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子どもを取り巻く環境
児童福祉法第1条では、

「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、
且つ、育成されるよう努めなければならない」
「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」

と定めています。
すなわち、子どもたちはどんな環境で生まれ育っても、みな尊重されるべき存在なのです。

家庭では健やかに育てられない子どもたちがいた場合、その代わりを保証するのが児童福祉です。児童相談所で保護され、社会的に養護が必要と判断された場合には、適切な養育環境を与えられます。しかし、今の日本社会では、児童福祉に対する国の予算は少なく、尊重されるべき存在であるはずの子どもたちに対して行き届いた支援がなされているとはいえません。子どもたちを取り巻く環境には、さまざまな問題や課題があるのです。
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1.少子化の背景 -家族と地域の変化-
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現在日本では少子化が進んでいます。1990年に出生率が1.57となって過去最低記録を更新、政府は少子高齢化対策をスタートさせ、「こどもを生み、育てやすい環境」を整備する様々な政策を進めています。しかし、いまだ制度は十分に機能せず、効果を発揮しているとはいいがたいのが現状です。

少子化の原因は複合的な要素によりますが、結婚や子育てだけが人生ではないという結婚観・価値観が変化したこと、仕事と結婚・子育てを両立させられる社会制度が未整備であること、高学歴化によって女性が社会に進出し晩婚化が進んだこと、などがあげられます。

また、ひきこもりや自殺、子どもが親を殺すという陰惨な事件が増えてきていることも、子どもを産み育てることに不安を持つ要因になっています。 さらに、地域という子育て環境の変化も少子化の一因といえます。従来は地域のなかで、親族や隣近所が協力し合って子育てに関わってきていましたが、核家族化に伴い、地域社会における交流の場が減り、近所や親戚の子どもの面倒を見る機会もなく、家庭が孤立しているという現状があります。

このように現在の日本は、子育てに喜びや楽しみを持ち、安心して子どもを産み育てる事ができる社会とは決していえません。家族観が大きく変化する中で、「家庭を持たない」もしくは「子どもを産まない」選択をする人が増えているのです。
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2.虐待の増加
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少子化と並び、子どもに関する大きな社会問題として、児童虐待が挙げられます。児童虐待により、1週間に1人の子どもが命を失うというデータもあり、事態は深刻です。2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」(通称 児童虐待防止法)が施行されたことにも後押しされ、児童相談所に報告される児童虐待の数は、この15年で30倍にまで拡大しています。
児童相談所における児童虐待相談件数の推移
虐待防止法では、4つの行為を児童虐待と定義しています。身体的虐待(身体に外傷を生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること)、性的虐待(児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をすること)、ネグレクト(児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること)、精神的虐待(児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと)です。

虐待に関する社会の関心は高まっているとはいえ、実態が正確に把握できているわけではありません。虐待の多くは家庭の中で行われるため、保育園や学校、病院や近隣住民からの通報を受けて始めて明らかになります。また、統計では、身体的虐待、ネグレクトの件数が全体の8割を占めていますが、性的・精神的虐待はさらに外から見えにくくなっています。

児童虐待の背景には、母親の育児ストレスが挙げられます。実際、虐待行為の6割は実の母親によって行われているというデータがあります。夫や父母の助けを十分に得られなかったり、近所付き合いもなく家庭内で孤立していたりするなか、子どもに関わる時間が最も長く、思い通りにいかない子育てに一人で悩んでいるケースが多いとみられています。また、子どもの数が減り一人っ子が増えるなか、子どもに対する親の過剰な期待、親に対する周囲からのプレッシャーも指摘されています。
他にも、同居人や、養父母からの虐待など、離婚や再婚の増加により家庭環境がさらに多様・複雑化していることも、虐待にいたる背景となっています。(最新データに関しては、関連リンク集をご覧ください)
虐待の内容
 
親の不適切な関わり maltreatment
「虐待」という言葉は、悩みながら子育てをしている親を追いつめ、かえって外から見えにくくしてしまうという指摘もあります。一方で、少子化に伴い増えてきている親の「過保護・過干渉」も子どもの成長にとって深刻な問題であると考えられています。そこで、暴力によるけがや傷だけではなく、子どもに情緒や行動、性格形成面など広い範囲で深刻なダメージを与える行為を総括して「親の不適切な関わり」と言う専門家も増えています。多くの人が、「虐待」ではなく「不適切な関わり」と理解したら、必ずしも「非難する、通報する」ものではなく「親に適切な関わりを教える、適切な関わりで子どもをサポートする」という風潮ができ、もっと温かい社会になるのではないでしょうか。
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3.児童相談所の役割
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家庭環境の整わない子どもを救済、保護する窓口になるのは、児童相談所です。最近は、虐待による相談が増えていますが、もともとは、親が養育できない事情(死亡、病気、精神疾患、経済事情など)や、子ども本人の問題(非行、引きこもりなど)についての相談が主でした。
児童相談所では、それぞれのケースを調査し、親に対するアドバイスや援助を行ったり、児童に必要な医療措置を手配したり、必要な場合には、親権の剥奪や児童養護施設への児童収容を手配する事もあります。
児童相談所の役割
児童相談所の機能強化
虐待に関する事件報道が増えるにつれ、社会的にも児童虐待に対する認識が広まり、隣人などからの通報により、事件が発覚するケースが増えてきています。2003年9月に厚生労働省は、児童相談所を「児童虐待と非行問題を中心に対応する機関」とする位置付けの変更を決定しました。 さらに、2008年4月には、裁判所の令状に基づく家庭への強制立ち入り調査や児童への接近禁止命令など、児童相談所の権限を大幅に強化した「改正児童虐待防止法」が成立しました。
児童相談所に通報があると、職員が家庭訪問し、保護者と面会して子どもの安否を確認します。しかし、訪ねても面会を拒まれたり、居留守を使われたりしても現行法では強制措置を取ることはできません。改正法では、保護者が再三の出頭要求や立ち入り調査に応じない場合、裁判所の許可状を得て強制的に、「鍵を壊してでも」立ち入れるようになりました。これにより、強制介入が可能となり、従来、救えなかった子を救える手だてが一つ増えた点で一歩前進といえます。
改正のもう一つの柱は、保護者に対する面会・通信などの制限の強化です。保護者の同意で施設に入所している間でも、児童との面会や通信を制限できるほか、強制的な施設入所措置でも保護者に対し、児童へのつきまといなどを罰則付きで禁止することができます。「保護者が子どもを連れ帰り、再び虐待を繰り返す事態を未然に防げる」のです。
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4.子どもたちが行く先
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児童相談所等で保護された子どもたちは、親への指導、専門的機関との相談、親族や養育里親への委託など、さまざまな検討が行われた上で、児童養護施設や自立援助ホーム、児童自立援助施設、母子生活支援施設、などで暮らします。
子どもたちが行く先
 
「児童憲章」とは
児童憲章は、子どもの健やかな成長を願って1951(昭和26)年5月5日の「こどもの日」に制定された子どものための権利宣言で、子どもの社会保障・家庭・教育・労働・文化・保護などの権利と、それに対する社会の義務と責任をうたっています。

児童憲章(全文)

われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福を はかるために、この憲章を定める。
児童は、人として尊ばれる。
児童は、社会の一員として重んぜられる。
児童は、よい環境の中で育てられる。

  1. すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保証される。
  2. すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもって育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。
  3. すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害からまもられる。
  4. すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる。
  5. すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また、道徳的心情がつちかわれる。
  6. すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整つた教育の施設を用意される。
  7. すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。
  8. すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を受ける機会が失われず、また、児童としての生活がさまたげられないように、十分に保護される。
  9. すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、悪い環境からまもられる。
  10. すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられる。
    あやまちをおかした児童は適切に保護指導される。
  11. すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不充分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。
  12. すべての児童は、愛とまことによつて結ばれ、よい国民として人類の平和と文化に貢献するように、 みちびかれる。
 
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