圧倒的不利からのスタート 施設を巣立つ子どもたち

施設を退所する3つのパターン

子どもたちが施設にいる期間は、平均4年です。生まれてすぐから18年間施設で生活する子もいれば、ほんの数か月で自宅に戻っていく子もいます。
子どもたちが施設を退所するのは、次の3つのパターンがあります。

1. 家庭に帰る
事情が変わり、家庭で子どもを育てられる環境が整えば、子どもは自宅に戻ることができます。例えば、「母親が病気で入院することになったが頼れる親戚がいなかった」という場合や、「シングルマザーが仕事と育児のストレスで子どもに暴力を振るってしまったが、離れて暮らすうちに仕事や生活が落ち着き、子どもも成長することで育児の手がかからなくなった」という場合があります。
児童養護施設は、児童相談所と連携して親への支援を行いつつ、週末や夏休みなどに子どもを一時帰宅させたり、施設内に設置されたアパートを模した作りの部屋で数日間一緒に生活をさせたりして、様子を見ながら、「家庭復帰」を進めます。
2. 「措置変更」で、他の福祉施設などに移る
児童相談所との連携の下、より適切な養育を行うために、児童養護施設からほかの福祉施設などに移ることもあります。
例えば、児童養護施設から、より家庭的な養育のできる「里親家庭」へ移ったり、警察沙汰になるような問題を起こしたため、より規則の厳しい「児童自立支援施設」へ移ったりします。障害をもっている場合は、「通勤寮」や「グループホーム」などに移ることもあります。
3. 社会に出て自立する
家庭に帰ることができず、ほかの施設へ移らないで児童養護施設で暮らしていた子どもたちは、施設から社会に出て、一人暮らしを始めることになります。
子どもたちは、自分でアパートを借り、水道、ガス、電気などの契約をします。生活品を準備し、炊事や掃除、洗濯など日々の家事一切を自分で行っていくことになるのです。

18歳を待たずに退所する子どもたち

多くの場合、児童養護施設にいる子どもたちは、高校卒業と同時に施設を退所します。厚労省の指導では現在「20歳までの措置延長が可能」となっています。つまり、まだ、自立した生活が見込めない場合は、20歳まで施設に居てもよい、ということです。ところが実際は、施設の収容人数に余裕がない場合も多いため、18歳に満たなくても早く施設を出ていくことを促されます。
例えば、高校へ進学しない場合、中卒で就職、アルバイトをすることになるので、「収入があるなら自立ができるでしょう」となるわけです。高校中退した場合も同様に、「学校にいかないなら、仕事を探しなさい。仕事をして収入があるなら、自立をしなさい」となります。
「自立援助ホーム」で食事と住まいの提供を受けながら仕事を始め、働くことに自信をつけてから独り立ちする場合もあります。

大学進学率は全国平均の4分の1

「頼れる親がいない、住む家がない、学歴や資格もない」子どもたちにとって、今の、実力主義の競争社会をわたっていくことは、たいへん困難です。そこで、せめて子どもたちに「学歴や資格」といった武器を身に付けさせるために、進学支援に力を入れる施設が増えてきました。一般の奨学金制度に加え、施設退所者を対象にした奨学金制度もありますが、さらに施設独自で進学基金や寮を設けるなどして、進学者を支える動きがあります。しかし、現状として、高校卒業後、大学や専門学校へ進学する子どもたちは2割程度にすぎず、全国平均の約8割には遠く及びません。

アパートも携帯も保証人が必要

日本では、家を借りるにも、就職をするにも、携帯電話の契約をするにも保証人が必要です。親を頼れない子どもたちのために、出身児童養護施設の施設長 が保証人になることもありますが、子どもが家賃を払えなくなったりした 場合の保証は、施設長個人が行うことになってしまいます。
近年、退所後2年間までは負債を保証する制度が整えられたものの、その後の契約更新は、保証対象外となるため、施設長も保証人になりにくい状況が続いています。

10代でせまられる自活

施設退所後、仕事も、家事も、家計のやりくりも全部、自分ひとりで行っていかなければならない「自活」。社会経験が浅く、親のサポートが得られない状態であるにもかかわらず、生活のすべてを自己管理することが求められ、自己責任が問われます。親の支えも、公的な支援もなく、自活を迫られる現実が、10代の若者に重くのしかかっています。

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