがゆえに、職場に行きづらくなったり、過去の出来事を思い出し精神的に不安定になったりしてしまう場合もあります。

児童養護施設に来る子ども達の約8割に親がいます。
虐待や貧困、親の精神疾患などで子ども達は施設に入ります。施設と親元を一定期間で行き来しながら暮らしたり、施設をいくつか変わったりする場合もあります。

複雑な環境で育った退所者にとって、先ほどのような質問に対して会話を成立させるのは、今の社会では難しいのです。いつの日か、家族の形の多様性が当たり前になったら、
「親はいるけど、私は施設で育ったからあまり親元には帰らないんだ」
と何のためらいもなく答えられるのかもしれません。

(ボランティアE)


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