小中学生向けキャリアアップセミナー~自分の興味や得意を知ろう~

開催日時:2018年12月2日(日) 14:00~16:30
場所:滋賀県大津市勤労福祉センター 大ホール
対象:滋賀県内社会的養護下の小4生~中1生(32名)
内容:キャリア、タワー作成ゲーム
講師:あーみー

 

12月、琵琶湖のほとりの滋賀県大津で、小中学生を対象にした出張セミナーが開催されました。「興味や得意なことを知る」をテーマに、ワークやゲーム中心で大もり上がりの2時間でした。

 

◆セミナースタート、自己紹介

まずは自己紹介。
「ニックネームは?」「好きな教科は?」「最近楽しかったことは?」上級生ばかりで緊張気味の子も、先生が見守りながら、頑張って答えていました。
「好きなのは体育」「昨日見たアニメが楽しかった」。
初対面ながら、お互い少しずつ打ち解けていきました。

 

◆仕事さがしワーク

17,000って何の数字でしょう?
子どもたちへの講師あーみーからの質問です。
大津市の人口?動物の種類?
正解は「世の中にある仕事の数」でした。

まだピンときていない子どもたちに、あーみーからさらに、「知っている仕事を書いてみよう!」というお題が。
チームごと様々な仕事があがり、なかにはサラリーマンと会社員という微妙なものもありましたが、短時間で80近い職種を挙げるチームもあり、先生たちもうれしそうにしていました。

 

◆運動会ゲーム

つづいて、運動会で自分がやりたい役割について考えました。
題して「運動会ゲーム」。

実はこれ、自分の適性から仕事を考えるRIASECという診断テストに沿ったゲームです。大ホールの壁には、飾り付け(R)、人気プログラムの調査(I)、音楽セレクト(A)、案内係(S)、リーダー(E)、しおり作成(C)と6つの役割が貼られ、子どもたちはスタートと同時に好きな役割に移動します。
繰り返すこと3回。「自分の好きの順番は?」「誰々と2回一緒だった!」。
身近なイベントを想定して、子どもたちが自分の「好き」に気づくのが狙いでした。

 

◆タワーづくりゲーム

お菓子やジュースを楽しみながらチームごと盛り上がったところで、最後のプログラム「タワーづくりゲーム」です。
紙でできたタワーを一番高く作れたチームが勝ちというシンプルなゲームですが、ルールが少し特徴的。各チームは、資源をもつ企業、情報をもつ企業、技術をもつ企業と強みの異なる3企業に分かれ、さらに企業内では設計者、タイムキーパー、ビルダー、コミュニケーターという役割が決められます。
企業同士はお互いの物(紙や糊)や情報(ヒント)を交換し、企業内ではメンバー同士が協力し合わないと、タワーは高くならないしくみになっています!

制限時間は30分。
指示を出す人、その横で黙々と設計図を描く人、材料をもらいに隣のチームにお邪魔する人、初対面が嘘のようにみんな協力しつつ、自分の役割をこなしてきます。あっという間の30分、結果は1mを優に超す2チームが同率優勝でした!

 

◆ふりかえりシート

最後にみんなでふりかえりシートを書きました。
「自分ができたと思うことは?」という質問には、「塔をイメージすること」「時間をチェックすること」「わかりやすく伝えること」とそれぞれ別々の感想が聞けました。
さらに「面白いと思ったことは?」という質問には、「材料をもらいに行ったこと」「工作ができたこと」「チームを盛り上げたこと」とこちらも様々な意見が出ました。

 

◆まとめ

今回のテーマは「興味や得意なことを知る」。
仕事さがしワーク、運動会ゲームを通して、世の中の仕事や自分の好きなこと、得意なことについて考え、タワーゲームでは、その「好き」や「得意」が集まると大きな成果になって表れることが分かりました。
好きや得意を考えることの大切さを子どもたちには知ってほしいと思います!

 

大学・専門学校でIT系分野を専門に学ぶ児童養護施設出身の子どもたちを、ジョブシャドウイングと奨学金で応援する「キャリア支援プロジェクト」に参加の「のこっち」のジョブ体験レポート第1弾をお届けします。


【体験内容】

◆  1日目(8/21)
普段オラクルの社員さんがどんなことをしていらっしゃるのかを知るために、社員の皆さんに付いて回りました。主には会議や打ち合わせへの同席で、いろいろな方と社員さんが話しているのを見ていました。

 

◆  2日目(8/28)
カスタマーサクセスマネージャーという仕事について教えてもらいました。話を聞いた後、1日目と同様に、カスタマーサクセスマネージャーの方に付いて回り、どのような仕事をしているのかを見学しました。最後に質疑応答の時間があり、いろいろな話を聞かせてもらいました。

 

【2日間の体験から感じたこと】

一言で表すと、「異次元」でした。想像していたのと世界がぜんぜん違ったので驚きました。
また、社員の皆さんが、お客様に対して真摯的に対応している印象をもちました。

 

働く、ということに対して、それまではフワッとした印象しかもっていませんでしたが、2日間を体験したことで、『自分がなりたい職業』のイメージが割と固まってきました。
自分がどういう仕事に就きたいかを考えるきっかけになりました。

 

【社員の皆さんから感じたこと】

テキパキ仕事をこなしていて、仕事に対して熱心な印象でした。
1人でパワポを作ったり、サーバー構築をしたり、別案件に関する返事でメールを書いていたりと、マルチタスクが基本ということを知りました。
社会人ってすごい、働くってこんな感じなんだなあと思いました。

 

【今回の経験を、今後どのように生かしていきたいか?】

コミュニケーション力が大事ということと、自分のやりたい分野を作る・軸をつくることが大事だと教えてもらいました。そこを意識しながら、自分のなりたい職業に向けてがんばっていきたいです。そろそろ就活が始まります。この経験を生かして、しっかりやっていけたらと思っています。


※本プロジェクトは、日本オラクル株式会社とブリッジフォースマイルの協働プログラムです。

ブリッジフォースマイル(B4S)では、児童養護に関わる現状を正しく把握し、子どもたちへの支援のあり方を提言するために調査・研究を進めています。

創立の翌年(2005年)に全国の児童養護施設を対象とした自立支援に関する調査アンケートを実施したのが始まりです。

これまで、「支援活動効果の検証」や「退所者の生活実態調査」「施設運営に関する実態調査」などを行ってきました。

 

2018年度までに行った主な調査の概要と報告書は以下のとおりです。


【全国児童養護施設調査2018】

◆社会的自立と支援に関する調査
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設(620か所)
調査時期:2018年6月〜8月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:180施設(有効回収率29%)
主な調査内容:

過去5年間の退所者の退所直後から現在までの状況

利用したことのある支援制度
施設職員の支援上の課題

【PDF】全国児童養護施設調査2018(概要版)

【PDF】全国児童養護施設調査2018(調査結果)

【PDF】全国児童養護施設調査2018(プレスリリース)

 >>アーカイブはこちら

※2017は実施しておりません。


【全国児童養護施設調査2016】

◆社会的自立に向けた支援に関する調査

調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設(600か所)
調査時期:2016年6月〜7月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:134施設(有効回収率22.3%)
主な調査内容:過去5年間の退所者の進路、退所後支援制度の利用状況

【PDF】全国児童養護施設調査2016(調査結果)

【PDF】全国児童養護施設調査2016(プレスリリース)

 >>アーカイブはこちら


【全国児童養護施設調査2015】

◆社会的自立に向けた支援に関する調査(施設職員アンケート)

調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象施設:全国の児童養護施設601施設
調査時期:2015年6月〜7月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:170施設(有効回収率28.2%)

【PDF】全国児童養護施設調査2015:施設職員アンケート(調査結果)

 

◆社会的自立に向けた支援に関する調査(施設で生活する高校生の本音アンケート)

調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設(601か所)
調査時期:2015年6月〜7月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:173施設(有効回収率28.7%)、高校生1041名
【PDF】全国児童養護施設調査2015:高校生アンケート(調査結果)

 

◆調査データを分析した論文

児童養護施設の高校生における進路選択―進路に対する態度と自立を支える心理的要因との関連―
平井 美佳(横浜市立大学・准教授)

横浜市立大学論叢人文科学系列 2016:Vol.68 No.1 p69-93

【PDF】児童養護施設の高校生における進路選択


【全国児童養護施設調査2014】

◆社会的自立に向けた支援に関する調査
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象施設:全国の児童養護施設596施設
調査時期:2014年6月〜9月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:173施設(有効回収率29.0%)

【PDF】全国児童養護施設調査2014:社会的自立に向けた支援に関する調査(調査結果)

 

◆施設で生活する高校生の本音アンケート
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象:全国の児童養護施設(596か所)の高校生(6,000人)
調査時期:2014年6月〜9月
調査方法:自己記入式のアンケート
有効回答数:173施設(有効回収率29.0%)、高校生1079名(有効回収率18%)
【PDF】全国児童養護施設調査2014:高校生の本音アンケート(調査結果)

 

【PDF】全国児童養護施設調査2014(プレスリリース)


【全国児童養護施設調査2013】

◆社会的自立に向けた支援に関する調査
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル

調査対象施設:全国の児童養護施設588施設
調査時期:2013年6月8日〜7月1日
調査方法:郵送調査法
有効回答数:156施設(有効回収率26.65%)
【PDF】全国児童養護施設調査2013:社会的自立に向けた支援に関する調査(調査結果)


【全国児童養護施設調査2012】

◆社会的自立に向けた支援に関する調査
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象施設:全国の児童養護施設583施設
調査時期:2012年6月20日~7月9日
調査方法:郵送調査法
有効回答数:154施設(有効回収率26.37%)
【PDF】全国児童養護施設調査2012:社会的自立に向けた支援に関する調査(調査結果)

 

◆施設運営に関する調査
調査実施者:特定非営利活動法人ブリッジフォースマイル
調査対象施設:全国の児童養護施設583施設
調査時期:2012年6月20日~7月9日
調査方法:郵送調査法
有効回答数:158施設(有効回収率27.05%)
【PDF】全国児童養護施設調査2012:施設運営に関する調査 (調査結果)

 

【PDF】全国児童養護施設調査2012(プレスリリース)


【全国児童養護施設調査2011】

【PDF】全国児童養護施設調査2011:社会的自立に向けた支援に関する調査

【PDF】全国児童養護施設調査2011:施設運営に関する調査


【その他】

◆論文投稿

児童養護施設の入居児童へのセミナーに関するプログラム評価
― NPO法人ブリッジ・フォー・スマイルにおけるロールモデルとしての社会人ボランティア ―

斉藤 嘉孝

西武文理大学研究紀要 第12号(2008年、p33-43)

【PDF】児童養護施設の入居児童へのセミナーに関するプログラム評価

 

◆研究ノート
児童養護施設退所者へのアフターケアの実践

― 全国施設長調査の結果をめぐる考察 ―

斉藤 嘉孝

【PDF】児童養護施設退所者へのアフターケアの実践

B4Sでは一定の規定のうえで、ボランティアが退所者とSNSでつながることが認められており、私もFacebookやTwitterで何人かとつながっています。

 

ある日、一人の子が「咳が止まらないけど何科に行けばよいかわからない」とTwitterでつぶやいているのを見つけました。ネットで調べまくり悲観的になっている様子も見られ、私はすぐ、まずは内科に行くこと、風邪で咳だけ残るのも珍しくないことなどを書き込みました。その書き込みで少し安心したらしい彼女は、翌日、病院へ行った報告をくれました。

 

これが、彼女と8年間つながり続けるきっかけとなりました。最初の数年は私が彼女のツイートに時々反応するだけでしたが、そのうち、ほんのたまに彼女が私のツイートに反応するようになり、次に、お世話になった方のお礼に何を持っていたらよいか、就職にあたって相談にのってほしい、など時々メッセージが来るようになりました。

彼女とはもうTwitterではつながっていませんが、転職の相談など大人の意見が必要になると連絡がきます。

 

SNSでつながるのを推奨するつもりはありませんし、SNSからも逃げて隠れてしまう子もいます。ただ、彼女と信頼関係が築けたのはTwitterの距離感がよかったのだと思っています。Twitterからはその人の様子や人柄が何となくわかったりします。退所者のつぶやきに反応することで見守っている意思表示にもなります。
彼女は私のつぶやきから、仕事のキャリアや退所者の子たちに対する考え方を感じ取ったのでしょう。何かを聞いてくるわけではないけれど、この人は私を気にしてくれている、という感触も伝わったのだと思います。

 

定期的に元気な顔を見る機会はあるものの、頻繁に会うわけでもなく、恋バナをするわけでもありません。彼女が私という大人を必要だと思ったときにだけ連絡がくる、そんなつながり方もありではないかと思っています。

(ボランティアO)

“It is important to have a dream. If you work hard, your dream will come true.”

 

Many people may think this is the kind of words that employees/volunteers of a nonprofit organization that supports youths in/aging out foster care may say. However, this couldn’t be further from the truth – in our sector, these words are close to taboo, especially towards junior high and high school youths. One reason for this is because such words may interfere with the support plan foster home employees who act as guardians for the youths imay have put in place for them. In order to support youths who must stand on their own and provide for themselves after leaving foster care, foster home carers often have to advise youths to give up pursuing their dreams.

 

This can be said specifically in regards to access to higher education. For many of the youths, going on to college means they need to earn enough money to support their daily expenses as well as pay their tuition while living on one’s own for the first time, for four years, in an world where they have no parents to rely on. If they quit college, it becomes more difficult for them to find a job as a full-time employee compared to if they had looked for a job straight out of high school. The scholarship money they may have applied for can turn into a debt. The rate of youths dropping out of college is high amongst those who have aged out of foster care. Therefore not all foster home carers can recommend or encourage higher education which poses high risks for many.

 

The situation is changing bit by bit as the national government has started providing scholarships for youths aging out of foster care. However, not all problems can be solved even if the economic burden on the youths becomes lighter. The youths may become mentally unstable or depressed seeing the difference between their situation and the situation of their peers in college. Many of these youths do not have someone they can rely on unconditionally when they are in trouble. It is no easy feat to reach graduation on their own.

 

One must understand that sometimes foster home carers must turn their hearts to stone to help youths under their care “give up” their dreams, more so perhaps if they are seriously thinking about the gap between the youths’ ideals and the reality that awaits them. The youths have a right to pursue their dreams. However, they also must see how difficult and unforgiving the world can be. We need to create an environment where a youth can start over again and again if we truly want to encourage youths aging out of care to take a leap for their dreams.

 

“I’m confident your dream will come true.”

Whether we can gently push a youths’ back with these words depends on whether you and I are ready to provide an environment where the youths can indeed nurture and chase their dreams.

「夢を持つことは大事で、努力すればそれはきっと叶う」

 

児童養護施設の中高生と退所者の支援をしているNPOのスタッフやボランティアは、目の前の子どもをそうやって励ましていると思われる方も多いかもしれません。

 

実際は真逆で、私たちの活動において、とくに中高生に対して、この言葉はタブーに近いです。
それは、親代わりの施設職員による支援計画を、邪魔することになりかねないから。
施設を出た後、安定的に生活できるように考える職員の立場からすれば、夢を目指すことや、そしてその過程で必要な進学を、諦めさせなければならないこともあります。

 

とくに、大学進学。
親を頼れない環境で4年間、慣れない一人暮らしや学費と生活費の工面を両立させなければなりません。中退してしまえば、高校新卒と比べて正社員としての就職は難しく、奨学金が借金となる場合もあります。
実際に施設退所者の中退率は高く、ハイリスクな進学という選択をむやみに応援できる職員ばかりではありません。

 

国から奨学金が出るようになり、その状況も変化の過程ですが、経済的にラクになればすべて解決するともいえません。精神的に不安定になりやすかったり、周りの学生との差やコミュニケーションに悩みやすかったり…。さらに困ったときに無条件に頼れる人やSOSを出せる相手の不在などが絡まれば、卒業まで支えなしに乗り切るのは簡単なことではないのです。
理想と現実の乖離を真剣に捉えるからこそ、その折り合いをつけさせることもまた、心を鬼にした職員による支援のひとつの方法と言わざるを得ません。

 

夢を応援したい気持ちとは裏腹に、環境がいかに厳しく、それを許さないか。

挑戦の後押しをするために、何度でもやり直しがきく環境が必要です。

 

「その夢はきっと、叶うよ」

そんなふうに背中を押せるかどうかは、私たちやあなたが、その子に夢を育む環境を用意できるか否かにかかっています。

 

(事務局スタッフN)

大学生 平均30社
高校生 限定1社

 

これは、就活をする際の応募する企業数。もう少し詳しく説明すると、平成30年度は、高卒新卒1人あたり、2.37件の求人がありましたが(※1)、基本、高校生が一度に応募できるのは1社のみです。大学生のように、複数の会社に同時に応募することも、内定をもらうと就活を続けることもできません(※2)。

 

高校生の新卒での就職率(※3)は、
全国:18.3%
児童養護施設出身:63.3%

 

児童養護施設には原則18歳までしかいられません。

 

私が出会った、高校3年生たちが就職先を決めた理由は、
・寮があるから
・給料が高かったから
・先生に勧められたから
・なんとなく興味があったから
・会社見学に行ったらみんなが優しかったから
そんな理由が多いです。

 

卒新卒の約1年後の離職率(※4)は
全国:19.4%
児童養護施設出身:25.5%

 

再就職の相談でB4Sに連絡をくれた退所者に離職理由を聞くと、
・休みがほとんどなくて体を壊してしまった
・仕事が全く向いてない、又は、戦力になれなくて、迷惑かけるのが申し訳ない
・人間関係に失敗した
・職場でいじめられた
・地元の先輩にいい仕事紹介してやるって言われたから、辞めたが、紹介してもらえなかった
こんなことを言います。

 

離職した途端、次にまた正社員を探すのは、容易ではありません。
親を頼れない彼らには、仕事をじっくり探す猶予はないからです。
しかも、高校卒業後、たった数ヵ月で市場価値は極端に落ちます。
働いた期間が短ければ短いほど、その評価は目減りします。

 

彼らの市場価値とは一体何なのでしょうか。

 

元気だったら、
素直だったら、
挨拶ができれば…。

 

人にはそれぞれに個性があり、向き不向きがあることを、人はみな理解しているのに、採用という場面になると、大卒の若者に個性を求めても、高卒の若者には個性は求めていないように感じるのです。

 

このシステムの中で就職・離職した親などの後ろ盾がない彼・彼女らのその後は、社員寮などに住んでいた場合は離職と同時に、住む家も失います。そのため、手っ取り早く、すぐ働ける場所を求めます。その際、ちょっとしたきっかけで、夜の仕事に流れてしまう退所者も出てきます。

 

住む所があっても貯金がない退所者は、給料が入るまでの生活費に困ることから、転職活動よりも日当でもらえる日雇いの仕事を探しがちです。「いつかは正社員に」という気持ちがあったとしても、今日を生きるためにアルバイトを続けているうちに、正社員の機会を逃してしまう場合もあります。

 

バイトが休めたら、もう少しお金が貯まったら、いつかは、いつかは、そう思っているうちに、何も経験を積んでいなくても許される年齢は、本人たちが気づかないまま、過ぎていきます。
たまたま、親が育てられなかったら、たまたま就職した先が悪かったから、そのたまたまはこの期間に、自己責任論へと変わっていきます。

 

このようなシステムは正しいのか、彼らのために何が必要なのか、一緒に考えて頂けたら幸いです。

 

(事務局スタッフM)

 

※1:求人倍率は厚生労働省発表のデータより
※2:高卒の就職活動は、都道府県によって異なり、9月中は一人一社制、10月一人二社制のところが多いです。
※3、※4:いずれもブリッジフォースマイル2018年調査データより

2004年の児童福祉法改正により退所後支援が施設の役割となってから長らく、退所後支援は施設職員が業務外の時間を使い、かかる費用も施設や個人が自腹を切ることが当たり前でした。ある施設長がアパートの連帯保証人として肩代わりしたお金は、400万円を超えると聞きました。そんな退所後支援ですが、着実に前進しています。

 

ひとつは、保証人問題を解決するため2007年に始まった「身元保証人確保対策事業」です。就職やアパートの賃貸契約などで施設長が保証人となって損害を被った場合、その費用が賄われる保険制度です。これにより、施設長が安心して退所者のために保証人になれるようになりました。
ただし、利用できるのは施設との関係が良好な退所者に限られてしまうといわれます。保証金が下りるには定期的に退所者をフォローしていたことが条件になっているからです。
また、新規で利用できるのは施設退所から2年未満の人です。そのため、例えば、退所後会社の社員寮などで生活していた人が、2年後以降に新たに自分名義でアパートを借りるため保証人が必要となった場合には、この制度は使えません。

 

ふたつめは、2017年に始まった「自立支援資金貸付事業」です。進学者には生活費5万円と家賃相当額(東京23区で単身世帯の場合の上限53,700円)が卒業までの期間、就労者には家賃相当額が2年まで、無利子で借りられ、5年間の就労継続により返済が免除になる制度です。
これにより、進学のハードルが大きく下がりました。しかし、学校を中退してしまうと返済をしなければならないため、借金を抱えるリスクを考慮し、利用を勧めない職員もいます。

 

他にも、各都道府県独自で設定している制度は着実に増えています。ただし、それぞれ利用の条件が細かく設定され、いざ利用しようと思っても条件に合わず断られることもあります。利用できる制度や取り組みについて研修など知識を得る機会が少ないことも、職員の悩みとなっています。

 

(事務局スタッフL)

 

児童養護施設退所者の支援制度の利用状況
(全国児童養護施設調査2018:B4S実施)

施設退所者の支援に携わらせていただき、もう12年になります。
たくさんの若者の相談をうけてきました。10年前に比べて社会的養護・児童虐待に対する理解も支援も少しずつ広がり、声をあげる当事者も増えつつあります。とてもいい流れだと思います。そんななか、最近僕が感じているのは支援の偏りです。

 

大きな視点で見れば、東京や横浜などの都市部と地方の支援の偏りは大きいです。例えば奨学金ひとつとっても、地域独自の奨学金、学校の数も違いますから、進路の選択肢もずいぶん変わってきます。

 

もう少し狭い視点で見ると、例えば同じ東京都内でもどこの施設に措置されるか、里親家庭に措置されるか、などでもその後の人生はまるっきり変わってくることもあります。施設が独自の奨学金をもっていたり、近隣の企業や宗教法人から多大な援助があるところと、ないところでは、子どもの選択肢が変わってしまうでしょう。

 

本人に進学の意思があり、勉強ができたとしても、行く施設によって進学できるか否かが変わってしまうこともあります。ある意味、生まれた段階でハンデを背負ってしまった状態で、さらにどこの施設に措置されるかで、さらに不利益を被る可能性がある、というのはなんて理不尽なんだろうと思います。

 

さらに施設を出た後も、支援が偏る傾向があると感じています。例えばAさんとBさん2人の若者がいて、両方とも高校を卒業して就労したとします。Aさんは就職した会社で頑張っています。たまに困ったことがあったら相談をして、いろんな支援団体や大人から支援を受けます。支援してもらったらいつもきちんと笑顔でお礼を伝えます。
一方でBさんはすぐに会社を辞めてしまい、バイトを転々としています。たまに大人や支援団体から支援を受けますが、ほとんどお礼も言いませんし、笑顔もあまり見せません。

 

こういう場合、どちらを支援したいかと言えば、ほとんどの人はAさんを支援したくなるでしょう。実際の支援でも、Aさんに偏りがち。本来支援がより必要なのはBさんかもしれないのに、Bさんにはなかなか支援が届きません。
その結果、Aさんはどんどん生活のクオリティを上げ、安定していきます。場合によっては、本来ここまでの支援はなくてもいいかも、というところまで支援を受け取れるかもしれません。一方でBさんは生活のクオリティが低いままで、不安定な生活を送っていますが、なかなか支援を受け取れません。
もちろん、この状況について、「AさんとBさんがもつ対人スキルが違うのだから仕方がない」と言い切ってしまうのも、支援者側の自由です。ただ、例えば、幼少期に虐待を受けたり、里親や施設を転々としていたような退所者の場合、対人スキルがしっかりと育まれないこともあります。それなのに、「対人スキルの低さは、Bさんの責任と言ってよいのか?」という疑問を感じます。

 

支援をしたくなる若者ばかりを支援するのではなく、変な言い方ですが、支援のし甲斐のない若者にも目を向けていく。今後はそういうことも考えていかないといけない、と思ってます。

 

(事務局スタッフK)

「初めてバイトが3ヵ月続いたよ」と、ある退所者が言いました。
皆さんはこの言葉を聞いてどのように返すでしょうか。

 

「え? 今まで3ヵ月続いたことなかったの?」
「バイトで3ヵ月続くのがやっとのようじゃ正社員への道はまだまだ遠いよね」
「そうなんだ?すごいじゃん!(普通は3ヵ月くらい続けるのが当たり前だけどね)」

 

もちろん関係性によって湧いてくる言葉も感情も異なるとは思いますが、この退所者の言葉を心から喜べる大人がどれだけいるでしょうか。

 

退所後支援の難しさのひとつに、『その人なりのちいさな一歩』に気づけるかどうか、があると私は考えています。

 

「今、自分がどうしたいか」をはじめて言えた人。
遅刻や無断欠勤をしなくなった人。
役所にひとりで行って手続きを終えることができた人。
「死にたい」と言わなくなった人。

 

多くの人にとっては当たり前のことかもしれませんが、本人たちにとっては、不安や恐怖との闘いの成果であったり、変わろうとする努力の表れだったりします。
長く続く関係、特に数年以上関わっているなかでは見過ごしてしまいそうな変化であることも多いです。似たようなことを繰り返してストレスを溜めたり投げやりになっている様子に触れていると、話を聞いているほうとしてはネガティブな点にばかり意識も向きがちになります。しかし、そんなときに『ちいさな一歩』を見つけることができると、素直に「すごいな」と思うことができます。

 

きっと私たちが想像している以上に、迷ったり苦しんだり、やる気になったり、諦めたり、怖かったり、逃げたかったりする日々の生活があるのかもしれません。だからこそ、傍から見ると『ちいさな一歩』にとらえられてしまうかもしれないその一歩は、本人にとって『おおきな一歩』なんだと思います。

 

彼らがその一歩を踏み出す道は、私たち大人で構成されている社会のなかにあります。
「役所の人が丁寧に教えてくれた」
「バイト先の店長が自分の様子に気づいて話を聴いてくれた」
「不動産屋が事情を考慮して物件を探してくれた」
こういうことで、社会への不安がちょっと減ったり、知らない大人が怖くなくなったり、「生きていけるかも」と思えたりするのではないでしょうか。

 

(事務局スタッフJ)

高卒後、大卒後などタイミングはいろいろですが、誰しも働くことを目指します。
なかでも、児童養護施設の子どもたちは、頼れる親がいない分、早い段階から退所後の生計を意識した進路選択をする必要があります(80%以上が、高校卒業と同時に退所します:※1)。

 

まず中3のタイミングでは、95%以上が高校へ進学します(※2)。その際の高校選択については、高卒後に就職を希望するのであれば、商業高校や工業高校に行ったほうが簿記など仕事に役立つ実践的な内容が学べ、就職紹介先が増えるので有利だと考えられます。

 

障害者手帳の取得が濃厚であるなら、職業トレーニングや就労支援が充実している特別支援学校に行くほうが良いのですが、なかには自分の障害を受け入れられない子もいます。

 

大学などへの進学を希望する場合は、普通校さらには進学校を選ぶことになります。ただし、進学にむけて資金を貯めておかなければいけない施設の子どもたちにとって、高校がアルバイトを認めているか、アルバイトをする時間が確保できるかも大切な確認事項となります。

 

高校入学前に高卒後の見通しを立てられなかった場合でも、どんなに遅くても高3の夏休みには進路決定をしたいものです。というのも、9月16日から高校生の就職活動が解禁となるためです。進学の場合は、AO入試や推薦入試も始まりますし、奨学金申請も進めなくてはなりません(AO入試や推薦入試、奨学金は、夏休み以前から手続きをする必要があるものもあります)。

 

進路選択において、施設職員からの働きかけは非常に重要で、丁寧なコミュニケーションが求められます。しかしながら、施設職員は幼い子の世話やトラブルの対応に時間が割かれてしまい、高校生たちの進路相談にゆっくり時間を取ることが難しいことも多いです。
思春期の難しい時期に、反発したり引きこもったりしてしまう子もいます。最近では高校生になってから入所してくるケースも増えており、職員と進路について腹を割って話せるほどの関係性が築けていないこともあります。

 

子どもたちの進路選択に、サポートする職員の職業観や知識も大きく影響します。
安定志向が強い職員であれば、就職希望の子に対しては社員寮がある会社を勧めがちです。進学希望の子に対しては、介護や保育といった仕事に直結した資格が取得できる学校への進学を勧めがちです。一方で、職員が疎い分野、例えばIT業界などについては、情報をあまり持ち合わせていないため、進路選択の議論の場にあがりにくい傾向があります。

 

自立に向かう上で重要なカギとなる進路選択について、これまでの支援のなかで様々なケースを見聞きしてきましたが、まだまだ必要な支援が十分にできていないと感じることが多いです。

 

(事務局スタッフI)

 

※1:児童養護施設にいる中学生の高校進学率:96.3%
※2:高校卒業と同時に施設を退所する率:82.7%
どちらも会的養育の推進に向けて(厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課:平成31年1月)より

“私は誰かにとっての『一番目の存在』には、決してなれない”

この言葉はこれまで経験したなかで見いだした私自身の表現であり、諦めであり、信念でもあります。
そしてこんな自分であるから、私は日々の活動に全力で取り組めているのだと思います。

 

B4Sで関わる人々は老若男女問わず、皆がそれぞれの事情と想いを抱えています。それは支援をされる側でもする側でも、関係なく持っているものです。そのような人たちに対して自分は何ができるのだろうとよく考えることがあります。

児童養護の当事者でもなければ、特別な能力も経験もない自分ができること。
それは「二番目の存在になること」でした。

 

「この人がいれば満足する」「この人がいるから自分は生きていける」と真っ先に思えるほどの信頼感と安心感を抱かせてくれる存在が、その人にとっての一番目の存在だと私は思っています。人によってその存在は、家族であったり、恋人であったり、仲間であったりするのだと思います。

 

ですが正直なことをいうと、自分はそのいずれにもなることができるとは思えません。なる覚悟も持っていません。自分は誰かの人生の支えになるなんていえるほどの人間でないと感じています。
でも誰かの笑顔のために生きていたいというワガママを同時に持ち合わせています。

 

そんな自分だからこそ。
誰かにとって真っ先に顔が浮かぶ存在ではなく、二番目や三番目(いやもっと下の順位でもいいのですが)に思い浮かんで、「まぁ、この人だったら悪くないかな」と思ってくれる存在でいようと心がけています。

 

その人にとってのベストではないにせよ、自分が一緒にいることで笑顔になってくれる。いつの日かその人にとっての「一番目の存在」が現れるときまでの繋ぎになれる。そして「一番目の存在」が現れたときは笑顔で送り出してあげられる。

 

それが、私が考える「二番目の存在」です。
そんな人と人との架け橋になれるような存在として、これからも日々の活動をがんばっていきたいと思います。

 

(事務局スタッフH)

2004年に退所後支援(アフターケア)が施設の役割と児童福祉法に明記されてから、15年が経ちました。いま施設では、どのような対応をしているのでしょうか。

 

「卒園後は電話連絡、訪問、又はケースによっては就職企業との連携も取りつつ、関係性によっては結婚・出産等節目での関わりを継続しています。人間としての成長を見守る中で継続して支援を行う関係作りを心がけてはいますが、連絡を取ろうとしても取れない子も多く、また、在園児童を抱える中で『施設として』退所児童をどこまで追いかけるのか、難しさも抱えています。」

(「2018年社会的自立に向けた支援に関する調査」自由記述回答から抜粋)

 

どこまで追いかけるのかを年齢、場所、内容の3つに分けて考えてみます。

 

まず年齢です。成人するまで(20歳)と、大学を卒業するまで(22歳)は、比較的区切りやすいです。しかし、結婚出産や転職など、支援が必要となるライフステージの変化のタイミングは年齢には全く関係ありません。

 

次に場所です。退所後の生活地域は、退所者一人ひとりの事情によって異なります。仕事を求めて都市部に出る子や遠方の大学などに通う子は、施設から地理的に遠い場所に住んでいます。仕事を変えるたびに住まいを転々とする場合や友人やパートナーの家に居候している場合もあります。施設職員がすぐに会いに行ける場所ではないことも少なくないのです。

 

最後に内容です。「困っているから相談に乗ってほしい」と退所者から連絡が来る場合は、職員が時間を調整して応じることも可能です(とはいえ、職員は多忙で、時間の調整は難しい場合も多く、また、職員の手弁当による支援になることも多いようです)。しかし、例えばお金の管理が上手くできず借金を抱えている子に対して、退所後の通帳を預かったり家計簿を管理したりする支援をするのかどうか。正社員の仕事を辞めてキャバクラで働き始めた子がいた時、キャバクラを辞めさせて他の仕事に就く支援をするのかどうか。どのような内容なら支援をするのか、また、どのような支援をするのが適切なのかは、単純に決められることではなく、本人の意向を尊重しながら進める必要があります。

 

必要な人に必要なアフターケアが行きわたるのが理想ですが、支援する人の時間も予算も限りがあることから、必要性を見極め「どこまで支援をするのか」を判断することは容易ではありません。

 

(事務局スタッフG)

私がブリッジフォースマイルに入職してから数年が経ちました。
NPOやNGOで社会に役立つ仕事をしたいという想いだけで転職活動をするなか、ブリッジフォースマイルを通じて、複雑な家庭環境から保護され18才で自立を迫られる若者がいるという現実を知りました。その過酷さに衝撃を受け、この分野で何か役に立ちたいと思っての入職です。

 

たった数年ですが、主に退所後の支援プログラムの運営に携わり、様々な状況を知っていくなかで、今私が思うのは経済的支援もさることながら、気持ちの面で支えになってくれたり、気軽に相談できる存在の重要性です。

 

私達の団体でもいくつかの奨学金の運営に関わっていますが、金銭的な補助があっても途中で挫折し中退してしまう若者は少なくありません。そんなときに周りに相談できる人がいるか、SOSを出せるかどうかで問題が深刻化する前に対処できるかどうかが変わってきます。
退所後の生活には人間関係や1人暮らしなど多くの環境の変化があり、まだ18才の若者がそのような変化に一人で対応しなければならない時、周りに支えてくれる人がいなければ行き詰るのも決しておかしくはありません。

 

施設による退所後支援である「アフターケア」は、義務化されています。しかし、取組みの状況には施設間で違いがあり、まだまだ統一化、制度化されているとはいえません。
今の施設の人員体制ではとても難しいという現実もあります。義務化したのであれば、国には、退所後支援への予算や人員の確保にもっと積極的に取り組んでほしいと思います。

 

このような状況のなか、私達のような外部団体の意義のひとつは、施設だけでは十分に手が回らない退所後支援の一端を担えることだと思っています。
職員さんの忙しさを慮るあまり相談できない若者や、施設とうまく関係を築けないまま退所した若者たち。彼ら・彼女らが、少し立場の違う私たちのような大人と知り合うことで、ちょっとずつ心を開くことができれば、困っていることや悩んでいることを吐露してくれるようになれるはず…。
できることはそんなに多くはありませんが、私たちと繋がることが、一人でも多くの若者の手助けになれたらと思いながら日々取り組んでいます。

 

(事務局スタッフF)

B4Sのプロジェクトを通じ多くの退所者と出会いました。彼らと接していると、虐待などの経験がなぜ社会に出てからも生きづらさにつながってしまうのかを目の当たりにすることがあります。

 

一見するとどこにでもいるごく普通の女の子。彼女は行動力もコミュニケーション力もあり、新しいコミュニティに入り初対面の人たちと仲良くなるのも上手です。しかし、しばらく経つとそのコミュニティの中で傷つき、居づらさを感じ去っていく、という事を繰り返します。
誰かがいじめるわけでも、冷たくされたわけでもありません。
彼女が傷つき、どうして良いかわからなくなってしまうのは、人々の悪気のない何気ない質問です。

 

「地元はどこ? 私は○○だよ!」
「ひとり暮らし? じゃあ、お正月はご両親のところに帰るのかな?」
「親御さんはどこの出身?」

 

こんなたわいのないやり取りは、会話の糸口として当たり前のように交わされます。ですが、退所者の中にはこの会話をどう処理してよいか戸惑います。そして、こう聞かれたことで自分が置かれた環境と世の中の‘普通’との違いをまざまざと感じてしまう子も少なくありません。
こんな会話をやり過ごせないがゆえに、職場に行きづらくなったり、過去の出来事を思い出し精神的に不安定になったりしてしまう場合もあります。

児童養護施設に来る子ども達の約8割に親がいます。
虐待や貧困、親の精神疾患などで子ども達は施設に入ります。施設と親元を一定期間で行き来しながら暮らしたり、施設をいくつか変わったりする場合もあります。

 

複雑な環境で育った退所者にとって、先ほどのような質問に対して会話を成立させるのは、今の社会では難しいのです。いつの日か、家族の形の多様性が当たり前になったら、
「親はいるけど、私は施設で育ったからあまり親元には帰らないんだ」
と何のためらいもなく答えられるのかもしれません。

 

(ボランティアE)

Bridge for Smile

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